1 本院が要求した改善の処置
水産庁では、漁港法(昭和25年法律第137号)等に基づき、水産業の発達を図り、これにより国民生活の安定と国民経済の発展に寄与することを目的として、漁港の区域内において、防波堤、岸壁、泊地等の基本施設及び漁港施設用地等の機能施設の整備を補助事業等により実施している。このうち、漁港施設用地の造成に当たっては、漁港管理者である地方公共団体は水産庁と協議して漁港施設用地の利用計画を策定することとされており、造成完了後はこの利用計画の定める目的に沿って利用しなければならないことなどとされている。また、プレジャーボート等の漁港の利用については、漁港管理者はその受入れ体制等を整備することとされている。
この漁港施設用地等を調査したところ、長期間にわたり利用計画に沿って利用されておらず、事業効果が発現していないと認められるものや、占用許可を受けられない者に占用許可を与えているなどしていて、補助の目的を達していないと認められるものが見受けられた。また、漁港区域内において、漁港管理者に無断でプレジャーボート等が係留されているなどしていて、漁港の管理が適切でないと認められるものが見受けられた。
このような事態が生じているのは、漁港管理者において、利用計画の策定に当たり漁協等関係機関との調整が十分でなかったり、漁港法等の趣旨を十分に理解していなかったり、水産庁において、漁港施設用地の利用実態を確認し審査する体制や漁港の管理・使用状況を把握し指導する体制が十分でなかったりしていることなどによると認められた。
上記の漁港施設用地等の利用及び管理を適正に行うことにより、事業効果の発現が図られるよう、次のとおり、水産庁長官に対し平成8年11月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
(ア) 利用計画の策定の協議に当たり、漁港施設用地の利用実態等について確認し、審査できる体制を整備するとともに、漁港の管理・使用状況について適時的確に把握し、漁港管理者を指導する体制を整備する。
(イ) 漁港管理者に対して、次のような指導を行う。
〔1〕 利用計画の策定に当たり、漁協等関係機関との調整を図らせるとともに、漁業情勢の変化等に対応して利用計画の見直しを随時行わせること
〔2〕 維持運営計画の策定等を的確に行わせるとともに、漁港法等の趣旨を十分に理解させ、また、プレジャーボート等の受入れ体制の整備を図らせること
2 当局が講じた改善の処置
水産庁では、本院指摘の趣旨に沿い、9年5月に通達を発するなどして、事業効果の発現が図られるよう、次のような処置を講じた。
(ア) 利用計画の策定の協議に当たり、漁港施設用地の利用実態等について確認し、審査できる体制を整備するとともに、漁港の管理・使用状況について適時的確に把握し、漁港管理者を指導する体制を整備するため、漁港管理者に漁港施設用地の利用・占用状況等の報告を義務付けるなどした。
(イ) 漁港管理者に対して、次のような指導を行った。
〔1〕 利用計画の策定に当たり、漁協等関係機関との調整を図るとともに、漁業情勢の変化等に対応して利用計画の見直しを随時行い、これに基づいて漁港施設用地の適正な利用を図ること
〔2〕 漁港の維持運営計画の策定の促進等を図るとともに、漁港台帳の調製を的確に行い、漁港法等の趣旨を十分に理解して、占用許可を受けられない者に占用させることのないようにし、また、プレジャーボート等の受入れ体制の整備を図ること