会計名及び科目 | 一般会計 国税収納金整理資金 (款)歳入組入資金受入 |
(項)各税受入金 | |
部局等の名称 | 麹町税務署ほか175税務署 |
納税者 | 449人 |
徴収過不足額 | 徴収不足額 | 1,345,125,905円 |
徴収過大額 | 26,659,300円 |
1 租税の概要
源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税、消費税等の国税については、法律により、納税者の定義、納税義務の成立の時期、課税する所得の範囲、税額の計算方法、申告・納付の手続などが定められている。
平成9年度国税収納金整理資金の各税受入金の徴収決定済額は62兆2840億余円に上っている。このうち源泉所得税は16兆7173億余円、申告所得税は4兆1036億余円、法人税は14兆3531億余円、相続税・贈与税は2兆7593億余円、消費税は1兆4619億余円、消費税及地方消費税は12兆5456億余円となっていて、これら各税の合計額は51兆9410億余円となり、全体の83.3%を占めている。
2 検査の結果
上記各税の課税内容に重点をおいて検査したところ、麹町税務署ほか175税務署において、納税者449人から租税を徴収するに当たり、徴収額が不足していたものが445事項1,345,125,905円、徴収額が過大になっていたものが4事項26,659,300円あった。
これを、税目別にみると次表のとおりである。
税目 | 徴収不足の事項数 徴収過大の事項数 |
徴収不足額 徴収過大額(△) |
源泉所得税 |
25 |
円 102,746,205 |
− | − | |
申告所得税 | 119 | 373,245,800 |
3 | △22,037,900 | |
法人税 | 206 | 628,348,200 |
1 | △4,621,400 | |
相続税・贈与税 | 55 | 165,574,000 |
− | − | |
消費税 | 37 | 70,711,200 |
− | − | |
有価証券取引税 | 3 | 4,500,500 |
− | − | |
計 | 445 | 1,345,125,905 |
4 | △26,659,300 |
なお、これらの徴収不足額及び徴収過大額については、本院の指摘により、すべて徴収決定又は支払決定の処置が執られた。
上記の176税務署において、徴収不足又は徴収過大の事態を生じた原因は、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤っているのに、課税資料の収集・活用が的確でなかったり、法令等の適用の検討が十分でなかったり、これを見過ごしたりして、誤ったままにしていたことなどによるものである。
この449事項のうち、源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税及び消費税に関するものについて、その主な態様を示すと次のとおりである。
(1) 源泉所得税に関するもの
源泉所得税では徴収不足となっていたものが25事項あった。この内訳は、配当及び給与等に関するもの18事項並びにその他に関するもの7事項である。
ア 配当及び給与等に関するもの
配当及び給与等(給料、賃金、賞与等をいう。)の支払者は、支払の際に、所定の方法により計算した源泉所得税を徴収し、これを徴収の日の属する月の翌月10日までに国に納付しなければならないこととなっている。また、支払が確定した日から1年を経過した日において未払となっている配当及び利益処分等の賞与については、その日に支払があったものとみなし、支払者が源泉所得税を徴収してその翌月10日までにこれを国に納付しなければならないこととなっている。そして、この法定納期限までに納付がない場合には、支払者に対して、納税の告知をしなければならないこととなっている。
この配当及び給与等に関し、徴収不足となっている事態が18事項49,857,194円あった。その主な内容は、支払が確定した日から1年を経過した日において未払となっている配当及び利益処分の賞与について、法定納期限を経過した後、源泉所得税が納付されていないのに、これを見過ごしたため、納税の告知をしていなかったものである。(事例1参照)
イ その他に関するもの
上記アのほか、退職手当等に関し、徴収不足となっている事態が7事項52,889,011円あった。
源泉所得税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。
<事例1 > 賞与に関する源泉所得税について納税の告知をしていなかったもの
A会社は、平成8年3月決算期の利益処分の賞与50,000,000円に対する源泉所得税を納付していなかった。
しかし、上記の賞与は、同会社から提出された7年4月から8年3月までの事業年度分の法人税の申告書等によれば、8年5月31日に支払が確定し、その日から未払のまま1年を経過しているので、9年6月1日に支払があったものとみなされる。したがって、同年7月10日までに同賞与に対する源泉所得税が納付されていなければならないのに、これを見過ごしたため、納税の告知をしておらず、源泉所得税額23,274,384円が徴収不足になっていた。
(2) 申告所得税に関するもの
申告所得税では徴収不足又は徴収過大となっていたものが122事項あった。この内訳は、譲渡所得に関するもの39事項、雑所得に関するもの22事項、不動産所得に関するもの20事項、事業所得に関するもの19事項及びその他に関するもの22事項である。
ア 譲渡所得に関するもの
個人が資産を譲渡した場合には、その総収入金額から譲渡した資産の取得費や譲渡に要した費用の額などを差し引いた金額を譲渡所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。ただし、土地建物等及び株式等の譲渡による所得については、他の所得と分離して課税することとなっている。また、相続又は遺贈により取得した資産を一定の期間内に譲渡した場合には、相続税額のうち所定の方法により計算した金額を、譲渡した資産の取得費に加算する特例を適用できることとなっている。
この譲渡所得に関し、徴収不足となっている事態が36事項179,804,200円、徴収過大となっている事態が3事項22,037,900円あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア) 譲渡した資産の取得費の額などに誤りがあるのに、法令等の適用の検討が十分でなかったり、これを見過ごしたりしたため、譲渡所得の金額を過小のままとしていた。(事例2参照)
(イ) 譲渡所得に対する税額の計算に誤りがあるのに、これを見過ごしたため、税額を過小又は過大のままとしていた。
イ 雑所得に関するもの
個人が貸付金の利子(事業所得に該当するものを除く。)などを受けた場合には、その総収入金額から必要経費を差し引いた金額を雑所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。
この雑所得に関し、徴収不足となっている事態が22事項78,661,000円あった。その主な内容は、貸付金の利子による所得があるのに、これに係る課税資料の収集・活用が的確でなかったため、課税していなかったものである。
ウ 不動産所得に関するもの
個人が不動産を貸し付けた場合には、その総収入金額から必要経費を差し引いた金額を不動産所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。
そして、不動産所得の計算に当たって、貸付料等の収入、建物等の取得などに係る経費の各項目の金額に消費税を含めて経理している場合には、経費に係る消費税額が収入に係る消費税額を超えるときに生じる消費税の還付金は、不動産所得の計算上総収入金額に算入することとなっている。
この不動産所得に関し、徴収不足となっている事態が20事項28,240,900円あった。その主な内容は、収入及び経費に消費税を含めて経理している場合の消費税の還付金が総収入金額に算入されていないのに、これを見過ごしたため、不動産所得の金額を過小のままとしていたものである。
エ 事業所得に関するもの
個人が事業を営む場合には、その総収入金額から必要経費を差し引いた金額を事業所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。
そして、事業を廃止した年に貸倒引当金勘定に繰り入れた金額がある場合には、この金額は事業所得の計算上、必要経費に算入しないこととなっている。
この事業所得に関し、徴収不足となっている事態が19事項47,601,600円あった。その主な内容は、総収入金額から差し引く必要経費の額を誤って過大としているのに、これを見過ごしたため、事業所得の金額を過小のままとしていたものである。(事例3参照)
オ その他に関するもの
上記のアからエのほか、配当所得、一時所得等に関し、徴収不足となっている事態が22事項38,938,100円あった。
申告所得税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。
<事例2 > 相続財産に係る譲渡所得の課税の特例の適用を誤っていたもの
納税者Bは、平成7年分の申告に当たり、譲渡した土地のすべてが相続により取得したものであるとして、相続財産に係る譲渡所得の課税の特例を適用し、相続税額94,322,846円を譲渡した土地の取得費に加算していた。そして、譲渡価額からその取得費などを差し引き、譲渡所得の金額を7,871,285円としていた。
しかし、同人の申告書等によれば、上記の土地のうちには相続により取得したものではない部分があり、この部分の譲渡については特例を適用することができないため、取得費に加算できる相続税額は51,666,151円となる。したがって、これにより計算すると、譲渡所得の金額は50,527,980円となるのに、上記の申告書等からこの事実を把握していなかったため、申告所得税額11,190,400円が徴収不足になっていた。
<事例3 > 事業所得に係る必要経費の額を誤っていたもの
納税者Cは、平成8年分の申告に当たり、医業から生じた事業所得の計算において、貸倒引当金勘定に繰り入れた金額26,352,000円を必要経費に算入し、必要経費の額を1,113,856,330円としていた。そして、総収入金額からこの必要経費を差し引き、事業所得の金額を25,492,654円としていた。
しかし、同人の申告書等によれば、同人は8年6月に事業を廃止していることから、貸倒引当金勘定に繰り入れた金額26,352,000円は必要経費に算入することができない。したがって、このことなどにより計算すると、事業所得の金額は50,938,654円となるのに、上記の申告書等からこの事実を把握していなかったため、申告所得税額12,722,900円が徴収不足になっていた。
(3) 法人税に関するもの
法人税では徴収不足又は徴収過大となっていたものが207事項あった。この内訳は、同族会社の留保金に関するもの27事項、退職給与引当金に関するもの25事項、法人税額の特別控除に関するもの18事項、役員賞与の損金不算入に関するもの13事項及びその他に関するもの124事項である。
ア 同族会社の留保金に関するもの
特定の同族会社(注1)
については、通常の法人税のほか、利益のうち社内に留保した金額が一定の金額を超える場合には、その超える部分の金額(以下「課税留保金額」という。)に対し特別税率(注2)
の法人税を課することとなっている。
この同族会社の留保金に関し、徴収不足となっている事態が27事項135,661,000円あった。その主な内容は、特定の同族会社に該当し課税留保金額が算出されるのに、これを見過ごしたため、特別税率の法人税を課していなかったものである。(事例4参照)
(注1) 特定の同族会社 発行済株式の総数(又は出資金額)の100分の50以上が、3人以下の株主等(株主等に同族会社でない法人がある場合はその法人を除く。)及びこれらと特殊の関係にある個人・法人によって所有されている会社をいう。
(注2) 特別税率 課税留保金額が年3000万円以下の部分については100分の10、年3000万円を超え1億円以下の部分については100分の15、年1億円を超える部分については100分の20となっている。
イ 退職給与引当金に関するもの
退職給与規程を定めている法人が、使用人の退職給与に充てるために退職給与引当金勘定に繰り入れた金額については、次のうちいずれか少ない金額を限度として、損金に算入できることとなっている。
〔1〕 期末退職給与の要支給額(注1) から前期末退職給与の要支給額を差し引いた金額(又は給与総額の100分の6に相当する金額)
〔2〕 期末退職給与の要支給額の100分の20に相当する金額(注2) から、前期から繰り越された退職給与引当金勘定の期末における金額を差し引いた金額
また、使用人が退職した場合には、退職給与引当金勘定の金額から、当該使用人に係る前期末退職給与の要支給額に相当する金額を取り崩して益金に算入することとなっている。
この退職給与引当金に関し、徴収不足となっている事態が25事項66,849,900円あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア) 繰入限度額の計算に誤りがあり、限度額を超えて繰り入れた金額が損金に算入されているのに、これを見過ごしたため、損金に算入する金額を過大のままとしていた。
(イ) 退職した使用人に係る前期末退職給与の要支給額に相当する金額が、退職給与引当金勘定の金額から取り崩され益金に算入されていないのに、これを見過ごしたため、益金に算入する金額を過小のままとしていた。
(注1) 期末退職給与の要支給額 期末において在職する使用人の全員が自己の都合で退職するものと仮定した場合に、各使用人について退職給与規程により計算される退職給与の合計額をいう。
(注2) 100分の20に相当する金額 平成10年3月31日までに開始する事業年度については100分の40に相当する金額となっており、この割合は15年3月31日まで漸減することとなっている。
ウ 法人税額の特別控除に関するもの
青色申告書を提出する法人のうち中小企業者等(発行済株式の総数の2分の1以上を同一の大規模法人が所有しているなどの法人を除く。)が電子機器利用設備を取得し又は賃借した場合には、その設備を事業に使用した最初の事業年度において、次のうちいずれか少ない金額を限度として法人税額から控除できることなどとなっている。
〔1〕 取得価額又は賃借期間中に支払う費用の総額に一定割合を乗じた金額
〔2〕 確定申告書の法人税額の100分の20に相当する金額
この法人税額の特別控除に関し、徴収不足となっている事態が18事項34,778,400円あった。その主な内容は、発行済株式の総数の2分の1以上を同一の大規模法人が所有しているなど、中小企業者等に該当しない法人が法人税額の特別控除をしているのに、これを見過ごしたため、法人税額を過小のままとしていたものである。
エ 役員賞与の損金不算入に関するもの
代表取締役、専務取締役、常務取締役、監査役等法人の役員及び同族会社の使用人としての職務を有していて持株数等が一定の割合を超えている役員に対して支給した賞与は、損金に算入できないこととなっている。
この役員賞与の損金不算入に関し、徴収不足となっている事態が13事項17,086,400円あった。その主な内容は、同族会社の使用人としての職務を有する役員の持株数等が一定の割合を超えているのに、これを見過ごしたため、これらに支給した賞与を損金に算入したままとしていたものである。
オ その他に関するもの
上記のアからエのほか、特定の資産の買換えの特例、受取配当等の益金不算入等に関し、徴収不足となっている事態が123事項373,972,500円、徴収過大となっている事態が1事項4,621,400円あった。(事例5参照)
法人税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。
<事例4 > 同族会社の課税留保金額に対して特別税率の法人税を課していなかったもの
D会社は、平成6年4月から8年3月までの2事業年度分の申告に当たり、特定の同族会社の判定をしていなかったため、利益のうち社内に留保した金額に対し特別税率による税額計算をしていなかった。
しかし、申告書等によれば、同会社は3人の株主及びこれらの親族が発行済株式の総数の100分の82を所有する特定の同族会社であり、所定の計算をすれば、各期において、課税留保金額6,874,000円、74,662,000円が算出される。したがって、この課税留保金額に対して特別税率の法人税を課することとなるのに、これを見過ごしたため、法人税額687,400円、9,699,300円、計10,386,700円が徴収不足になっていた。
<事例5 > 特定の資産の買換えの特例における圧縮限度額の計算を誤っていたもの
E会社は、平成8年4月から9年3月までの事業年度において、土地を譲渡し、新たに土地及び建物を取得していた。そして、特定の資産の買換えの特例(注1)
を適用して、新たに取得した土地の取得価額に差益割合(注2)
等を乗じた金額136,856,795円が圧縮限度額(注3)
であるとして、その範囲内の135,546,000円を土地の取得価額から減額して、同額を損金に算入し、圧縮限度超過額はないとしていた。また、上記の差益割合の計算に当たっては、譲渡経費の額を70,655,692円としていた。
しかし、申告書等によれば、譲渡経費は上記金額のほかに譲渡のために取り壊した建物等の除却損等が75,034,611円あるので、この除却損等を譲渡経費の額に含めた差益割合により計算すると圧縮限度額は108,133,764円となる。したがって、圧縮限度超過額は27,412,236円となるのに、これを見過ごしたため、法人税額10,986,100円が徴収不足になっていた。
(注1) 特定の資産の買換えの特例 法人が所有する固定資産を譲渡し、一定の要件の下で固定資産を新たに取得する場合には、譲渡による利益等を基にして所定の方式で計算した金額を、新たに取得した資産の取得価額から減額して、これを損金に算入できる特例をいう。
(注2) 差益割合 譲渡資産の対価の額に占める譲渡利益の割合をいい、次の算式により計算する。
(注3) 圧縮限度額 新たに取得した資産の取得価額から減額することができる限度額をいい、次の算式により計算する。
(4) 相続税・贈与税に関するもの
相続税・贈与税では徴収不足となっていたものが55事項あった。この内訳は、相続税については土地建物等の価額に関するもの23事項及びその他に関するもの18事項、贈与税については14事項である。
ア 相続税に関するもの
(ア) 土地建物等の価額に関するもの
個人が相続又は遺贈により財産を取得した場合には、その取得した財産に対し相続税を課することとなっている。そして、取得した財産の価額は、相続又は遺贈により取得したときの時価とされていて、土地建物等の価額については、路線価、固定資産税評価額等を基にして計算することとなっている。ただし、被相続人等が居住又は事業の用に供していた宅地等のうち200m2 までの部分については、小規模宅地等として、次に掲げる区分に応じ、土地等の価額にその割合を乗じた額を減額できることとなっている。
〔1〕 特定居住用宅地等(注) などに該当するもの 100分の80
〔2〕 上記以外のもの 100分の50
この土地建物等の価額に関し、徴収不足となっている事態が23事項44,623,500円あった。その主な内容は、土地の価額の計算において、小規模宅地等のうち特定居住用宅地等に該当しないものについて、減額割合を誤って100分の80としているのに、これを見過ごしたため、土地の価額を過小のままとしていたものである。
(注) 特定居住用宅地等 被相続人等の居住の用に供していた宅地等で、その宅地等を相続又は遺贈により取得した者のうちに、被相続人の配偶者又は一定の要件に該当する親族がいる場合の宅地等をいう。
(イ) その他に関するもの
上記(ア)のほか、有価証券の価額等に関し、徴収不足となっている事態が18事項48,332,100円あった。
イ 贈与税に関するもの
個人が贈与により財産を取得した場合には、その取得した財産に対し贈与税を課することとなっている。そして、同族会社である株式会社が新株を発行する際、従前の株主が新株の引受けをしなかったことにより、その株主の親族が新株引受権を取得し、有利な発行価額による新株の引受けをした場合には、その親族が従前の株主から新株引受権を贈与により取得したものとみなされることとなっている。
この贈与税に関し、徴収不足となっている事態が14事項72,618,400円あった。その主な内容は、同族会社における従前の株主からその親族が新株引受権を贈与により取得しているのに、これに係る課税資料の収集・活用が的確でなかったため、贈与税を課していなかったものである。(事例6参照)
相続税・贈与税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。
<事例6 > 同族会社の新株引受権の贈与に課税していなかったもの
納税者Fは、平成8年分の贈与税の申告をしていなかった。
しかし、同人は、同族会社である株式会社Gが8年3月に新株を発行した際、株主である親族が引受けをしなかった新株6,000株を引き受けていた。そして、この新株の評価額は1株当たり5,255円であるのに払込金額は500円であった。したがって、同人は、1株当たり4,755円、総額28,530,000円の新株引受権の贈与を受けていたことになり、これに対する贈与税を課する要があるのに、課税資料の収集・活用をしていなかったため、贈与税額12,858,000円が徴収不足になっていた。
(5) 消費税に関するもの
消費税では徴収不足となっていたものが37事項あった。この内訳は、課税売上高の計上に関するもの22事項及びその他に関するもの15事項である。
ア 課税売上高の計上に関するもの
事業者は、課税期間(納付する消費税額の計算の基礎となる期間で、個人事業者は暦年、法人は事業年度)における課税売上高に対する消費税額から仕入れに係る消費税額を差し引いた額を消費税として納付することとなっている。そして、課税売上高には事業者が国内において行った資産の譲渡及び貸付け並びに請負等の役務の提供に係る収入金額(土地の譲渡、住宅の貸付け等に係る収入金額を除く。)を計上することとなっている。
この課税売上高の計上に関し、徴収不足となっている事態が22事項35,181,300円あった。その主な内容は、貸し付けていた建物やゴルフ会員権を譲渡しているのに、これを見過ごしたため、課税売上高を過小のままとしていたものである。
イ その他に関するもの
上記アのほか、納税義務の免除(注) の規定の適用、仕入れに係る消費税額の控除、簡易課税制度の適用等に関し、徴収不足となっている事態が15事項35,529,900円あった。(事例7参照)
(注) 納税義務の免除 基準期間(個人事業者は課税期間の前々年、法人は課税期間の前々事業年度)における課税売上高が3000万円以下の場合、課税期間の課税売上げについて納税義務が免除される。
消費税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。
<事例7 > 消費税を課していなかったもの
納税者Hは、平成7年1月から同年12月までの課税期間分(7年分)の消費税の申告をしていなかった。
しかし、同人の申告所得税の申告書等によれば、7年分の課税売上げとして、不動産賃貸料収入60,006,107円及び貸付用建物の譲渡収入350,000,000円、計410,006,107円がある。そして、7年分の基準期間である5年分の課税売上高が40,260,686円と、30,000,000円を超えていて、納税義務は免除されない。したがって、7年分の消費税を課する要があるのに、上記の申告書等からこの事実を把握していなかったため、消費税額11,866,700円が徴収不足になっていた。
これらの徴収不足額及び徴収過大額を国税局等別に示すと次のとおりである。