科目 | 設備投資勘定 |
部局等の名称 | 日本電信電話株式会社 |
インタフェース・パッケージの概要 | 国際標準に基づいた新ディジタル伝送装置の各装置間で音声、データ等の信号の受渡しを行うときに必要なパッケージ |
購入物品 | 52メガ用インタフェース・パッケージ 30,082枚 |
購入価額 | 12,404,044,860円 |
節減できた購入価額 | 2億0130万円 |
<検査の結果> |
支店及びネットワークセンタの機械棟内において新ディジタル伝送装置の装置間の接続に使用されるインタフェース・パッケージ(以下「IF」という。)の搭載設計に当たり、156メガ用IFを使用することが可能な装置間に、52メガ用IFを複数枚搭載している箇所が67箇所あった。しかし、これらの箇所に156メガ用IFを搭載するよう設計したとすれば、IFの購入経費を約2億0130万円節減できたと認められた。 このような事態が生じていたのは、本社において、IFの経済的な選択方法について十分な指導を行っていなかったこと、各支社等において、経済的な設計を行うことについての認識が十分でなかったことなどによると認められた。 |
<当局が講じた改善の処置> |
本院の指摘に基づき、日本電信電話株式会社では、平成7年11月に、各支社及び長距離通信事業本部に対して指示文書を発し、新ディジタル伝送装置の設計について、IFの購入単価等を十分考慮し、経済的に行うように改めることとする処置を講じた。 |
1 新ディジタル伝送装置の概要
日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)では、世界共通の高速広帯域サービスの提供を目的に、平成元年度から、国際標準に基づいたディジタル伝送装置(以下「新ディジタル伝送装置」という。)を支店及びネットワークセンタの機械棟(以下「ビル」という。)に逐次導入している。
上記の国際標準によれば、音声、データ等の信号(以下「信号」という。)を伝送する際の基本となる伝送容量は、電話回線数相当で672回線分の通信量とされており、この基本となる伝送容量の信号(以下「基本量信号」という。)の伝送速度は52メガビット/秒(以下「Mb/s」という。)となっている。そして、基本量信号をさらに多重化する場合には、52Mb/sの3倍の156Mb/s又は156Mb/sのN倍の伝送速度によることとなっている。
新ディジタル伝送装置には、52Mb/s又は156Mb/sの信号をより大容量の信号に多重化する装置(以下「モジュールA」という。)、多重化された信号を振り分けて伝送する装置(以下「モジュールB」という。)、低速の信号を52Mb/s又は156Mb/sの信号に多重化する装置(以下「モジュールC」という。)等がある(下図参照)
。
そして、6年度末現在の新ディジタル伝送装置の装置数は、4,532ビルで9,976となっている。
(備考) 上図の接続の他に同一ビル内にある複数のモジュールA相互間の接続(ビル間での信号の再生中継のため)もある。
基本量信号を伝送するためには新ディジタル伝送装置の各装置間を接続する必要があり、その接続の機能を有するインタフェース・パッケージ(以下「IF」という。)が、各装置に必要枚数搭載されている。このうち、ビル内の装置間の接続に使用されるIFは次の2種類となっている。
〔1〕 基本量信号1本を1本の伝送路により伝送する場合に使用する52Mb/s用IF(以下「52M用IF」という。)
〔2〕 基本量信号3本を1本の伝送路により伝送する場合に使用する156Mb/s用IF(以下「156M用IF」という。)
このうち、52M用IF1枚は、相互に接続し合う(以下「対向する」という。)新ディジタル伝送装置間で基本量信号1本の受渡しができるのに対し、156M用IFは、1枚で基本量信号3本の受渡しができることとなっている。
また、これらのIFは、故障した場合などを考慮して、現用のものと、同数の予備のものが搭載された設備構成になっている。
したがって、ビル内において基本量信号3本が対向する新ディジタル伝送装置間で受渡しされる場合、52M用IFを使用したとすると、それぞれの装置に現用のものが3枚ずつ搭載されることとなり、その総枚数は予備のものを合わせると、計12枚となる。一方、この場合に156M用IFを使用すれば、それぞれの装置に現用のものが1枚ずつ搭載されることとなり、その総枚数は予備のもの2枚を合わせ、計4枚となる(下図参照)
。
各支社及び各ネットワークセンタ(以下「各支社等」という。)では、新たな伝送路が必要となった場合、本社が定めた技術資料等に基づき、次の手順で設計を行うこととしている。
〔1〕 伝送に必要な信号の回線数から、国際標準に基づく基本量信号の本数を求める。
〔2〕 基本量信号の伝送速度52Mb/sにより新ディジタル伝送装置間の接続方法を設計する。
設計終了後、本社資材調達部に対し、必要となるIFの種類、枚数について購入要求を行い、本社資材調達部では要求どおりに購入し、各支社等に支給している。
6年度におけるIFの購入数量は52M用IF30,082枚、156M用IF9,848枚となっている。そして、1枚当たり購入単価は、装置の種類により52M用IFが393,300円から409,200円、156M用IFが420,000円から502,900円となっており、その購入価額は、52M用IF124億0404万余円、156M用IF46億6003万余円、計170億6408万余円に上っている。
2 検査の結果
ビル内において対向する新ディジタル伝送装置間で基本量信号3本を受渡しする場合には、52M用IF又は156M用IFを使用することが可能であり、その対向する装置間1箇所当たりの枚数は52M用IFでは12枚となり、156M用IFでは4枚となる。一方、1枚当たり購入単価は、52M用IFと156M用IFに大きな差異がないことから、156M用IFを使用した場合、1箇所当たりの購入経費を節減することができる。
そこで、6年度の新ディジタル伝送装置の新増設工事において、これらのIFが経済的に搭載されているかについて着目して調査した。
調査は、東京支社ほか20支社等(注1)
の124ビルに設置されている1,247の装置を対象として行った。
調査の結果、関東支社ほか15支社等(注2) の25ビル(注3) において、対向する新ディジタル伝送装置間で基本量信号3本が受渡しされていて156 M用IFを使用可能なのに、設計が適切でなかったため52M用IFを搭載している箇所が計67箇所あった。その内訳は、次のとおりである。
〔1〕 モジュールA相互間 | 関東支社ほか3支社(注4) の4ビル、4箇所 |
〔2〕 モジュールAとモジュールB又はモジュールC間 | |
関東支社ほか8支社等(注5) の12ビル、28箇所 | |
〔3〕 モジュールBとモジュールC間 | 関東支社ほか11支社等(注6) の15ビル、35箇所 |
したがって、上記ビルの67箇所については、52M用I F12枚を搭載することなく、156M用IF4枚を搭載すれば足りると認められた。
上記の16支社等が、156M用IFを使用可能な箇所に、52M用IFを搭載することなく156M用IFを搭載したとすると、156M用IFを268枚購入する必要が生じるものの、52M用IFは804枚購入する必要がなくなり、差し引きIFの購入経費を約2億0130万円節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、近年、伝送路の大容量化が進んできていることにもよるが、主として次のことによると認められた。
(ア) 本社において、IFの経済的な選択方法について十分な指導を行っていなかったこと
(イ) 各支社等において、新ディジタル伝送装置の設計に当たり、IFの購入単価等の比較に基づいた経済的な設計を行うことについての認識が十分でなく、基本量信号1本に相当する伝送速度52Mb/sを、そのままIFの種類の選択の基準としていたこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、NTTでは、7年11月に、各支社及びネットワークセンタを統括している長距離通信事業本部に対して指示文書を発し、新ディジタル伝送装置の設計について、IFの購入単価等を十分考慮し、経済的に行うように改めることとする処置を講じた。
(注1) 東京支社ほか20支社等 東京、関東、信越、東海、北陸、関西、中国、四国、九州、東北、北海道各支社及び中央、信越、東海、北陸、関西、中国、四国、九州、東北、北海道各ネットワークセンタ
(注2) 関東支社ほか15支社等 関東、信越、東海、北陸、関西、中国、四国、九州、東北、北海道各支社及び中央、北陸、関西、中国、九州、北海道各ネットワークセンタ
(注3) 25ビル 1つのビルに態様が複数ある場合があるので、各態様のビル数を合算したものと一致しない。
(注4) 関東支社ほか3支社 関東、信越、東海、北海道各支社
(注5) 関東支社ほか8支社等 関東、信越、関西、中国、四国、東北、北海道各支社及び中央、中国両ネットワークセンタ
(注6) 関東支社ほか11支社等 関東、東海、北陸、関西、九州、東北各支社及び中央、北陸、関西、中国、九州、北海道各ネットワークセンタ