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  • 平成8年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第10 日本私学振興財団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

私立大学等経常費補助金の額の算定に当たり、臨時職員に対する給与の取扱いを適切なものにするよう改善させたもの


私立大学等経常費補助金の額の算定に当たり、臨時職員に対する給与の取扱いを適切なものにするよう改善させたもの

科目 (補助金勘定) (項)交付補助金
部局等の名称 日本私学振興財団
補助の対象 私立大学等における専任教職員の給与等教育又は研究に要する経常的経費
補助の根拠 私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)
事業主体 学校法人大阪医科大学ほか1学校法人
上記に対する財団の補助金交付額の合計 平成6年度 3,583,746,000円
平成7年度 1,881,036,000円
5,464,782,000円
過大に交付された補助金額 平成6年度 153,557,000円
平成7年度 78,088,000円
231,645,000円
<検査の結果>
 上記の2学校法人に対する補助金の額の算定において、人件費に相当すると認められる臨時職員に対する給与を教育研究経費支出の額に含めていたため、補助金2億3,164万余円が過大に交付される結果となっており、適切でないと認められた。
 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
(ア) 財団において、各大学の教室等の名称で契約し雇用している臨時職員に対する給与について、補助金の額の算定上の取扱方針を明確にしていなかったこと
(イ) 財団が定めた補助金の額の算定資料は、臨時職員に対する給与が教育研究経費支出の額に含まれているかどうか把握できない書式になっていること
<当局が講じた改善の処置>
 本院の指摘に基づき、財団では、平成9年11月に臨時職員に対する給与は、学校法人の決算上は教育研究経費支出の額に含めて会計処理している場合でも、補助金の額の算定上は教育研究経費支出の額から除外して調整係数を算出することとする旨の取扱方針を明確にするなどの処置を講じた。

1 補助金の概要

(補助金の額の算定方法)

 日本私学振興財団(以下「財団」という。)は、前項に掲記した「私立大学等経常費補助金の経理が不当と認められるもの」 の補助金の概要記載のとおり、私立大学等を設置する学校法人に対し補助金を交付している。
 補助金の額の算定に当たっては、各私立大学等の教育研究条件の良否によって補助金の額に差異を設けるため、前年度の決算に基づく学生納付金収入に対する教育研究経費支出と設備関係支出との合計額の割合等に基づいて算出した調整係数を補助金の基準額に乗ずるなどして補助金の額を算定することとなっている。

 この補助金の交付を受ける学校法人は、学校法人会計基準(昭和46年文部省令第18号)により教育研究経費支出、設備関係支出、人件費支出等の大科目に区分して資金収支計算書等を作成することとなっており、このうち教育研究経費支出は消耗品費支出、光熱水費支出等の小科目からなっている。
 そして、臨時職員のうち学校法人の名称で契約し雇用した者に対する給与は、学校法人の決算上は人件費支出に計上しており、財団における補助金の額の算定上も人件費支出として計上しており、教育研究経費支出には計上しない取扱いとなっている。

2 検査の結果

(調査の観点)

 臨時職員のうち各大学の教室等の名称で契約し雇用した者に対する給与について、補助金の額の算定上の取扱方針が明確にされていなかった。そこで、研究補助員等の臨時職員が多数勤務していることが想定される医学部を設置している大学について、臨時職員に対する給与が、補助金の額の算定において適切に取り扱われているかなどに着目して調査した。

(調査の対象)

 医学部を設置している29学校法人のうち東京医科大学ほか5学校法人について、平成6年度、7年度及び8年度の教育研究経費支出について調査した。

(調査の結果)

 調査したところ、上記6学校法人のうち学校法人大阪医科大学(以下「大阪医大」という。)及び学校法人関西医科大学(以下「関西医大」という。)の補助金の額の算定における臨時職員に対する給与の取扱いについて、次のように適切でないと認められる事態が見受けられた。

(ア) 大阪医大においては、各教室の責任者(教授)が研究補助員等として各教室等で勤務する臨時職員と勤務条件や給与等を定めた契約を締結し雇用していた。しかし、これら臨時職員に対する給与は学校法人が支払原資を交付して各教室に支払わせ、臨時職員に対する給与についての源泉所得税も学校内に設置した任意団体が給与所得として徴収していた。

(イ) 関西医大においては、各講座の責任者(教授)が契約名義人となり研究補助員等として各講座で勤務する臨時職員と勤務条件や給与・賞与等を定めた契約を締結し雇用していた。しかし、これら臨時職員に対する給与は学校法人が支払い、臨時職員に対する給与についての源泉所得税も学校法人が給与所得として徴収していた。

 これら2学校法人では、研究補助員等の臨時職員との契約はいずれも教室等の名称で締結しているので、その給与は人件費に当たらないとして決算上は教育研究経費支出の額に含めて会計処理し、補助金申請に当たっても教育研究経費支出の額から除外していなかった。

 しかし、上記の臨時職員の雇用条件等をみると、大阪医大では採用について、教室の責任者は学長の許可を得ていたり、関西医大では年次休暇などの処遇は学校法人の就業規則に準じた内規を適用していたりしていた。したがって、教室等で契約し雇用した臨時職員の雇用実態は学校法人の名称で契約し雇用した臨時職員と同様であり、その給与は人件費に相当するものであると認められる。
 また、残りの4学校法人における研究補助員等の臨時職員に対する給与の取扱いをみると、契約上の名称や決算上の会計区分はそれぞれ異なるものの、補助金申請に当たっては人件費支出として取り扱っており、教育研究経費支出の額には含めていなかった。

 上記のことから、研究補助員等の臨時職員に対する給与は、契約の当事者の名称や決算上の命計処理に相違があっても、補助金の額の算定上の取扱いに差異を設けるべきではないと認められる。しかし、財団では、前記2学校法人が提出した教育研究経費支出の額に関する資料をそのまま使用し補助金の額を算定したため、補助金が過大に交付される結果となり、適切とは認められない。
 したがって、私立大学等経常費補助金算定上の臨時職員に対する給与の取扱いを適切なものとするよう改善する要があると認められた。

(過大に交付された補助金額)

 大阪医大及び関西医大の補助金の額の算定に当たって、上記4学校法人と同様に、臨時職員に対する給与を教育研究経費支出の額から除外していたとすれば、学生納付金収入に対する教育研究経費支出と設備関係支出との合計額の割合等に基づいて算出した調整係数が下がることになる。
 この結果、大阪医大に対する6年度の補助金の額76,485千円、また、関西医大に対する補助金の額6年度77,072千円及び7年度78,088千円、計155,160千円、合計231,645千円が過大に交付されていると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。

(ア) 財団において、教室等の名称で契約し雇用している臨時職員に対する給与について、各学校法人における決算上の会計処理の実態を十分把握しておらず、補助金の額の算定上の取扱方針を明確にしていなかったこと

(イ) 学校法人から提出させている補助金の額の算定資料の収入支出調査票は、臨時職員に対する給与が教育研究経費支出の額に含まれているかどうか把握できない書式になっていること

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、財団では、9年11月に臨時職員に対する給与の補助金算定上の取扱方針を定めるなどして次のような処置を講じた。

(ア) 臨時職員に対する給与は、学校法人の決算上は教育研究経費支出の額に含めて会計処理している場合でも、補助金の額の算定上は教育研究経費支出の額から除外して調整係数を算出することとする旨の取扱方針を明確にし、これを学校法人に通知して周知徹底を図ることとした。

(イ) 上記(ア)の方針に基づいて、臨時職員に対する給与を、学校法人の決算上は教育研究経費支出の額に含めて会計処理している場合には、補助金申請上は教育研究経費支出の額から除外するよう収入支出調査票の書式を改め、10年度の補助金の申請から適用することとして、これを学校法人に通知することとした。