科目 | 営業費用 |
部局等の名称 | 日本電信電話株式会社 |
業務の概要 | 電話料金等の口座振替の金融機関に対する請求等の事務処理 |
郵送による口座振替の請求に要した経費 | 郵送費 | 188,256,076円 |
委託費 | 67,249,791円 | |
用紙印刷費等 | 31,875,703円 | |
計 | 287,381,570円 |
<検査の結果> |
電話料金等の口座振替を金融機関に対して請求するに当たり、業務用の通信回線を活用して、情報センタ相互で請求情報を送受信することにより、郵送費等を約1億2160万円節減できたと認められた。 このような事態が生じていたのは、本社において、各情報センタにおける口座振替の請求の実態を十分に把握しておらず、各情報センタが作成している磁気テープを情報センタ相互で活用することなどについて、検討が十分でなかったことによると認められた。 |
<当局が講じた改善の処置> |
本院の指摘に基づき、日本電信電話株式会社では、平成7年11月に、各情報センタ相互で口座振替の請求情報を送受信するため、各支社に対し金融機関との契約の見直しを指示するとともに、社内システムの機能を改善することとする処置を講じた。 |
1 口座振替の請求の概要
日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)では、東京情報システムサービスセンタほか14情報システムサービスセンタ(注1)
(以下「情報センタ」という。)において、加入電話契約者(以下「加入者」という。)に対する電話料金等の請求業務を料金業務総合システム(注2)
を用いて行っている。
そして、加入者のうち、金融機関の口座振替により支払いを行う者については、領収金額、次回振替額等をあらかじめ通知する事前案内書を発行するとともに、併せて、加入者の指定する金融機関に対して口座振替の請求を行っており、口座振替の請求件数は平成7年3月分で4706万余件となっている。
情報センタからの各金融機関に対する口座振替の請求は、NTTの東京支社ほか10支社(注3) が各金融機関と締結した収入金の収納事務に関する契約に基づき実施している。この契約によれば、口座振替の請求には次の2つの方法があり、金融機関ごとにいずれかの方法が採られている。
〔1〕 MT請求 加入者の預金口座番号、料金請求額等の情報を記録した磁気テープ(Magnetic Tape)を、金融機関の本店等に対し、振替日の7日前までに宅配便等で送付し、請求する方法
〔2〕 非MT請求 〔1〕 の磁気テープと同じ内容の情報を出力、印刷した振替伝票類を、金融機関の各店舗に対し、振替日の7日前までに郵送し、請求する方法
上記の2つの請求方法のうちいずれを採用するかについては、各情報センタが取り扱っている金融機関ごとの請求件数等により各支社が判断することになっており、請求件数が比較的多い金融機関に対しては当該金融機関の各店舗分をまとめてMT請求を、それ以外の金融機関に対しては各店舗別に非MT請求を行っている。
6年度における非MT請求による講座振替の請求件数は年間延べ419万余件に上がっており、これを封書にして金融機関に対し発送した郵便通数は年間延べ151万余通で、その郵送費は1億8825万余円となっている。また、このほか請求書の封入、発送等の作業を部外に委託していて、その委託費として6724万余円を、請求書の用紙印刷費等として3187万余円をそれぞれ支払っており、郵送費とこれらを合わせると計2億8738万余円となる。
2 検査の結果
MT請求の場合、金融機関の各店舗分をまとめた大量の情報を磁気テープに記録して、当該金融機関の本店等に送付するのに対し、非MT請求の場合は、金融機関の店舗別にそれぞれ振替伝票類を郵送することから、非MT請求の発送通数は大量となり、その費用は多額に上っている。そこで、非MT請求が行われているものについても、他の情報センタのMT請求用の磁気テープに所要の情報を追加記録することなどにより、郵送費等の節減を図ることができないかなどについて着目して調査した。
調査は、全15情報センタを対象とした。そして、金融機関別の口座振替の請求件数を記録したデータベースが2箇月で書き換えられ、6年度分の資料が残っていないことから、7年の会計実地検査時点における口座振替の請求に係る資料を基に確認することとし、いずれの情報センタについても同年6月分を対象に実施することとした。
調査の結果、6月分の非MT請求による件数は計346,547件あり、取扱金融機関の店舗数は76,947店舗に上っていた。そして、これらについては、上記のとおり、振替伝票類を各情報センタから金融機関の各店舗に郵送しており、請求1件当たりの郵送費は約46円となっていて、MT請求の場合の請求1件当たりの送料約0.08円に比べ著しく割高なものになっていた。
しかし、これら非MT請求を行っているもののうち、51,008店舗に係る192,476件の請求については、次のような理由から、料金業務総合システムに、情報センタ相互で口座振替の請求情報を送受信する機能を付加することなどにより、MT請求に切り替えることが可能であると認められた。
(1) これらの店舗については、当該金融機関の本店等に対して、いずれかの情報センタが既にMT請求を行っていること
(2) 各情報センタでは、NTTの業務用の回線を利用して多数の情報を相互に送受信しており、これらの口座振替の請求情報についても、業務用の回線を有効に利用して送受信し、受信した情報センタにおいて、金融機関に対して送付している磁気テープに追加記録することが十分可能であると認められること
(3) (2)で磁気テープに追加記録される情報量は、現在MT請求により口座振替している情報量の0.4%程度で、各情報センタの業務量にほとんど影響を及ぼさないこと
したがって、上記の192,476件については、MT請求に切り替えることにより、これまで非MT請求に伴い要していた郵送費等を節減できたと認められた。
金融機関に対して非MT請求からMT請求に切り替えられる例は極めて少なく、6年度の各月の非MT請求の件数が7年6月と同様の件数で推移していることから、7年6月に非MT請求を行っているもののうちMT請求が可能と認められるものの割合は、6年度においてもほぼ同様の割合になると認められる。そこで、これを基に6年度における郵送費、委託費及び用紙印刷費等の節減額を計算すると、それぞれ1億2343万余円、3690万余円、2007万余円、計1億8041万余円となり、料金業務総合システムヘの機能の付加に伴うコンピュータの運用委託費、設備のリース料等約5870万円を新たに見込んだとしても、約1億2160万円節減できたと認められる。
このような事態が生じていたのは、本社において、各情報センタにおける口座振替の請求の実態を十分に把握しておらず、各情報センタが作成している磁気テープを情報センタ相互で活用することなどについて、検討が十分でなかったことによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、NTTでは、7年11月に、各情報センタ相互で口座振替の請求情報を送受信するため、各支社に対し金融機関との契約の見直しを指示するとともに、社内システムの機能を改善することとする処置を講じた。
(注1) 東京情報システムサービスセンタほか14情報システムサービスセンタ 東京、横浜、浦和、信越、名古屋、静岡、北陸、大阪、京都、神戸、中国、四国、九州、東北、北海道各情報システムサービスセンタ
(注2) 料金業務総合システム 電話料金等の計算、料金請求書の発行等の業務をコンピュータで処理する社内システム
(注3) 東京支社ほか10支社 東京、関東、信越、東海、北陸、関西、中国、四国、九州、東北、北海道各支社