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  • 平成6年度|
  • 第3章 特定検査対象に関する検査状況

国際協力事業団が技術協力の実施等に供する機材の調達について


第4 国際協力事業団が技術協力の実施等に供する機材の調達について

(1) 平成6年9月、公正取引委員会は、国際協力事業団が技術協力の実施等に供する機材の調達契約の相手方である一般商社等に対し、独占禁止法に違反する入札談合の疑いで審査を開始した。そして、7年3月、同委員会は、上記の違反行為を行っていた事実を認定するとともに、今後、これを行わないことなどを一般商社等37社に対し勧告した。その後、上記の37社は勧告を応諾した。

(2) このような事態を踏まえ、検査した状況は次のとおりである。

〔1〕 予定価格の算定方法やその算定の基礎とした機材の見積価格について、特に問題とすべき事態は見受けられなかった。

〔2〕 入札状況について、公正取引委員会の審査開始の前後で区分してみると、1回目の入札で落札した契約件数が審査開始後は増加するなどしていた。

(3) 同事業団においては、公正取引委員会の審査開始後、契約事務に関し一般競争入札を導入するなどの措置を執っている。

1 検査の背景

 平成6年9月、公正取引委員会は、国際協力事業団(以下「事業団」という。)が技術協力の実施等に供する機材の調達契約の相手方である一般商社等に対し、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(昭和22年法律第54号)で禁止する不当な取引制限(入札談合)の疑いがあるとして、審査を開始した。そして、7年3月、同委員会は、上記の違反行為を行った事実があること、及び審査開始後違反行為を取りやめていることを認定するとともに、今後、これを行わないことなどを一般商社等37社に対し、勧告した。これに対し、上記の37社は同年4月までに勧告を応諾した。
 本院では、このような事態を踏まえ、事業団が技術協力の実施等に供する機材の調達について重点的に検査を実施することとした。

2 検査の対象、観点及び方法

(検査の対象)

 事業団では、開発途上国への技術協力事業等の一環として、毎年多数の機材を調達し相手国に供与するなどしている。そして、これらの機材に係る調達契約のうち、1件当たりの予定価格が500万円を超えるものについては、事業団の調達部門で一括して契約事務を行うこととしており、その件数及び金額は、5年度478件113億4861万余円、6年度404件81億4110万余円となっている。
 事業団における契約方法は一般競争入札によることを原則としているが、調達部門における実際の契約方法は機材の仕様・種類の特殊性などにより、指名競争入札や随意契約によっている。そして、このうち指名競争入札は、調達する機材の種類、数量により、一般商社入札、医療商社入札、薬品商社入札、メーカー入札に区分されている。
 事業団の調達部門における契約のうち、件数、金額が最も多いものは、上記のうち一般商社入札となっており、かつ、これが前記の公正取引委員会による勧告の対象となっている。
 このような状況から、検査に当たっては、5、6両年度における調達部門の一般商社入札による契約を対象とし、さらに6年11月から同部門で試行的に導入した一般競争入札による契約も併せて対象とした。これらの契約の件数及び金額は、5年度204件57億3235万余円、6年度146件33億4286万余円、計350件90億7522万余円となっている。

(検査の観点)

 検査に当たっては、主に次のような観点を中心に調査した。

(1) 予定価格の算定については、その算定方法は適切か、各種機材の市場価格や同種契約事例等の価格に照らして適切に算定されているか。

(2) 契約事務の執行については、契約方法の選定、競争契約における資格審査及び指名は適切に行われているか。

(検査の方法)

 前記の350件の契約について、予定価格の算定等が適切に行われているかなど、その実施状況を把握するため、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき事業団から本院に提出されている契約書、入札調書等の証拠書類について書面検査を行うとともに、7年1月及び8月に事業団本部の会計実地検査を実施した。また、調達の対象となった機材の製造メーカー等からその販売価格等を聴取するなどして検討を行った。

3 検査の状況

 上記の検査の観点に基づいて検査した状況は、次のとおりである。

(1) 予定価格の算定について

 一般商社入札により調達する機材は、技術協力事業の内容等により、科学機器、車両、産業機械、教育用機材等の多種多様なものとなっており、また、1件の契約において多数の品目の機材を調達するのが通常となっていた。そして、これらの機材については、その調達要請があってから調達までの期間が比較的短いこと、機材の種類が多いこと、電源等の海外仕様への変更が必要となることなどから、事業団では、自ら価格調査を行うことは困難であるとして、見積りを徴し、これに基づき所定の方法により予定価格を算定することとしていた。これらの見積りの徴取に当たっては、事業団の内部規程により、原則として1契約の各品目ごとに3社以上の商社等から見積りを徴することとし、また、1品目100万円以上のものなどについては、直接、製造メーカーからも見積りを徴することとしていた。

 上記について、検査の対象とした350件の契約のうち60件の契約を無作為に抽出して調査したところ、見積りの徴取方法や予定価格の算定方法において特に問題とすべき事態は見受けられなかった。
 また、350件の契約のうち116件の契約を無作為に抽出し、これらの契約によって調達された機材のうちから、価格・種類を考慮して158品目を選定し、それらの製造メーカー等から聞取り調査を実施した。その結果、回答が得られた79品目について、該当する機材の見積価格を検討したところ、適切を欠くと認められる事態は特に見受けられなかった。

(2) 契約事務の執行状況について

 検査の対象とした350件の契約状況をみると、試行的に実施した一般競争入札によるものが4件、指名競争入札によるものが288件、指名競争入札後の随意契約によるものが58件となっていた。
 そして、このうち指名競争入札の実施に当たっては、事業団の内部規程に基づき、次のように行われていた。

(ア) 参加有資格者については、事業団の内部規程に基づき登録された業者の中から、所定の要件により、一般商社等38社(6年4月から37社)を選定し有資格者としていた。

(イ) 入札に当たっては、これらの有資格者の中から無作為に8社から10社を抽出することにより、指名業者を選定して入札を行っていた。

(ウ) 3回の入札を行っても落札者がなかった場合には、その3回目の入札における最低価格の入札者から順に交渉を行い随意契約を締結していた。

 検査の対象とした350件の契約の入札状況について、公正取引委員会の審査開始の前後で区分してみると、下表のとおりとなっていて、1回目の入札で落札した契約件数は、審査開始前の34件に対し、審査開始後は115件と増加していた。また、入札不調で随意契約に移行した件数は、審査開始前は57件、審査開始後は1件となっていた。

入札状況

区分 落札までの入札回数 入札不調
(随意契約)
1回 2回 3回

公正取引委員会審査開始前

34

72

60

57

223
公正取引委員会審査開始後 115 6 5 1 127
149 78 65 58 350

4 当局の対応

 事業団では、公正取引委員会の審査開始後、契約事務について次のような措置を執っている。

〔1〕 6年11月から予定価格が1件1億円以上の契約を対象に一般競争入札を試行的に導入しているが、7年10月から1件2500万円以上の契約を対象に一般競争入札を実施する。

〔2〕 7年4月から、一般商社入札を含む指名競争入札の参加有資格者については、追加認定を半年ごとに実施するとともに、資格者の要件を緩和することなどによってその数を大幅に拡大する。また、指名競争入札における指名業者数を増やし、例えば一般商社入札では予定価格が一定金額以上の場合20社とする。

〔3〕 従来の入札説明会の開催に代え入札説明書を個別に交付する。また、入札に関する情報公開の促進を実施する。

5 本院の所見

 事業団の調達部門で行った一般商社入札等の契約について、予定価格の算定及び契約事務の執行状況について検査したところ、上記のような状況となっていて、特に「第2章 個別の検査結果」に掲記するような問題は見受けられなかった。