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  • 平成6年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第15 日本貨物鉄道株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

コンテナ留置料の算定が容易に行える帳票をコンピュータシステムから出力することなどにより、コンテナ留置料の収受を適切に行うよう改善させたもの


コンテナ留置料の算定が容易に行える帳票をコンピュータシステムから出力することなどにより、コンテナ留置料の収受を適切に行うよう改善させたもの

科目 (款)鉄道事業営業収益 (項)運輸雑収
部局等の名称 日本貨物鉄道株式会社関東、東海、関西各支社
コンテナ留置料の概要 貨物駅に到着したコンテナ貨物を通運事業者が駅構内で一定期間を超えて留置する場合に収受する料金
コンテナ留置料を収受していなかったコンテナ貨物数 7,860個
上記に係るコンテナ留置料 6950万円


<検査の結果>


 上記のコンテナ留置料の収受に当たり、駅構内に一定期間を超えて留置されているコンテナ貨物について、コンテナ留置料の算定を行っていなかったため、約6950万円が収受不足になっていた。
 このような事態が生じていたのは、コンテナ貨物の運送管理を行うコンピュータシステムにおいて、コンテナ留置料の算定が容易に行えるように対象期間等が一覧できる帳票を出力するようになっていなかったことなどによると認められた。


<当局が講じた改善の処置>


 本院の指摘に基づき、日本貨物鉄道株式会社では、平成7年11月に、コンピュータシステムのプログラムを改良するとともに、各支社に対して通達を発し、コンテナ留置料の算定についての具体的方法を明示するなどし、同年12月以降、その収受を適切に行うこととする処置を講じた。

1 コンテナ留置料の概要

(コンテナ貨物及びコンテナ留置料の概要)

 日本貨物鉄道株式会社(以下「JR貨物」という。)では、貨物鉄道事業の一環として、コンテナにより運送する貨物(以下「コンテナ貨物」という。)の取扱いを全国165のコンテナ貨物の取扱駅等(以下「貨物駅」という。)において行っている。
 コンテナ貨物の貨物駅での搬入及び搬出は通運事業者によって行われているが、鉄道輸送により貨物駅に到着したコンテナ貨物を、通運事業者が駅構内に一定期間を超えて留置する場合には、JR貨物では、貨物運送約款(昭和62年日本貨物鉄道株式会社公告第1号)に基づき、コンテナ留置料を収受することとしている。
 コンテナ留置料の収受に当たっては、各貨物駅で通運事業者別にコンテナ留置料を算定し、これに基づき、JR貨物の北海道支社ほか5支社(注1) が、通運事業者からコンテナ留置料を月ごとに請求し収納することとなっている。
 平成6年度において貨物駅に到着したコンテナ貨物の個数(以下「到着個数」という。)は、上記の165貨物駅分で計3,527,952個(JR貨物所有コンテナ分2,964,402個、私有コンテナ分563,550個)に上っており、これらのうち74貨物駅でコンテナ留置料を算定しており、その収受額は計144,295,769円となっている。

(コンテナ留置料の算定)

 コンテナ留置料については、前記の貨物運送約款及びJR貨物が定めた「コンテナ貨物の早期搬出の督促について」(昭和62年事務連絡)等により、コンテナ留置料の算定対象となる期間(以下「留置料対象期間」という。)に1日当たりの料金を乗じて算定することとなっている。
 そして、この留置料対象期間は、通運事業者にコンテナ貨物の到着通知をした日から5日間を超えた場合に、その超えた日からコンテナ貨物を貨物駅から搬出した日までの日数とし、1日当たりの料金は、JR貨物所有のコンテナのほとんどを占める5トンコンテナの場合、1個につき1,000円としている。

(貨物情報ネットワークシステムの概要)

 JR貨物では、コンテナ貨物の運送管理をコンピュータシステムにより行うこととして、コンテナ情報システムを運用してきており、6年1月からは、これを改良した「貨物情報ネットワークシステム」(以下「システム」という。)を運用している。
 このシステムでは、コンテナ貨物ごとにその集貨、搬入、発送、到着、搬出及び通運事業者による配達等のデータを、その都度、貨物駅の端末装置からシステムに入力することにより、個々のコンテナ貨物の所在や貨物の積荷の状態を常に把握し、必要に応じて各種の帳票類を出力できるようにしている。

2 検査の結果

(調査の対象及び観点)

 前記の165貨物駅(6年度の到着個数計3,527,952個)のうちから、到着個数の多いことなどを考慮して、北海道支社ほか5支社管内の札幌貨物ターミナル駅ほか5駅(注2) (同、計1,142,272個)を選定した。そして、この6駅で取り扱ったコンテナ貨物のうち、私有コンテナ貨物に比べて留置日数が長いJR貨物所有コンテナ貨物の到着個数計912,182個(これらに係るコンテナ留置料の収受額は5,736個分44,079,880円)を対象として、コンテナ留置料の収受が適切に行われているかを調査した。

(調査の結果)

 調査の結果、次のとおり、関東支社ほか2支社管内の隅田川駅ほか2駅において、通運事業者に到着通知をした日から5日間(土曜日、日曜日及び祝日等を除く。)を超えて留置していて、コンテナ留置料の算定対象となっているのに、これを算定していないコンテナ貨物が、計7,860個見受けられた。このため、これらに係るコンテナ留置料計69,574,440円が収受不足になっていると認められた。

(ア) 関東支社管内の隅田川駅及び東海支社管内の名古屋貨物ターミナル駅には、コンテナ留置料の算定対象とすべきコンテナ貨物が計6,575個あったが、両駅では、システムから出力したコンテナ個別状態表だけでは留置料対象期間が算出できないことから、コンテナ留置料を算定していなかった。このため、関東、東海両支社では、コンテナ留置料を通運事業者に請求しておらず、計62,024,540円が収受不足となっていた。

(イ) 関西支社管内の大阪貨物ターミナル駅には、コンテナ留置料の算定対象とすべきコンテナ貨物が1,388個あった。しかし、同駅では、一部の期間の103個のコンテナ貨物についてコンテナ留置料計610,790円を算定しただけで、上記(ア)と同様の事情により、大部分の1,285個のコンテナ貨物についてコンテナ留置料を算定していなかった。このため、関西支社では、これらに係るコンテナ留置料を通運事業者に請求しておらず、計7,549,900円が収受不足となっていた。

 このようにコンテナ留置料を算定していない理由として、上記の各駅では、システムから出力したコンテナ個別状態表には、留置料対象期間の算出に必要なコンテナ貨物の搬出日が示されておらず、このため、個々のコンテナ貨物の搬出日の調査に多くの要員が必要になるとしていた。
 しかし、このシステムには、前記のとおり、個々のコンテナ貨物に係る搬出日がデータとして入力されているので、システムのプログラムを改良し、留置料対象期間等を一覧できる帳票を出力することにより、コンテナ留置料の算定を容易に行うことができるものと認められた。
 したがって、上記のように、コンテナ留置料の算定対象となっているのにこれを算定することなく、多額のコンテナ留置料を収受していない事態は適切でなく、改善する必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のような理由によると認められた。

(ア) 本社において、コンテナ留置料の算定に当たって必要となるコンテナ貨物の留置料対象期間等を一覧できる帳票をシステムから出力できるようにしていなかったこと、また、コンテナ留置料の収受状況を十分に把握しておらず、支社及び貨物駅に対する適切な指導を行っていなかったこと

(イ) 支社及び貨物駅において、コンテナ留置料の収受に対する認識が十分でなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、JR貨物では、次のとおり、コンテナ留置料の収受を適切に行うこととする処置を講じた。

(ア) 本社では、7年11月に、貨物駅でコンテナ留置料の算定が容易に行える一覧表を出力できるようにシステムのプログラムを改良するとともに、各支社に対して通達を発し、貨物駅でのコンテナ留置料の算定が適切に行われるよう具体的方法を明示した。

(イ) 支社及び貨物駅では、上記通達を受け、同年12月以降、コンテナ留置料の収受の徹底を図ることとした。

(注1)  北海道支社ほか5支社 北海道、東北、関東、東海、関西、九州各支社

(注2)  札幌貨物ターミナル駅ほか5駅 札幌貨物ターミナル、宮城野、隅田川、名古屋貨物ターミナル、大阪貨物ターミナル、福岡貨物ターミナル各駅