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  • 平成6年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第13 西日本旅客鉄道株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

鉄道の土木工事における鉄筋加工組立費の積算を適切なものとするよう改善させたもの


鉄道の土木工事における鉄筋加工組立費の積算を適切なものとするよう改善させたもの

科目 (款)鉄道事業営業費 (項)線路保存費 (項)電路保存費
(款)建設勘定 (項)安全対策 (項)保安防災対策
(項)安定輸送対策 (項)環境保全
(項)業務運営方式の改善
(項)技術開発 (項)大都市圏輸送
(款)受託工事勘定 (項)受託工事費
部局等の名称 西日本旅客鉄道株式会社本社
工事名 草津東西連絡地下通路新設6ほか42工事
工事の概要 鉄道施設等の新設又は改良工事の一環として、橋台、擁壁、高架橋等の鉄筋コンクリート構造物の築造を行う工事
工事費 8,737,198,585円
請負人 草津東西連絡地下通路新設工事共同企業体ほか1共同企業体及び15会社
契約 平成6年4月〜7年3月 指名競争契約、随意契約
過大積算額 7200万円
 
<検査の結果>

 上記の各工事において、鉄筋加工組立費の積算(積算額計5億1844万余円)が適切でなかったため、積算額が約7200万円過大になっていた。
 このように積算額が過大になっていたのは、近年における鉄筋加工組立費の市場価格の動向などについて十分把握しておらず、積算の基準を見直すなど適切な対応をしていなかったことによるものであり、積算の基準を適切なものに改める要があると認められた。
 
<当局が講じた改善の処置>

 本院の指摘に基づき、西日本旅客鉄道株式会社では、平成7年11月に、鉄筋加工組立費を算定する際に市場価格の動向が反映されるよう積算の基準を改定し、同月以降積算する工事から適用することとする処置を講じた。

1 工事の概要

(工事の内容)

 西日本旅客鉄道株式会社(以下「JR西日本」という。)では、鉄道施設等の新設又は改良工事の一環として、橋台、擁壁、高架橋等の鉄筋コンクリート構造物の築造を行う工事を毎年多数施行している。そして、本社及び金沢支社ほか8支社(注) では、平成6年度に、43工事(工事費87億3719万余円)を施行している。

(鉄筋加工組立作業の内容)

 上記の鉄筋コンクリート構造物を築造するための鉄筋加工組立作業は、鉄筋を加工工場又は現場で切断機、加工機等を用いて切断、曲げ加工を行った後に、これらの加工した鉄筋を現場で組み立てるものである。

(鉄筋加工組立費の積算)

 JR西日本では、上記各工事の鉄筋加工組立費の積算に当たっては、「コンクリート工積算要領(案)」(以下「積算要領」という。)に基づいて行うこととしている。そして、積算要領は、一般に公表されている4年度の「建設省土木工事積算基準」(建設大臣官房技術調査室監修、土木工事積算研究会編著。以下「建設省基準」という。)に準拠して定められている。積算要領及びこの建設省基準における鉄筋加工組立費の積算方法は、鉄筋の径ごとに鉄筋加工組立歩掛かりを定め、この歩掛かりに労務単価を乗じるなどして積み上げ計算を行う方式によっている。
 そして、JR西日本では、積算要領に基づき、前記43工事の鉄筋加工組立費を1工事当たり339,829円から87,860,306円、鉄筋総重量5,250,153tで5億1844万余円と算定していた。

2 検査の結果

(調査の観点)

 積算要領は、前記のとおり、4年度の建設省基準に準拠して定めたものである。しかし、5年度の建設省基準は、歩掛かりを用いて鉄筋加工組立費を積算する4年度までの方式に代えて、市場価格の動向を速やかに反映させるなどのため、歩掛かりを用いないで、鉄筋加工組立費の鉄筋重量1t当たりの市場の取引価格(以下「市場単価」という。)を把握し、これを直接用いて積算する方式(以下、この方式を「市場単価方式」という。)に改定されている。
 この市場単価は、元請業者と専門工事業者との間での、通常取引されている実態を調査して得られたものであることから、市場での実勢価格を反映しているとされている。そして、鉄筋加工組立費の市場単価は、積算参考資料で構造物の種類ごとに毎月公表されており、公表が開始された5年4月以降、低下傾向になっている。
 そこで、これらの点を踏まえJR西日本の鉄筋加工組立費の積算が市場価格の動向を反映した適切なものとなっているかについて調査することとした。

(調査の結果)

 調査したところ、前記43工事のすべての工事において、積算要領に基づいて算出した積算単価が市場単価方式により計算した単価を上回っていた。
 すなわち、各工事ごとに、積算された鉄筋加工組立費を各工事で使用する鉄筋の重量で除して、各工事ごとの鉄筋重量1t当たりの積算単価を計算すると、76,374円から178,857円となる。一方、市場単価方式により各工事ごとの鉄筋重量1t当たりの単価を計算すると、73,031円から123,595円となる。そして、これら43工事において積算単価が市場単価方式による計算単価を上回っている状況は次のとおりである。

〔1〕 単価差が2万円以上のもの 22工事
(うち、単価差が積算単価の2割を超えているもの 21工事
〔2〕 単価差が1万円以上2万円未満のもの  13工事
〔3〕 単価差が1万円未満のもの 8工事

 したがって、積算要領に基づいて算出した鉄筋加工組立費は、市場価格の動向を反映したものとはなっておらず、積算要領を適切なものに改める要があると認められた。

(低減できた積算額)

 本件各工事の鉄筋加工組立費を市場単価方式を用いて修正計算すると、1工事当たり234,831円から77,782,999円、総額4億4638万余円となり、鉄筋加工組立費の積算額を約7200万円低減できたと認められた。

(発生原因)

 このように積算額が過大になっていたのは、近年における鉄筋加工組立費の市場価格の動向について十分把握しておらず、積算要領が準拠した建設省基準の鉄筋加工組立費の積算に市場単価方式が導入されていたのに、積算要領を見直すなど適切な対応をしていなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、JR西日本では、7年11月に、鉄筋加工組立費を算定する際に市場価格の動向が反映されるよう積算要領を改定し、同月以降積算する工事から適用することとする処置を講じた。

(注)  金沢支社ほか8支社 金沢、京都、大阪、和歌山、神戸、福知山、岡山、広島、米子各支社