科目 | (款)鉄道事業営業費 (項)一般管理費 |
部局等の名称 | 九州旅客鉄道株式会社本社 |
契約の概要 | 旅客駅等の出札窓口等において端末装置により発売する定期乗車券に使用する原紙を購入するもの |
契約の相手方 | 共同印刷株式会社 |
契約 | 昭和62年4月 随意契約(毎年自動更新) |
購入量 | 2,003,100枚 | (平成5、6両年度) |
購入額 | 40,025,944円 | (平成5、6両年度) |
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上記の契約に当たり、自動改札装置で使用されることを考慮した高価なポリエステルフィルム製の原紙を購入していたため、購入額が約3550万円不経済になっていると認められた。 このような事態が生じていたのは、管内の旅客駅に自動改札装置が導入されていないことなどから、ポリエステルフィルム製の原紙に代えて経済的なロール原紙を使用することとしても支障がないのに、その配慮が十分でなかったことなどによると認められた。 |
<当局が講じた改善の処置> |
本院の指摘に基づき、九州旅客鉄道株式会社では、平成7年10月に、本社においてポリエステルフィルム製の原紙を購入しないこととするとともに、各支社に指示文書を発し、旅客駅等において定期乗車券を発券するに当たっては、同原紙に代えてロール原紙を使用することとする処置を講じた。 |
1 定期乗車券の原紙の概要
九州旅客鉄道株式会社(以下「JR九州」という。)では、管内の296旅客駅等において、旅客の通勤又は通学のための定期乗車券を発売している。
この定期乗車券の発売に当たり、出札窓口等に乗車券等を発券する端末装置が設置されている145旅客駅等では、その端末装置により定期乗車券の原紙に有効区間・期間等の所要事項を印字して定期乗車券を発券している。そして、汚損を防ぎ、また、裏面に使用上の注意事項等を示すなどのため、その注意文を印刷したラミネートフィルム(注)
で被覆して発売している。
上記の端末装置には、全国のJR各社の旅客駅等を結ぶホストコンピュータに接続し各種乗車券のほか指定席券等の発券もできる装置(以下「指定端末装置」という。)と、JR九州固有のホストコンピュータに接続し指定席券等を除く各種乗車券を発券する装置(以下「普通端末装置」という。)がある。
このうち指定端末装置は、磁気媒体に情報を書き込む機能を持つもので、58旅客駅等に設置されている。
そして、この58旅客駅等では、指定端末装置に、〔1〕 定期乗車券の原紙として、ポリエステルフィルム製のカード状の原紙(縦57.5mm、横85mm。 以下「ポリエステル原紙」という。)を、また、〔2〕 定期乗車券以外の各種乗車券、指定席券等の原紙として、普通端末装置で定期乗車券等に使用されているロール状の上質紙に磁気膜を塗布した原紙(幅57.5mm、長さ250m。以下「磁気ロール原紙」という。)を装てんしており、これらをそのまま又は裁断して使用し、それぞれの乗車券等を発券している。
上記の原紙のうち、ポリエステル原紙は、自動改札装置で使用できる定期乗車券用の規格の原紙とされているもので、同装置で繰り返し使用されることから、耐久性等を考慮して、ポリエステルフィルムを使用したうえ、その表面に特殊樹脂を、裏面に磁気膜を塗布しその上に保護膜をそれぞれ施したものとなっている。
そして、JR九州では、ポリエステル原紙を本社で単価契約により一括して購入して、前記の指定端末装置を設置している58旅客駅等に配付している。その平成5、6両年度の購入数量及び金額は、5年度1,025,100枚、20,483,548円、6年度978,000枚、19,542,396円、計2,003,100枚、40,025,944円となっている。
2 検査の結果
定期乗車券用のポリエステル原紙は、自動改札装置で使用されることから、耐久性等を考慮して、ポリエステルフィルムを使用したうえ、種々の加工がなされており、同じく指定端末装置で定期乗車券以外の乗車券等に使用されている磁気ロール原紙に比べて著しく高価なものとなっている。
そこで、こうしたポリエステル原紙を使用した定期乗車券の発売が、管内の旅客駅における自動改札装置の導入状況に適合しているかなどの観点から調査した。
調査したところ、JR九州においては、6年度末現在、管内の旅客駅に自動改札装置は導入されておらず、7年度以降もその具体的な導入計画はないことから、現段階では、自動改札装置での使用を考慮した耐久性のあるポリエステル原紙の定期乗車券とする必要はないと認められた。
そして、これに代えて、定期乗車券以外の乗車券等に使用されている安価な磁気ロール原紙を使用することとしても、次のとおり支障はないと認められた。
(ア) 指定端末装置は、初期設定を変更するだけで、他の乗車券等と同様定期乗車券についても磁気ロール原紙を使用して発券でき、その発券作業もポリエステル原紙を使用する場合と変わらないこと
(イ) 磁気ロール原紙は、指定端末装置用に磁気膜を塗布している点を除けば、普通端末装置で定期乗車券用に使用されている原紙と同じであり、普通端末装置で発券し発売する場合と同様に、ラミネートフィルムで被覆すれば、利用者の利便の点等で変わるところがないこと
したがって、指定端末装置で定期乗車券を発券する場合、ポリエステル原紙に代えて、経済的な磁気ロール原紙を使用することとし、定期乗車券の原紙購入費の節減を図る要があると認められた。
上記により、ポリエステル原紙に代えて磁気ロール原紙を使用したとして、指定端末装置に係る定期乗車券の原紙の価格を計算すると、5年度1,024,177円、6年度977,119円、計2,001,296円となる。そして、これによれば、定期乗車券の発売を円滑に行うために一部の旅客駅等で必要なラミネートフィルムを被覆する装置の購入費2,440,070円を考慮したとしても、前記の購入額を約3550万円節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、JR九州において、管内の旅客駅に自動改札装置が導入されていないことなどから、ポリエステル原紙に代えて経済的な磁気ロール原紙を使用することとしても支障がないのに、そのことへの配慮が十分でなかったことなどによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、JR九州では、7年10月に、次のとおり定期乗車券の原紙購入費の節減を図る処置を講じた。
(ア) 本社において、ポリエステル原紙を購入しないこととした。
(イ) 各支社に対して指示文書を発し、旅客駅等において、指定端末装置により定期乗車券を発券する場合には、ポリエステル原紙の在庫がなくなり次第、同原紙に代えて磁気ロール原紙を使用することとした。
(注) ラミネートフィルム 汚損、偽造等を防止するために各種の証明書等を被覆し密封するポリエステル製の透明なフィルム