科目 | 設備投資勘定 |
部局等の名称 | 日本電信電話株式会社 |
光線路切替・試験システムの概要 | 光ファイバケーブルの工事完成試験、日常の定期試験、移転工事に伴う光ファイバ心線の切替等を遠隔操作により行い、光ファイバケーブルの効率的な建設、保守業務等を行うシステム |
光線路切替・試験システムの導入に要した経費 | 1,953,667,744円 |
節減できた経費 | 7540万円 |
<検査の結果> |
支店及びネットワークセンタが、上記のシステムを同一の機械棟内に導入している場合にモジュール制御部等を共用して、双方のモジュール部を制御したり、モジュール部の設置に当たり、収容する光ファイバケーブルの心線数に見合った形式のものを設置したりすると、導入の経費を約7540万円節減できたと認められた。 このような事態が生じていたのは、システムの経済的な設計についての配慮が十分でなかったこと、システムの導入に当たり、支社及びネットワークセンタ相互の連絡調整が十分に行われていなかったことなどによると認められた。 |
<当局が講じた改善の処置> |
本院の指摘に基づき、日本電信電話株式会社では、平成7年11月に、各支社及び長距離通信事業本部に対して指示文書を発し、システムの導入に当たり、支社及びネットワークセンタが相互の設置計画等を確認することにより、モジュール制御部等の共用を図ることとするなど、各装置の設計を適切なものとする処置を講じた。 |
1 光線路切替・試験システムの概要
日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)では、高度情報社会の通信基盤を構築するため、通信網の光ファイバケーブル(以下「光ケーブル」という。)化を推進している。そして、全国及び都道府県内の幹線網として敷設している光ケーブルについて、その建設、保守業務等を効率的に行うため、平成元年度から、光線路切替・試験システム(以下「光試験システム」という。)を支社が統括する各支店及び長距離通信事業本部が統括する各ネットワークセンタの機械棟(以下「ビル」という。)に導入している。
全国幹線網の光ケーブルについてはネットワークセンタが、都道府県内幹線網の光ケーブルについては支店が、それぞれ光試験システムを用いて、工事完成試験、日常の定期試験、移転工事に伴う光ファイバ心線(以下「心線」という。)の切替等を実施している。
光試験システムは、光ケーブルの心線を収容しているモジュール部、試験機器類を装備してモジュール部を制御する測定制御部(以下「モジュール制御部」という。)及びこれらを支店又はネットワークセンタの事務室等から遠隔操作する監視制御部(以下「遠隔制御部」という。)から構成されている(下図参照)
。また、収容する光ケーブルの心線数が少ないビルでは、モジュール制御部の機能とモジュール部の機能とを併せ持つ装置(以下「制御部付モジュール部」という。)が導入されている。そして、6年度までに導入された光試験システムの装置数は、全国の512ビルで、モジュール部724架、モジュール制御部396架、遠隔制御部128台及び制御部付モジュール部163架となっている。
(光試験システムの装置の概要)
光試験システムの各装置の機能は、次のとおりである。
(1) モジュール部は、ビルに引き込まれた光ケーブルの心線を収容しており、モジュール制御部からの制御を受けて心線を選択し、試験光を入射したり、心線の切替を行ったりする。そして、モジュール部には、1架当たり収容可能な光ケーブルの心線数が320心、224心及び128心の型式のものがある。
(2) モジュール制御部は、遠隔制御部からの指令を受けてモジュール部を制御し、光ケーブルの光損失試験(注1) 、光パルス試験等(注2) を行う。そして、モジュール制御部1架でモジュール部を10架まで制御できる。
(3) 遠隔制御部は、通信回線を介して、保守を担当する区域のビル内のモジュール制御部又は制御部付モジュール部を遠隔操作し、光ケーブルの試験や心線切替の指令を行う。
(4) 制御部付モジュール部は、1架で光ケーブルの心線を104心収容可能であり、また、他のモジュール部を3架まで制御できる。
2 検査の結果
モジュール制御部は、制御の対象となるモジュール部の架数に応じて設置するよう適切に設計されているか、また、モジュール部は、収容する光ケーブルの心線数に応じて設置するよう適切に設計されているか、などに着目して調査した。
調査は、東京支社ほか10支社(注3)
管内及び中央ネットワークセンタほか9ネットワークセンタ(注4)
管内で6年度中に導入されたモジュール制御部45架、モジュール部111架、制御部付モジュール部25架を対象として行った。これらの装置の導入に要した経費は、19億5366万余円となっている。
調査の結果、関東支社ほか2支社及び中国ネットワークセンタほか1ネットワークセンタ(注5) において、次のとおり、光試験システムの設計が適切でなく、モジュール制御部及びモジュール部の設置が不経済となっている事態が見受けられた。
(ア) 支店及びネットワークセンタが、同一ビル内に光試験システムをそれぞれ導入しており、先に設置したモジュール制御部又は制御部付モジュール部によって双方のモジュール部の制御が可能であるのに、それぞれモジュール制御部又は制御部付モジュール部を設置していたもの
7ビル 不経済となっているモジュール制御部7架
(イ) 収容が見込まれる光ケーブルの心線数に見合った型式のモジュール部を設置すれば足りるのに、それよりも収容心線数が多い高価な型式のモジュール部を設置していたもの
4ビル 不経済となっているモジュール部 4架
したがって、モジュール制御部、モジュール部の設置に当たっては、各ビル内において、支店及びネットワークセンタがモジュール制御部等を共用して双方のモジュール部を制御したり、収容する光ケーブルの心線数に見合った型式のモジュール部を設置したりすることとして、経済的な設計を行う要があると認められた。
上記の3支社及び2ネットワークセンタが、モジュール制御部、モジュール部の設置に当たり、上記のような経済的な設計をしたとすると、モジュール制御部7架の導入に要した経費を約5790万円、モジュール部4架の導入に要した経費を約1750万円、計約7540万円節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、次のことによると認められた。
(ア) 本社において、支社及びネットワークセンタに対する光試験システムの経済的な設計についての指導が十分でなかったこと
(イ) 支社及びネットワークセンタにおいて、光試験システムの各装置の設置に当たり、設計を経済的に行うことについての配慮が十分でなく、また、相互の連絡調整が十分に行われていなかったこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、NTTでは、7年11月に、各支社及び長距離通信事業本部に対して指示文書を発し、次のとおり、光試験システムの各装置の設計を経済的に行うこととする処置を講じた。
(ア) 光試験システムの導入に当たり、支社及びネットワークセンタが相互の設置計画等を確認することにより、モジュール制御部等の共用を図ることとした。
(イ) 収容する光ケーブルの心線数を精査して、これに見合った型式のモジュール部を設置することとした。
(注1) 光損失試験 光ケーブルの心線内の光の減衰度合を測定する試験
(注2) 光パルス試験 光ケーブルの断線位置を特定するなどの試験
(注3) 東京支社ほか10支社 東京、関東、信越、東海、北陸、関西、中国、四国、九州、東北、北海道各支社
(注4) 中央ネットワークセンタほか9ネットワークセンタ 中央、信越、東海、北陸、関西、中国、四国、九州、東北、北海道各ネットワークセンタ
(注5) 関東支社ほか2支社及び中国ネットワークセンタほか1ネットワークセンタ 関東、東海、中国各支社及び中国、九州両ネットワークセンタ