会計名及び科目 | 印刷局特別会計 (項)事業費 |
部局等の名称 | 印刷局本局ほか10工場等 |
契約名 | 一般製品等の納入作業請負契約ほか208契約 |
契約の概要 | 工場内の倉庫における製品等の搬入・搬出等の作業、厚生施設の管理作業等の業務を請負により行わせるもの |
契約の相手方 | 鳳産業株式会社ほか7会社等 |
契約 | 平成9年4月〜10年3月 一般競争契約、随意契約 |
支払額 | 16億9095万余円 |
社会保険料の事業主負担分の積算額 | 1億4423万余円 |
低減できた積算額 | 4690万円 |
1 契約の概要
印刷局では、日本銀行券用紙等の製造及び日本銀行券、証券類、官報等の印刷等の業務を行っている。
そして、本局及び10工場等(注1)
では、工場や厚生施設計28箇所において、上記の業務に付随する作業等の一部を業者に請け負わせて行っており、平成9年度に、鳳産業株式会社ほか7会社等と計209件の請負契約を締結し、計16億9095万余円を支払っている。
これらの請負契約により行わせている作業の主なものは、〔1〕 工場内の倉庫における製品等の搬入・搬出及び整理・運搬等の作業、〔2〕 宿泊所、体育館等の厚生施設における受付、清掃、賄い等の管理作業となっている。
上記の各請負契約に係る予定価格の積算に当たっては、印刷局では、上記の各作業を、その作業の内容に応じて、〔1〕 フォークリフトの運転資格や調理師免許を必要とする特殊作業、〔2〕 普通作業、〔3〕 軽作業に分類し、各工場等ごとに、毎年、役務賃金単価を定めている。そして、本局及び各工場等では、各作業ごとに算出した作業時間、作業人員に、この役務賃金単価及び経費率を乗ずるなどして予定価格を算出することとしている。
この役務賃金単価は、各種資料の職種別の賃金調査等に基づき、上記の各作業別に1人1日当たり(8時間労働)の賃金を算出し、これに次の社会保険料の事業主負担額を合算して算定されている。
社会保険料等の事業主負担額は、関係法令(注2)
に基づき、労働者災害補償保険、雇用保険、健康保険及び厚生年金保険の各保険料並びに児童手当拠出金の事業主負担額(注3)
を算定することとしている。
そして、印刷局では、上記の役務賃金単価の算定に当たって、1人1日当たりの賃金に、児童手当拠出金を除く各保険の保険料率をそのまま乗じて算出し、本局及び10工場等では、9年度の請負契約の予定価格における社会保険料の事業主負担額の積算額を総額1億4423万余円と算定している。
2 検査の結果
上記の請負契約における作業の中には、前記のとおり、倉庫内での製品等の受払い、仕分け、荷造り、厚生施設の利用者の受付、清掃、賄いなどの作業があり、これらの作業においては、作業実態からみて短時間就労する者や高年齢者が多数従事していることが見込まれる。そして、関係法令により、これらの者については、その加入要件に該当しなかったり、保険料の納付が免除されたりする場合がある。
そこで、社会保険料等の積算について雇用の実態を反映したものとなっているかという点に着眼して検査した。
検査したところ、次のような状況となっていた。
関係法令によると、高年齢者や短時間の就労の場合の保険料等の徴収及び加入等の要件については次のようになっている。
(ア) 高年齢者について
〔1〕 雇用保険においては、保険年度の初日(4月1日)において64歳以上の者はその保険料の納付が免除される。
〔2〕 厚生年金保険においては、65歳以上の者は被保険者の資格を喪失し、保険料徴収の対象外となる。
〔3〕 児童手当拠出金については、65歳以上の者は拠出金徴収の対象外となる。
(イ) 短時間の就労について
〔1〕 雇用保険、健康保険及び厚生年金保険においては、1週間当たりの所定労働時間が一定の時間数を超えるなどの加入要件を満たす者が被保険者となる。したがって、これらに該当しない者は保険料徴収の対象外となる。
〔2〕 児童手当拠出金については、厚生年金保険の被保険者でない者は、拠出金徴収の対象外となる。
そこで、本局及び10工場等において、9年度中に実際に上記の作業に従事した作業員479人について、就労の状況等を調査したところ、次のような状況となっていた。
(ア) 64歳以上で雇用保険の保険料納付の免除の対象となっていたり、65歳以上で厚生年金保険の被保険者資格を喪失したりして各保険の保険料を納付していない者 318人
(イ) 短時間の就労のため各保険の加入要件に該当せず、雇用保険や健康保険及び厚生年金保険の各保険料を納付していない者 175人 (上記(ア)、(イ)には重複している者がいる。)
したがって、社会保険料等の事業主負担額の算定に当たっては、雇用の実態を反映させ、保険料の納付者に係る分を計上すれば足りると認められた。
上記により、9年度の請負契約について、8年度末における実際の加入状況等を基に、社会保険料等の事業主負担額を修正計算すると、9727万余円となり、前記の積算額1億4423万余円を約4690万円低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、印刷局において、社会保険料等の事業主負担額について雇用の実態を積算に反映させる配慮が十分でなかったことによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、印刷局では、10年10月に、本局及び工場等に対して指示文書を発し、作業員の社会保険の毎年1月現在の加入状況等を報告させることにより、各保険への加入状況等を把握し、雇用の実態を社会保険料等の事業主負担額の積算に反映させることとする処置を講じた。
(注1) 10工場等 滝野川、小田原、静岡、彦根、虎の門、王子、岡山各工場並びに研究所及び東京、小田原両病院
(注2) 関係法令 労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)、労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和44年法律第84号)、雇用保険法(昭和49年法律第116号)、健康保険法(大正11年法律第70号)、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)、児童手当法(昭和46年法律第73号)等
(注3) 社会保険料等の事業主負担額
(ア) 労働者災害補償保険は、雇用関係が成立している労働者に適用される。その保険料は、賃金総額に事業の種類ごとに定められた労災保険率を乗じて算出された額を事業主が負担する。
(イ) 雇用保険の保険料は、労働者と事業主とで折半するなどして負担することとなっており、事業主の負担額は、賃金総額に1000分の7.5を乗じた額などとなっている。
(ウ) 健康保険の保険料は、被保険者と事業主とで折半して負担することとなっており、事業主の負担額は、賃金から賞与等を控除した額に1000分の41(9年8月まで適用)、1000分の42.5(9年9月以降適用)を乗じた額となっている。また特別保険料として、事業主は賞与等に1000分の5を乗じて算出された額を負担することとなっている。
(エ) 厚生年金保険の保険料は、被保険者と事業主とで折半して負担することとなっており、事業主の負担額は、賃金から賞与等を控除した額に1000分の86.75を乗じた額となっている。また、特別保険料として、事業主は賞与等に1000分の5を乗じて算出された額を負担することとなっている。
(オ) 児童手当拠出金は、賃金から賞与等を控除した額に1000分の1.1を乗じて算出された額を事業主が負担する。