会計名及び科目 | 一般会計 (組織)科学技術庁 | (項)放射能調査研究費 |
(項)科学技術庁試験研究所 | ||
部局等の名称 | 放射線医学総合研究所 | |
契約の概要 | 特別高圧電力の電気需給契約 | |
契約の相手方 | 東京電力株式会社 | |
契約期間 | 平成9年4月〜10年3月 |
支払額 | 7億2312万余円 |
節減できた電気料金 | 1670万円 |
1 電気需給契約の概要
科学技術庁の放射線医学総合研究所(以下「放医研」という。)では、放射線の医学的利用に関する調査研究等の一環として、多量の電力を必要とする重粒子線がん治療装置及びサイクロトロン装置(2台)(以下、これらを「重粒子線装置等」という。)を使用して放射線による治療等に関する調査研究を行っている。
重粒子線装置等は、年度開始前に作成される運転計画に基づき運転されており、これらの装置が設置された重粒子線棟及びサイクロトロン棟の負荷設備の容量は、放医研の負荷設備全体容量の約40%を占める状況となっている。
放医研では、重粒子線装置等をはじめ所内各般の電力需要を満たすため、東京電力株式会社(以下「電力会社」という。)と電気需給契約を締結している。その契約種別は特別高圧電力(平成9年12月からは特別高圧季節別時間帯別電力に変更)で、供給電圧は60KV、契約電力は、9年度当初は9,700KWであったが、重粒子治療センターの本格稼働により同年6月からは10,700KWに変更している。そして、特別高圧電力の電気料金は、契約電力に応じた基本料金と使用電力量に応じた電力量料金からなっており、放医研が9年度に支払った電気料金は723,122,343円となっている。
電力会社では、電力需要が増大する夏季における電力供給設備の効率的な運用を図ることを目的として各種の選択約款を設けている。このうち夏季休日契約は、契約種別が特別高圧電力などで、夏季の電気料金割引対象期間(9年度については7月第2週の木曜日から9月第2週の火曜日まで。ただし、国民の祝日及び8月第3週を除く。)内の平日の昼間に電力の負荷を調整して低減できる需要家が、電力会社と協議の上で、あらかじめ使用電力を調整して低減する期日及び電力(以下、それぞれ「調整日」、「調整電力」という。)を設定し締結するものである。この調整電力は、契約電力の50%以上とされているが、9年度からはこれに加え、調整日が連続2日以上にわたる場合には契約電力の30%以上であっても適用できることとなった。そして、需要家が使用電力の調整を達成した場合には、調整日ごとに実際に調整された電力に1KW当たりの割引単価(供給電圧60 KVの場合、9年度では200円から265円)を乗ずるなどして算定された額が、当該月の電気料金から割り引かれることになっている。
なお、放医研では、前記のとおり、9年12月から契約種別を特別高圧季節別時間帯別電力に変更しており、この場合、夏季休日契約と同様の割引を受けられる選択約款は夏季操業調整契約となっている。
2 検査の結果
上記のように、電力会社では、各種の選択約款に基づく電気料金の割引制度を設けて、電力需要の調整を推進している。
そこで、重粒子線装置等は多量の電力を消費するものであることから、放医研における電気需給契約が、重粒子線装置等の運転計画及び運転実績に照らして経済的なものとなっているかに着眼して検査した。
検査したところ、放医研では、9年度の開始前に策定した運転計画において、8月は定期保守点検作業を実施するため重粒子線装置等の運転を停止することとしていた。そして、この運転計画に従って、重粒子線がん治療装置については9年8月4日から31日まで、また、サイクロトロン装置については8月8日から31日までの間、それぞれ定期保守点検作業のため運転を停止していた。そして、この間における使用電力の実績は、最大でも7,440KWであり、いずれの日も契約電力10,700KWの30%以上が低減されている状況となっていた。しかし、放医研では、夏季休日契約について、電力会社と協議を行っておらずこれを締結していなかった。
また、8年度以前についても、9年度と同様に、運転計画に基づき8月には定期保守点検作業のため運転を停止しており、7年度及び8年度の運転停止期間における使用電力の実績は、連日、契約電力9,700KWの30%以上が低減されている状況となっていた。このような従来の使用電力の実績等からみると、前記の契約電力変更による増加分1,000KWを考慮しても、定期保守点検作業を行う9年8月の使用電力が契約電力の30%以上低減されることが十分予測できたと認められる。
したがって、夏季休日契約の要件が変更になった9年度は電力会社と協議を行い、夏季休日契約を締結して、電気料金の節減を図る要があると認められた。
放医研の9年度の電気需給契約において、夏季休日契約を締結していたとすれば、電気料金を約1670万円節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、放医研において、毎年多額の電気料金を支払っているにもかかわらず、選択約款に関する認識が必ずしも十分でなかったため、9年度からの夏季休日契約の要件の変更に対応しなかったことなどによると認められる。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、放医研では、10年5月、電力会社との間で夏季休日契約と同様の割引を受けられる夏季操業調整契約を締結するとともに、今後は、重粒子線がん治療装置等の主要設備の運転計画を的確に把握し、電気料金の節減を図ることとする処置を講じた。