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雇用保険の雇用調整助成金の支給が適正でなかったもの


(205) 雇用保険の雇用調整助成金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(雇用勘定) (項)雇用安定等事業費
部局等の名称 山形県ほか7都府県(支給庁)
米沢公共職業安定所ほか16公共職業安定所(支給決定庁)
支給の相手方 21事業主
雇用調整助成金の支給額の合計 334,739,620円
不適正支給額 32,987,991円
 雇用調整助成金の支給決定に当たり、事業主からの申請に対する調査確認が十分でなかったため、上記の21事業主に対して32,987,991円が不適正に支給されていた。これらについては、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。

1 保険給付の概要

 (雇用調整助成金)

 雇用調整助成金は、雇用保険(前掲の「雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの」参照 )で行う事業のうちの雇用安定事業の一環として、失業の予防その他雇用の安定を図るため、景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされ、雇用する労働者について休業、教育訓練又は出向を実施した事業主に対して支給されるものである。そして、この助成金は、これら休業等に対して事業主が、休業日について支払った休業手当、教育訓練受講日について支払った賃金又は出向労働者の賃金について負担した額の一部を助成するものである。

 (雇用調整助成金の支給)

 この助成金の支給要件等は、次のとおりとなっている。

(1) 支給要件

 労働大臣が指定する業種の事業主等が、これら事業主の区分に応じて定められた期間(以下「指定期間」という。)内に、労使間の協定により、当該事業所の雇用保険の被保険者(以下「対象被保険者」という。)に対し、次に示す休業、教育訓練又は出向を実施すること

(ア) 休業については、対象被保険者が所定労働日の全一日にわたり休業するものであることなど

(イ) 教育訓練については、その受講日において対象被保険者を業務に就かせないものであることなど

(ウ) 出向については、出向先事業所における対象被保険者の出向期間が3箇月以上であることが確実であると認められるものであることなど

(2) 支給額

(ア) 休業又は教育訓練については、事業所ごとの平均賃金日額に応じて労働大臣が定める基準賃金日額に対象被保険者の休業又は教育訓練の延日数を乗じて得た額(平成6年5月31日以前は、事業主が対象被保険者に支払った休業手当又は教育訓練受講日について支払った賃金の額)に、所定の支給率(注1) を乗じて得た額(教育訓練については、このほか定額の訓練費が支給される。)

(イ) 出向については、事業主が出向労働者の賃金について負担した額に、所定の支給率(注1) を乗じて得た額

(3) 支給日数及び支給対象期間

(ア) 休業又は教育訓練に係る助成金の支給日数は、1指定期間につき休業と教育訓練の延日数の合計が、対象被保険者数に200日を乗じて得た日数を超えない日数

(イ) 出向に係る助成金の支給対象期間は1年間(注2)

(4) 支給手続

(ア) 事業主から、休業、教育訓練又は出向の実施前に、これら休業等に関する労使間の協定書を添付した実施計画届を、実施後に資本の額、事業の種類、対象被保険者数、休業延日数、対象手当額、教育訓練延日数、対象賃金額等を記載した支給申請書を、公共職業安定所にそれぞれ提出させる。

(イ) 公共職業安定所は、これらの支給申請書等に基づいて支給要件等に適合しているかどうかを審査して支給を決定し、これに基づいて、各都道府県が支給する。

 (注1)  所定の支給率 1/2(中小企業事業主の場合は2/3)であるが、平成5年6月11日から9年3月31日までの間は暫定措置が採られている事業主があり、当該事業主について、その支給率は2/3(中小企業事業主の場合は3/4)、さらに教育訓練については6年1月1日から9年3月31日までの間は3/4(中小企業事業主の場合は4/5)となっている。

 (注2)  1年間 6年2月9日から9年3月31日までの期間に係る出向については暫定措置が採られている事業主があり、当該事業主について、2年間となっている。

2 検査の結果

 (検査の対象)

 北海道ほか20都府県(支給決定庁 札幌公共職業安定所ほか178公共職業安定所)から雇用調整助成金の支給を受けた事業主のうち、622事業主(支給額3,871,536,567円)について、公共職業安定所における雇用調整助成金の支給決定の適否を検査した。

 (不適正支給の事態)

 検査したところ、山形県ほか7都府県で、21事業主に対する支給(支給額334,739,620円)について32,987,991円が不適正に支給されていた。これは、米沢公共職業安定所ほか16公共職業安定所において、事業主が制度を十分理解していなかったり、誠実でなかったりして、次のように支給申請書の記載内容が事実と相違していたのに、これに対する調査確認が十分でないまま支給の決定を行っていたことによるものである。

(ア) 休業日又は教育訓練日に業務に就いていた日数分を支給対象として申請していた。

(イ) 実際には休業の一部を実施していないのに出勤簿、賃金台帳を改ざんして、計画どおりに休業を実施したとして申請していた。

 なお、これらの不適正支給額については、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。
 これらの不適正支給額を都府県別に示すと次のとおりである。

都府県名 公共職業安定所 本院が調査した事業主数 不適正受給事業主数 左の事業主に支給した雇用調整助成金 左のうち不適正雇用調整助成金

山形県

米沢

3

1
千円
1,897
千円
1,460
茨城県 古河 3 2 37,047 589
千葉県 千葉 10 1 8,583 8,583
東京都 飯田橋ほか5 44 8 110,942 10,184
神奈川県 川崎ほか1 12 2 82,805 1,145
愛知県 名古屋南ほか1 11 2 28,024 1,738
滋賀県 水口ほか1 10 3 40,807 1,369
大阪府 大阪東ほか1 20 2 24,631 7,916
17箇所 113 21 334,739 32,987