会計名及び科目 | 一般会計 国税収納金整理資金 | (款)歳入組入資金受入 (項)各税受入金 |
部局等の名称 | 麹町税務署ほか166税務署 | |
納税者 | 449人 |
徴収過不足額 | 徴収不足額 | 1,395,088,988円 | |
徴収過大額 | 3,583,200円 | ||
1 租税の概要
源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税、消費税等の国税については、法律により、納税者の定義、納税義務の成立の時期、課税する所得の範囲、税額の計算方法、納付の方法などが定められている。
平成8年度国税収納金整理資金の各税受入金の徴収決定済額は58兆0907億余円に上っている。このうち源泉所得税は16兆2370億余円、申告所得税は4兆2483億余円、法人税は15兆1111億余円、相続税・贈与税は2兆8010億余円、消費税は9兆0876億余円となっていて、これら各税の合計額は47兆4852億余円となり、全体の81.7%を占めている。
2 検査の結果
上記各税の課税内容に重点をおいて検査したところ、麹町税務署ほか166税務署において、納税者449人から租税を徴収するに当たり、徴収額が不足していたものが447事項1,395,088,988円、徴収額が過大になっていたものが2事項3,583,200円あった。
これを、税目別にみると次表のとおりである。
税目 | 徴収不足の事項数 徴収過大の事項数 |
徴収不足額 徴収過大額(△) |
源泉所得税 |
18 |
円 84,655,888 |
- | - | |
申告所得税 | 122 | 271,707,900 |
1 | △2,389,400 | |
法人税 | 223 | 713,429,100 |
1 | △1,193,800 | |
相続税・贈与税 | 56 | 260,658,300 |
- | - | |
消費税 | 24 | 59,186,000 |
- | - | |
その他(注) | 4 | 5,451,800 |
- | - | |
計 | 447 | 1,395,088,988 |
2 | △3,583,200 |
なお、これらの徴収不足額及び徴収過大額については、本院の指摘により、すべて徴収決定又は支払決定の処置が執られた。
上記の167税務署において、徴収不足又は徴収過大の事態を生じた原因は、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤っているのに、課税資料の収集・活用が的確でなかったり、法令等の適用の検討が十分でなかったり、これを見過ごしたりして、誤ったままにしていたことなどによるものである。
この449事項のうち、源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税及び消費税に関するものについて、その主な態様を示すと次のとおりである。
(1) 源泉所得税に関するもの
源泉所得税では徴収不足となっていたものが18事項あった。この内訳は、配当に関するもの10事項及びその他に関するもの8事項である。
ア 配当に関するもの
配当の支払者は、支払の際に、所定の方法により計算した源泉所得税を徴収し、これを徴収の日の属する月め翌月10日(休日等の場合はその翌日)までに国に納付しなければならないこととなっている。また、支払が確定した日から1年を経過した日において未払となっている配当については、その日に支払があったものとみなし、支払者が配当に対する源泉所得税を徴収してその翌月10日までにこれを国に納付しなければならないこととなっている。そして、この法定納期限までに納付がない場合には、支払者に対して、納税の告知をしなければならないこととなっている。
この配当に関し、徴収不足となっている事態が10事項あった。その主な内容は、支払が確定した日から1年を経過した日において未払となっている配当について、この法定納期限を経過した後、源泉所得税が納付されていないのに、これを見過ごしたため、納税の告知をしていなかったものである。
イ その他に関するもの
上記アのほか、退職手当等に関し、徴収不足となっている事態が8事項あった。
源泉所得税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。
<事例1> 配当に関する源泉所得税について納税の告知をしていなかったもの
A会社は、平成5年6月決算期の利益の配当70,000,000円に対する源泉所得税を納付していなかった。
しかし、上記の配当は、同会社から提出された4年7月から5年6月までの事業年度分の法人税の申告書等によれば、5年8月31日に支払が確定し、その日から未払のまま1年を経過しているので、6年9月1日に支払があったものとみなされる。したがって、同年10月11日までに同配当に対する源泉所得税が納付されていなければならないのに、これを見過ごしたため、納税の告知をしておらず、源泉所得税額14,000,000円が徴収不足になっていた。
(2) 申告所得税に関するもの
申告所得税では徴収不足又は徴収過大となっていたものが123事項あった。この内訳は、譲渡所得に関するもの25事項、配当所得に関するもの22事項、不動産所得に関するもの19事項、雑所得に関するもの17事項及びその他に関するもの40事項である。
ア 譲渡所得に関するもの
個人が資産を譲渡した場合には、その総収入金額から譲渡した資産の取得費や譲渡に要した費用の額などを差し引いた金額を譲渡所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。ただし、土地建物等及び株式等(株式、転換社債などをいう。)の譲渡による所得については、他の所得と分離して課税することとなっている。このうち、新規に公開された一定の株式(以下「新規公開株式」という。)の譲渡による所得については、その金額(新規公開株式以外の株式等の譲渡による損失がある場合は、その損失額を控除した後の金額)の2分の1に相当する金額に対して課税することとなっている。
この譲渡所得に関し、徴収不足又は徴収過大となっている事態が25事項あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア) 譲渡所得があるのに、これに係る課税資料の収集・活用が的確でなかったため、課税していなかった。
(イ) 申告書等で、譲渡した資産の取得費の額などに誤りがあり、譲渡所得の金額が少なく記載されているのに、法令等の適用の検討が十分でなかったり、これを見過ごしたりしたため、譲渡所得の金額を過小のままとしていた。
(ウ) 申告書等で譲渡所得に対する税額の計算に誤りがあるのに、これを見過ごしたため、税額を過小のままとしていた。
イ 配当所得に関するもの
個人が法人から配当を受けた場合には、源泉分離選択課税(注) の適用を受けた配当などを除いて、配当所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。
この配当所得に関し、徴収不足となっている事態が22事項あった。その内容は、個人に法人から受けた配当による所得があるのに、これに係る課税資料の収集・活用が的確でなかったため、この所得を他の所得と総合して課税していなかったものである。
(注) 源泉分離選択課税 配当について、その支払を受ける者が法人の発行済株式の総数(又は出資金額)の100分の5以上を有する場合又は法人から支払を受ける配当の金額が1回25万円(年間50万円)以上の場合を除いて、その者の選択により他の所得と分離し100分の35の税率を適用して源泉所得税を課することをいう。
ウ 不動産所得に関するもの
個人が不動産を貸し付けた場合には、その総収入金額から必要経費を差し引いた金額を不動産所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。
この不動産所得に関し、徴収不足となっている事態が19事項あった。その主な内容は、申告書等で、総収入金額から差し引く必要経費の額を誤って過大としているのに、これを見過ごしたため、不動産所得の金額を過小のままとしていたものである。
エ 雑所得に関するもの
個人が貸付金の利子(事業所得に該当するものを除く。)などを受けた場合には、その総収入金額から必要経費を差し引いた金額を雑所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。
この雑所得に関し、徴収不足となっている事態が17事項あった。その主な内容は、個人に貸付金の利子による所得があるのに、これに係る課税資料の収集・活用が的確でなかったため、この所得を他の所得と総合して課税していなかったものである。
オ その他に関するもの
上記のアからエのほか、事業所得、一時所得、給与所得等に関し、徴収不足となっている事態が40事項あった。
申告所得税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。
<事例2> 株式等の譲渡による譲渡所得の計算を誤っていたもの
納税者Bは、平成6年分の申告に当たり、新規公開株式の譲渡による所得の金額875,488,237円の2分の1に相当する金額437,744,118円から新規公開株式以外の株式等の譲渡による損失額145,014,272円を控除して、株式等の譲渡による所得の金額を292,729,846円としていた。
しかし、この場合の株式等の譲渡による所得の金額は、新規公開株式の譲渡による所得の金額から上記損失額を控除した後の金額の2分の1に相当する金額となる。したがって、これにより計算すると、株式等の譲渡による所得の金額は365,236,982円となるのに、これを見過ごしたため、申告所得税額14,501,400円が徴収不足になっていた。
(3) 法人税に関するもの
法人税では徴収不足又は徴収過大となっていたものが224事項あった。この内訳は、新規取得土地等に係る負債の利子に関するもの28事項、同族会社の留保金に関するもの25事項、法人税額の特別控除に関するもの24事項、退職給与引当金に関するもの21事項、土地等の譲渡等に係る譲渡利益に関するもの20事項及びその他に関するもの106事項である。
ア 新規取得土地等に係る負債の利子に関するもの
法人が、新規取得土地等(昭和63年12月31日以後に取得した土地等)を有する場合は、当該土地等が取得された日から長期間にわたって使用される建物等の敷地(以下「長期使用建物の敷地」という。)の用に供される日まで、また、その用に供されないときは4年間、当該土地等に係る負債の利子は損金に算入しないこととなっている。そして、損金に算入されなかった負債の利子は、損金に算入されなかった期間の末日を含む事業年度の翌事業年度から4年間で均等額を損金に算入することなどとなっている。
この新規取得土地等に係る負債の利子に関し、徴収不足となっている事態が28事項あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア) 申告書等で、長期使用建物の敷地の用に供されていない新規取得土地等があるのに、これを見過ごしたため、当該土地等に係る負債の利子を損金に算入したままとしていた。
(イ) 申告書等で、損金に算入されなかった負債の利子の全部又は一部の金額を、損金に算入しないこととなっている期間の末日を含む事業年度の損金に算入しているのに、これを見過ごしたため、損金算入額を過大のままとしていた。
イ 同族会社の留保金に関するもの
特定の同族会社(注1) については、通常の法人税のほか、利益のうち社内に留保した金額が一定の金額を超える場合には、その超える部分の金額(以下「課税留保金額」という。)に対し特別税率(注2) の法人税を課することとなっている。
この同族会社の留保金に関し、徴収不足となっている事態が25事項あった。その内容は次のとおりである。
(ア) 申告書等で特定の同族会社に該当し課税留保金額が算出されるのに、これを見過ごしたため、特別税率の法人税を課していなかった。
(イ) 申告書等で課税留保金額や税額の計算に誤りがあり、特別税率の法人税額が少なく記載されているのに、これを見過ごしたため、特別税率の法人税額を過小のままとしていた。
(注1) | 特定の同族会社 発行済株式の総数(又は出資金額)の100分の50以上が、3人以下の株主等(株主等に同族会社でない法人がある場合はその法人を除く。)及びこれらと特殊の関係にある個人・法人によって所有されている会社をいう。 |
(注2) | 特別税率 課税留保金額が年3,000万円以下の部分については100分の10、年3,000万円を超え1億円以下の部分については100分の15、年1億円を超える部分については100分の20となっている。 |
ウ 法人税額の特別控除に関するもの
青色申告書を提出する法人のうち中小企業者等(発行済株式の総数の2分の1以上が同一の大規模法人の所有に属しているなどの法人を除く。)が電子機器利用設備を取得し又は賃借した場合には、その設備を事業に使用した最初の事業年度において、次の金額のうちいずれか少ない金額を限度として法人税額から控除する特例を適用できることなどとなっている。
〔1〕 取得価額又は賃借期間中に支払う費用の総額に一定の割合を乗じて得た金額
〔2〕 確定申告書の法人税額の100分の20に相当する金額
この法人税額の特別控除(以下「税額控除」という。)に関し、徴収不足となっている事態が24事項あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア) 申告書等で、発行済株式の総数の2分の1以上が同一の大規模法人の所有に属していて、中小企業者等に該当しない法人が税額控除をしているのに、これを見過ごしたため、法人税額を過小のままとしていた。
(イ) 申告書等で、設備を事業に使用した最初の事業年度において控除した金額などを当期の法人税額から重複して控除しているのに、これを見過ごしたため、法人税額を過小のままとしていた。
エ 退職給与引当金に関するもの
退職給与規程を定めている法人は、その使用人の退職の際に支給する退職給与に充てるための金額を退職給与引当金勘定に繰り入れることができる。そして、この繰り入れた金額については、次の金額のうちいずれか少ない金額を限度として、損金に算入できることとなっている。
〔1〕 期末退職給与の要支給額(注) から前期末退職給与の要支給額を差し引いた金額(又は給与総額の100分の6に相当する金額)
〔2〕 期末退職給与の要支給額の100分の40に相当する金額から、前期から繰り越された退職給与引当金勘定の期末における金額を差し引いた金額
また、使用人が退職した場合には、退職給与引当金勘定の金額から、当該使用人に係る前期末退職給与の要支給額に相当する金額を取り崩して益金に算入することとなっている。そして、退職年金制度へ移行したときは移行した事業年度においても、退職した使用人に係る前胡末退職給与の要支給額に相当する金額を取り崩すこととなっている。
この退職給与引当金に関し、徴収不足となっている事態が21事項あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア) 申告書等で前期末の退職給与の要支給額等に誤りがあり、限度額を超えて繰り入れた金額が損金に算入されているのに、これを見過ごしたため、繰入額を過大のままとしていた。
(イ) 申告書等で使用人に対する退職給与の支払額が記載されていながら、当該使用人に係る前期末退職給与の要支給額に相当する金額が、退職給与引当金勘定の金額から取り崩され益金に算入されていないのに、これを見過ごしたため、この要支給額に相当する金額を益金に算入しないままとしていた。
オ 土地等の譲渡等に係る譲渡利益に関するもの
法人の所有する土地等の譲渡等については、所有期間に応じて長期所有土地等(注1) 、短期所有土地等(注2) 及び超短期所有土地等(注3) に区分し、収益の額から原価と経費の額を差し引いたそれぞれの譲渡利益金額に対して、通常の法人税のほか特別税率の法人税を課することとなっている。そして、この特別税率の法人税額は、長胡所有土地等、短期所有土地等及び超短期所有土地等の譲渡利益金額のそれぞれ100分の5、100分の10及び100分の15に相当する金額(平成7年12月31日までの譲渡に対しては、それぞれ100分の10、100分の20、100分の30に相当する金額など)となっている。
この土地等の譲渡等に係る譲渡利益に関し、徴収不足となっている事態が20事項あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア) 申告書等で、長期所有土地等、超短期所有土地等の譲渡等による収益の額が記載されているのに、これを見過ごしたため、特別税率の法人税を課していなかった。
(イ) 申告書等で収益、原価又は経費の額に誤りがあり、譲渡利益金額が記載されていなかったり、少なく記載されていたりしていた。しかし、法令等の適用の検討が十分でなかったり、これを見過ごしたりしたため、特別税率の法人税を課していなかったり、譲渡利益金額を過小のままとしたりしていた。
(注1) 長期所有土地等 法人が所有する土地等のうち短期所有土地等、超短期所有土地等以外の土地等をいう。
(注2) 短期所有土地等 譲渡した年の1月1日までに所有していた期間が5年以下である土地等をいう。ただし、超短期所有土地等に該当するものを除く。
(注3) 超短期所有土地等 昭和62年10月1日から平成14年3月3「日までに譲渡した土地等のうち、譲渡した年の1月1日までに所有していた期間が2年以下である土地等をいう。
カ その他に関するもの
上記のアからオのほか、経費の計上、役員賞与の損金不算入、受取配当等の益金不算入等に関し、徴収不足又は徴収過大となっている事態が106事項あった。
法人税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。
<事例3> 電子機器利用設備を賃借した場合の税額控除の特例の適用を誤っていたもの
C会社は、平成6年4月から7年3月までの事業年度分の申告に当たり、税額控除の特例を適用して、電子機器利用設備の賃借期間中に支払う費用の総額に一定の割合を乗じて算出した金額10,438,344円を法人税額から控除していた。
しかし、申告書等によれば、同会社の発行済株式の総数の2分の1以上が同一の大規模法人の所有に属しているので、同会社は中小企業者に該当しない。したがって、税額控除の特例は適用できず、税額控除の金額はないのに、これを見過ごしたため、法人税額10,438,400円が徴収不足になっていた。
<事例4> 退職者の前期末退職給与の要支給額に相当する金額を退職給与引当金勘定の金額から取り崩して益金に算入していなかったもの
D会社は、平成5年4月から6年3月までの事業年度分の申告に当たり、当期に退職年金制度へ移行したことから、退職した使用人に係る退職給与引当金勘定の金額から取り崩すべき金額を137,935,125円として益金に算入していた。この金額は退職者の前期末退職給与の要支給額289,858,276円から退職年金給付金151,923,151円を差し引いた金額である。
しかし、退職年金制度へ移行した事業年度における退職給与引当金勘定の金額から取り崩すべき金額は、退職年金給付金を差し引く前の退職者の前期末退職給与の要支給額となっている。したがって、退職給与引当金勘定の金額から取り崩して益金に算入すべき金額は289,858,276円となるのに、これを見過ごしたため、法人税額56,766,000円が徴収不足になっていた。
<事例5> 借入金の元本返済額を経費に計上していたもの
E会社は、平成元年7月から7年6月までの6事業年度分の申告に当たり、納税者Fからの借入金に係る支払利子として、各事業年度それぞれ25,000,000円を経費に計上していた。
しかし、同人の所得税の申告書、領収書等によれば、この支払利子は同会社が同人から無利子で借り入れた借入金の元本返済額である。したがって、この支払利子は経費とは認められないのに、上記の申告書等からこの事実を把握していなかったため、法人税額計54,012,800円(2年6月期10,000,000円、3年6月期8,250,000円、4年6月期8,385,000円、5年6月期8,454,300円、6年6月期9,059,400円、7年6月期9,864,100円)が徴収不足になっていた。
(4) 相続税・贈与税に関するもの
相続税・贈与税では徴収不足となっていたものが56事項あった。この内訳は、相続税については土地建物等の価額に関するもの17事項、相次相続控除に関するもの12事項及びその他に関するもの15事項、贈与税については12事項である。
ア 相続税に関するもの
(ア) 土地建物等の価額に関するもの
個人が相続又は遺贈により財産を取得した場合には、その取得した財産に対し相続税を課することとなっている。そして、取得した財産の価額は、相続又は遺贈により取得したときの時価とされていて、土地建物等の価額については、路線価、固定資産税評価額等を基にして計算することとなっている。ただし、被相続人等が事業又は居住の用に供していた宅地等で建物又は構築物の敷地の用に供されていたもののうち200m2 までの部分については、小規模宅地等として所定の計算により算出した金額を減額できることとなっている(以下、これを「小規模宅地等の特例」という。)。
この土地建物等の価額の計算に関し、徴収不足となっている事態が17事項あった。その主な内容は、申告書等で、土地等の価額の計算において、被相続人等が事業又は居住の用に供していない土地等を小規模宅地等であるとして減額しているのに、法令等の適用の検討が十分でなかったり、これを見過ごしたりしたため、土地等の価額を過小のままとしていたものである。
(イ) 相次相続控除に関するもの
個人が相続により財産を取得した場合において、被相続人がこの相続(以下「今回の相続」という。)の開始前10年以内に相続(以下「前回の相続」という。)により財産を取得していたときは、前回の相続の相続税額を基に算出された金額を、今回の相続の相続税額から相次相続控除額として差し引くこととなっている。そして、この場合の前回の相続の相続税額は、今回の相続の相続税の申告期限までに確定した税額によることとなっている。
この相次相続控除に関し、徴収不足となっている事態が12事項あった。その主な内容は、申告書等で、前回の相続の相続税額を今回の相続の相続税の申告期限の後に確定した税額としているのに、法令等の適用の検討が十分でなかったり、これを見過ごしたりしたため、相続税額を過小のままとしていたものである。
(ウ) その他に関するもの
上記(ア)、(イ)のほか、有価証券の価額等に関し、徴収不足となっている事態が15事項あった。
イ 贈与税に関するもの
個人が贈与により財産を取得した場合には、その取得した財産に対し贈与税を課することとなっている。そして、同族会社である株式会社が新株を発行する際、従前の株主が新株の引受けをせず、その株主の親族が新株引受権を取得し、有利な発行価額による新株の引受けをした場合には、その親族が従前の株主から新株引受権を贈与により取得したものとみなされることとなっている。
この贈与税に関し、徴収不足となっている事態が12事項あった。その主な内容は、同族会社における従前の株主からその親族が新株引受権を贈与により取得しているのに、これに係る課税資料の収集・活用が的確でなかったため、贈与税を課していなかったものである。
相続税・贈与税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。
<事例6> 小規模宅地等の特例の適用を誤っていたもの
納税者Gは、平成5年8月相続分の申告に当たり、相続により取得した土地のうち200m2 を被相続人が事業の用に供していた宅地であるとして、小規模宅地等の特例を適用し、相続税の課税価格の計算に当たって減額される金額を156,780,687円としていた。
しかし、申告書等によれば、上記宅地のうち85.33m2 (価額69,970,600円)は建物又は構築物の敷地の用に供されていないため、小規模宅地等の特例は適用できない。ただし、当該宅地に替えて、被相続人が居住の用に供していた別の宅地のうち、上記の面積に相当する部分85.33m2 (価額21,400,969円)にこの特例を適用することができる。したがって、これにより計算すると、減額される金額は118,501,751円となるのに、法令等の適用の検討が十分でなかったため、相続税額18,271,600円が徴収不足になっていた。
(5) 消費税に関するもの
消費税では徴収不足となっていたものが24事項あった。この内訳は、課税売上高の計上に関するもの11事項及びその他に関するもの13事項である。
ア 課税売上高の計上に関するもの
事業者は、課税期間(個人事業者は暦年、法人は事業年度)における課税売上高に対する消費税額から仕入れに係る消費税額を差し引いた額を消費税として納付することとなっている。そして、課税売上高には事業者が国内において行った資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供に係る収入金額(土地の譲渡、住宅の貸付け等に係る収入金額を除く。)を計上することとなっている。
この課税売上高の計上に関し、徴収不足となっている事態が11事項あった。その主な内容は、申告書等で、住宅用として貸し付けていた建物やゴルフ会員権の譲渡の事実が記載されているのに、これを見過ごしたため、課税売上高を過小のままとしていたものである。
イ その他に関するもの
上記アのほか、仕入れに係る消費税額の控除、簡易課税制度の適用等に関し、徴収不足となっている事態が13事項あった。
消費税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。
<事例7> 仕入れに係る消費税額の計算を誤っていたもの
H会社は、平成5年5月から6年4月までの課税期間分の申告に当たり、貸付けの事業の用に供する建物の取得等に係る消費税額に、課税売上割合(課税売上高を総売上高で除した割合をいう。)100分の89を乗じた額33,936,340円を仕入れに係る消費税額とし、これを課税売上高に対する消費税額から控除していた。
しかし、同会社の法人税の申告書等によれば、上記の課税売上割合は、課税の対象とならない土地の譲渡に係る収入金額を総売上高に含めて計算されておらず、これを含めて計算すると100分の52となる。したがって、課税売上高に対する消費税額から控除する仕入れに係る消費税額は、事業用建物の取得等に係る消費税額に課税売上割合100分の52を乗じた額19,870,443円となるのに、これを見過ごしたため、消費税額14,065,800円が徴収不足になっていた。
これらの徴収不足額及び徴収過大額を国税局等別に示すと次のとおりである。