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国立大学の授業料の免除が不当と認められるもの


(57) 国立大学の授業料の免除が不当と認められるもの

会計名及び科目 国立学校特別会計 (款)授業料及入学検定料
  (項)授業料及入学検定料
部局等の名称 お茶の水女子大学
授業料免除の根拠 国立学校設置法(昭和24年法律第150号)
授業料免除の概要 国立大学の学生に対し、経済的理由によって納付が困難であり、かつ、学業優秀と認める場合に、授業料の納付を免除するもの
授業料の免除額 平成8年度 延べ359人 73,134,600円
平成9年度 延べ431人 87,317,400円
延べ790人 160,452,000円
不当と認める免除額 平成8年度 18人 1,960,200円
平成9年度 延べ67人 7,714,200円
延べ85人 9,674,400円

1 授業料免除の概要

(授業料の免除)

 国立大学では、学生の奨学援護の一環として修学継続を容易にするため、国立学校設置法(昭和24年法律第150号)等に基づき、経済的理由によって授業料の納付が困難であり、かつ、学業優秀と認められる場合に、一定の範囲内で、免除を受けようとする学生の申請に基づいて授業料の納付を免除している。そして、この授業料の免除は、「国立学校の授業料等免除及び徴収猶予取扱要領」(昭和35年文部大臣裁定。以下「取扱要領」という。)に基づき、各大学において免除する学生の選考基準を定めて実施することとなっている。また、この取扱要領では、免除の取扱いは年度を前期と後期に分け各期ごとに行うこと、免除の額は学生が属する世帯の所得に応じて、原則として各期分の授業料の全額又は半額とすることとなっている。

(家計の判定)

 授業料免除の判定は、家計及び学力によって行われる。そして、家計の判定は、文部省高等教育局長が定めた「授業料免除選考基準の運用について」(平成8年文高学第8号。以下「運用通知」という。)により、次のとおり行うこととなっている。
 すなわち、学生が属する世帯の1年間の総所得金額と、世帯の所在地域の区分、世帯人員の別に応じて定める「全額免除に係る収入基準額表」又は「半額免除に係る収入基準額表」の基準額とを比較して、総所得金額が全額免除の基準額以下の場合は全額免除とし、これを超え半額免除の基準額以下の場合は半額免除とする。
 そして、総所得金額は、次の算式により算定することとなっている。

国立大学の授業料の免除が不当と認められるものの図1

 この総収入金額、必要経費及び特別控除額は、それぞれ次のように算定することとなっている。

(ア) 総収入金額は、学生が属する世帯の前年1年間における金銭等のすべての収入額とする。

(イ) 必要経費の控除は、給与所得、農業所得等の所得の種類別に取り扱い、給与所得者が2人以上いる場合は控除の計算は各人別に行う。
 なお、本人が受けている奨学金は必要経費の控除の対象とはならない。

(ウ) 特別控除額は、学生の属する世帯が母子・父子世帯、就学者のいる世帯、又は障害者のいる世帯などの特別の事情に応じて定められている額とする。

 また、本人が奨学金を受けている場合は総所得金額に加算することとされている。

(お茶の水女子大学における授業料の免除)

 お茶の水女子大学では、取扱要領に基づき、「お茶の水女子大学授業料免除選考基準」を定めて、免除する学生の選考を行っており、これによると、家計の判定に当たっては、運用通知に基づき行うこととしている。
 そして、同大学では、平成8年度及び9年度に、総所得金額が前記の2つの収入基準額表の基準額以下の者を、授業料免除の対象者として選考し、8年度延べ359人及び9年度延べ431人、計延べ790人を免除者とし、8年度73,134,600円及び9年度87,317,400円、計160,452,000円を免除していた。

2 検査の結果

 検査したところ、同大学では、学生が属する世帯の総所得金額を算定するに当たり、本人が受けている奨学金について運用通知の理解が十分でなかったため、本人の給与所得として取り扱い必要経費を控除していた。このため、学生が属する世帯の総所得金額が過小に算定され、授業料免除の判定対象となる総所得金額が基準額を下回るとして、授業料が半額しか免除できないのに全額免除したり、全く免除できないのに半額又は全額免除したりしていた。
 したがって、学生が属する世帯の総所得金額を適正に算定すると、8年度後期18人及び9年度延べ67人、計延べ85人に対する免除額が過大となっていて、8年度1,960,200円及び9年度7,714,200円、計9,674,400円が不当と認められる。