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  • 平成7年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第5 阪神高速道路公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

高速道路の清掃業務における路面清掃費の積算を作業の実態等に適合するよう改善させたもの


 高速道路の清掃業務における路面清掃費の積算を作業の実態等に適合するよう改善させたもの

科目 (項)維持修繕費 (項)業務管理費 (項)災害復旧事業費
部局等の名称 大阪、湾岸、神戸各管理部
契約名 路面清掃業務(6-1-大管)ほか15契約
契約の概要 高速道路の維持管理業務の一環として、路面清掃作業を実施するもの
契約の相手方 日本ハイウェイ・サービス株式会社ほか5株式会社
契約 平成6年5月〜7年4月 指名競争契約、随意契約(単価契約)
支払額 1,412,934,068円(平成6、7両年度)
過大積算額 4800万円
<検査の結果>

  上記の各契約において、路面清掃費(積算額5億1163万余円)の積算が適切でなかったため、積算額が約4800万円過大になっていた。
 このように積算額が過大になっていたのは、清掃作業の実態を積算に反映させるための配慮が十分でなかったことなどによると認められた。

<当局が講じた改善の処置>

  本院の指摘に基づき、阪神高速道路公団では、平成8年10月に、路面清掃費の積算が清掃作業の実態等に適合したものとなるよう積算の基準を改正し、同年11月以降締結する契約から適用することとする処置を講じた。

1 契約の概要

 (高速道路の清掃作業)

 阪神高速道路公団(以下「公団」という。)の大阪、湾岸、神戸各管理部では、高速道路の維持管理業務の一環として、路面清掃作業を、毎年、継続して行っており、平成6年度及び7年度では、計16契約(総額14億1293万余円)により請け負わせ実施している。この路面清掃作業は、路面の塵芥、落下物等を収集、清掃することにより、交通障害を防止し、道路利用者を安全、円滑に通行させるためのものとして行われている。

 (路面清掃作業の内容)

 上記の路面清掃作業の実施に当たっては、その作業箇所を、本線部とランプ部(高速道路の出入口部)とに区分し、それぞれ塵芥及び落下物等の収集、運搬作業を行うこととしているが、このうち収集作業の内容は次のとおりとなっている。

(ア) 本線部においては、次のように行うこととなっている。

〔1〕 先頭から順に、作業車(作業員が乗務し、落下物等を収集する。)、散水車(清掃時の粉塵発生を防止するために散水する。)、スイーパ(ブラシで路面を清掃し塵芥を収集する。)、標識車各1台の編成で清掃作業を行う(別掲参考図〔1〕 参照 。以下、この編成による清掃を「本清掃」という。)。

〔2〕 作業車と標識車各1台の編成で清掃作業を行う(同参考図〔2〕 参照 。以下、この編成による清掃を「補助清掃」という。)。

 そして、路面清掃作業は、上記の本清掃と補助清掃を交互に行うなどして実施することとしている。

(イ) ランプ部においては、次のように行うこととなっている。

〔1〕 6年度においては、補助清掃の車両編成で行うが、その作業は、落下物等の収集に加え、ほうき等を使用して人力で塵芥を収集する。

〔2〕 7年度においては、各管理部ともこれを変更し、大阪管理部は、本清掃で行うこととし、湾岸、神戸両管理部は、本線部と同様に、本清掃と補助清掃を交互に行うなどして実施する。

 (路面清掃費の積算)

 公団では、路面清掃費は、本社制定の「土木補修工事積算基準」(以下「積算基準」という。)に基づいて積算することとしている。
 この積算基準によると、路面清掃費は、本線部、ランプ部ごとに、さらに本清掃、補助清掃ごとに、それぞれの車両の編成に応じて算出した運転経費等の合計額を基にして、1km当たりの清掃費の単価を算定している。そして、これにそれぞれの実作業延長を乗じて、本清掃費及び補助清掃費を算出している。
 これらのうちスイーパ及び散水車の運転経費等については、次のとおり、算出することとなっている。

(ア) 本線部及びランプ部の本清掃費について

〔1〕 スイーパの運転経費については、スイーパに乗務する運転手の職種は、特殊運転手とされており、この特殊運転手に係る1日当たりの労務費にスイーパの機械損料等を加算して、1日当たりの運転経費を算出する。

〔2〕 散水車の運転経費については、使用する散水車の規格はタンク容量5.5〜6.5m3 のものとし、その運転手の1日当たりの労務費に散水車の機械損料等を加算して、1日当たりの運転経費を算出する。

(イ) 湾岸、神戸両管理部における7年度のランプ部の補助清掃費について

 ランプ部の補助清掃の1日当たりの作業延長は、5.5kmとし、これにより1km当たりの補助清掃費の単価を算定することとしている。
 そして、公団では、上記(ア)及び(イ)に係る路面清掃費を、総額5億1163万余円と積算していた。

2 検査の結果

 (調査の観点)

 高速道路の路面の清掃作業においては、近年、一般道路における清掃作業とは異なる作業車両が使用されるようになってきていること、ランプ部の清掃方式が7年度から変更されたことなどから、路面清掃費の積算が作業の実態を反映したものとなっているかという観点から調査した。

 (調査の結果)

 調査したところ、路面清掃費の積算について、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

(ア) 本線部及びランプ部の本清掃について

〔1〕 スイーパの運転手を特殊運転手として積算しているのは、農林水産省、運輸省及び建設省の三省連絡協議会が定めている公共工事設計労務単価表において、路面清掃車の運転手の職種が特殊運転手とされていることに準じているものである。

 しかし、この公共工事設計労務単価表に示されている路面清掃車は、主として一般道路の路面清掃作業に使用されるもので、旋回性能を重視するなどして専用に設計されたシャシ(車台)を使用した特殊なもので、道路交通法(昭和35年法律第105号)等によると、大型特殊自動車に該当する。これに対し、高速道路の路面清掃作業で使用しているスイーパは、旋回性能より速度の性能を重視するなどして、普通トラックのシャシにブラシ等を取り付けるなどしたものとなっており、これは道路交通法等によると、大型自動車に該当する。そして、前記の公共工事設計労務単価表では、このような大型自動車の運転手は、特殊運転手より労務単価が低い一般運転手となっている。
 これらのことから、スイーパの運転経費の積算に当たっては、その運転手を特殊運転手ではなく一般運転手として、運転経費を算出すべきであると認められた。

〔2〕 湾岸、神戸両管理部における7年度のランプ部の本清掃の車両の編成には、本線部の本清掃と同じく、散水車が含まれている。

 しかし、ランプ部の清掃作業における散水量は、1日当たり0.8m3 から1.25m3 程度であり、スイーパには、容量1.9m3 の水タンクが搭載されていて、スイーパによる散水が可能であることから、ランプ部の本清掃については、散水車は必要ないものと認められた。

(イ) 湾岸、神戸両管理部における7年度のランプ部の補助清掃についてランプ部の清掃作業が、7年度からは、本線部と同じように塵芥の収集作業を本清掃においてスイーパで行うことになったため、補助清掃の作業内容は、落下物等を収集する作業のみとなっていて、6年度まで行っていたほうき等を使用して人力で塵芥を収集する作業はほとんど行われていなかった。このため、1日当たりの作業延長は、積算に使用した6年度までの作業延長5.5kmを大幅に上回る14.2km程度となっているので、これにより1km当たりの補助清掃費の単価を算出すべきであると認められた。

 したがって、路面清掃費の積算に当たっては、上記の清掃作業の実態等に適合した積算を行う要があると認められた。

 (低減できた積算額)

 上記の(ア)、(イ)により、本件各契約における本清掃費及びランプ部の補助清掃費(7年度)の積算単価を計算するなどしてその清掃費を修正計算すると、総額4億6341万余円となり、前記の積算額を約4800万円低減できたと認められた。

 (発生原因)

 このような事態が生じていたのは、清掃作業の実態等を積算に反映させるための配慮が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、公団では、8年10月に、路面清掃費の積算が清掃作業の実態等に適合したものとなるよう積算基準を改正し、同年11月以降締結する契約から適用することとする処置を講じた。