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  • 平成9年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第3 文部省|
  • 不当事項|
  • 予算経理

架空の名目により謝金、旅費等を支出させ、これを別途に経理して目的外の用途に使用するなどしていたもの


(19)−(40) 架空の名目により謝金、旅費等を支出させ、これを別途に経理して目的外の用途に使用するなどしていたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)文部本省 (項)文部本省
(項)教育統計調査費
(項)生涯学習振興費
(項)義務教育教科書費
(項)学校教育振興費
(項)体育振興費
(組織)文化庁 (項)文化庁
(項)文化振興費
部局等の名称 宮城県ほか21府県
謝金、旅費等の概要 文部省が各都道府県教育委員会等に委嘱又は委託して実施する教育関係等の事業のために、都道府県において同省から支出負担行為及び支出の事務の委任を受けて支出する講師謝金、出張旅費等
上記の部局における謝金、旅費等の支出額
8,498,117,358円(平成4〜9年度)
不正に支出された謝金、旅費等の額 3,962件 299,607,879円(平成4〜9年度)

1 事業の概要

(文部省委嘱等事業)

 文部省では、学校教育、社会教育、学術及び文化の振興並びに普及を図ることを目的として、多数の教育関係等事業を各都道府県教育委員会等に委嘱又は委託して実施している。
 これらの事業(以下「文部省委嘱等事業」という。)の内容は、教員が学習指導上の問題を研究協議するための研究集会の開催、教育委員会・学校・PTA等の関係者が生徒指導上の諸問題について情報交換等を行うための協議会の開催、時代の要請に対応した教育方法等に関する実践的な調査研究の実施などとなっている。

(事業経費の経理)

 文部省では、文部省委嘱等事業の実施に要する謝金、旅費等の経費(以下「事業経費」という。)を同省所管の歳出予算から直接支弁するなどしている。その予算執行事務については、会計法(昭和22年法律第35号)第48条の規定等に基づき、謝金や旅費の支給決定、各種契約の締結等の支出負担行為に関する事務を各都道府県教育委員会の教育長等に、また、それらの支出負担行為に基づいて行う事業経費の支出に関する事務を各都道府県の出納長に委任している。

(事業経費の支出)

 宮城県ほか21府県において、文部省から予算執行事務の委任を受けて平成4年度から9年度までの間に支出した事業経費の額は、計8,498,117,358円となっている。

2 検査の結果

 上記の22府県において実施された文部省委嘱等事業について、事業の実施及び事業経費の経理処理の状況を検査した。
 その結果、各府県の教育委員会等において、架空の名目により諸謝金支給調書、旅行命令書、旅費請求書、支出負担行為決議書等の関係書類を作成して、謝金を支払わないのに支払うこととしたり、出張の事実がないのに出張したこととしたりするなどし、これにより謝金、旅費等を出納部局に不正に支出させていたものがあった。このように不正に支出させたものの支出負担行為決議の件数及び不正支出額は、計3,962件、299,607,879円である。
 そして、上記22府県の教育委員会等では、これらの不正支出額のうち、謝金等に係る源泉所得税相当額等を控除した285,703,395円を、預金利息その他の保有金10,490,808円と合わせて別途に経理していた。その使途について、各府県教育委員会等が保管していた領収証書その他の関係資料等により調査したところ、計245,676,677円を、文部省委嘱等事業の実施とは直接関係のない物品購入費、職員夜食代、慶弔費等に使用するなどし、残りの50,517,526円を現金又は銀行預金で保有していた。
 上記の事態は、各府県の教育委員会等において、会計法令に違反した不正な経理を長期にわたり継続し、これによりねん出した資金を本来の事業目的とは直接関係のない用途に使用するなどしていたもので、経理が著しく適正を欠いていると認められる。
 このような事態が生じていたのは、各府県の教育委員会等において、文部省委嘱等事業の実施に当たり、適正な経理を行う旨の認識に著しく欠ける点があったこと、文部省において、各府県の予算執行についての実態把握が十分でなく、同事業の予算執行に対して注意を払っていなかったことなどによると認められた。
 これらの不正支出の件数、金額等を府県別に示すと、次のとおりである。


府県名 年度 事業経費の支出額 不正支出額 別途経理額 使用済額
(主な使途)
保有残高 保有残高

(19)

宮城県

5〜9

247,148,522

327

24,238,235

22,671,409

21,441,111
(職員夜食代、臨時職員賃金)

1,230,298
(20) 秋田県 5〜8 151,053,285 294 21,539,989 20,343,884 16,136,284
(会食費)
4,207,600
(21) 山形県 5〜9 282,348,646 66 2,769,237 2,725,027 2,498,225
(物品購入費)
226,802
(22) 福島県 6〜8 76,106,353 80 2,605,588 2,448,724 2,448,724
(物品購入費)
(23) 茨城県 5〜9 309,113,814 188 10,075,542 9,929,298 9,090,924
(物品購入費)
838,374
(24) 埼玉県 5〜9 809,637,843 136 10,075,365 9,598,617 8,967,711
(物品購入費)
630,906
(25) 神奈川県 4〜9 346,590,871 503 54,060,836 51,139,329 41,275,202
(物品購入費、慶弔費)
9,864,127
(26) 富山県 5〜9 535,539,376 215 5,631,733 5,359,133 4,041,875
(研究会参加費等)
1,317,258
(27) 石川県 5〜9 295,411,965 177 12,800,913 12,385,520 10,531,100
(物品購入費、研究会参加費等)
1,854,420
(28) 山梨県 6〜9 163,921,713 283 30,328,898 29,449,170 26,152,698
(物品購入費、旅費)
3,296,472
(29) 長野県 5〜9 679,513,475 39 3,063,956 2,992,256 2,992,256
(物品購入費)
(30) 静岡県 5〜8 188,940,289 299 15,944,560 14,875,993 14,790,193
物品購入費、会議費
85,800
(31) 愛知県 5〜8 294,025,425 268 24,346,015 24,658,746 18,907,413
(物品購入費、職員夜食代)
5,751,333
(32) 三重県 5〜9 937,963,579 410 26,386,639 26,307,418 20,802,813
(物品購入費、研究会参加費等)
5,504,605
(33) 大阪府 5〜8 356,664,053 126 12,156,304 15,731,198 8,742,904
(物品購入費)
6,988,294
(34) 奈良県 5〜8 559,453,064 152 11,508,579 14,582,836 7,725,951
(物品購入費、旅費)
6,856,885
(35) 広島県 6〜9 706,088,404 31 4,063,218 3,834,858 3,834,858
(会場借上げ費等)
(36) 香川県 5〜8 282,811,437 166 10,708,777 10,590,912 9,780,112
(物品購入費)
810,800
(37) 佐賀県 5〜9 271,589,272 42 4,791,263 4,766,728 4,766,728
(会議費)
(38) 長崎県 5〜8 240,861,122 78 4,857,823 4,601,713 4,202,401
(印刷製本費等)
399,312
(39) 熊本県 5〜9 507,561,016 25 4,595,468 4,261,198 3,673,398
(物品購入費)
587,800
(40) 宮崎県 5〜9 255,773,834 57 3,058,941 2,940,236 2,873,796
(物品購入費)
66,440
(19)−(40) の計 8,498,117,358 3,962 299,607,879 296,194,203 245,676,677 50,517,526

(注) 宮城県、茨城県、神奈川県、山梨県、愛知県、三重県、大阪府、奈良県及び長崎県の別途経理額には、預金利息その他の保有金(計10,490,808円)を含む。