会計名及び科目 | 一般会計 (組織)水産庁 | (項)海岸事業費 (項)漁港漁村整備費 (項)北海道漁港漁村整備費 (項)沖縄開発事業費 (項)離島振興事業費 |
部局等の名称 | 北海道ほか10県 |
補助の根拠 | (1) | 海岸法(昭和31年法律第101号) 漁港法(昭和25年法律第137号) 沖縄振興開発特別措置法(昭和46年法律第131号) 離島振興法(昭和28年法律第72号) |
(2) | 予算補助 |
事業主体 | 道1、県8、市11、町34、村2、計56事業主体 |
補助事業 | 漁港修築、漁港改修、高潮対策、侵食対策等 |
補助事業の概要 | 漁港及び海岸の整備事業として、防波堤、護岸等の前面に設置するコンクリート製の消波ブロックを製作し、据付けるなどの工事を行うもの |
工事費 | 289億2654万余円 | (平成8、9両年度) |
上記に対する国庫補助金相当額 | 191億1106万余円 | |
消波ブロックの製作、据付費等の積算額 | 101億7054万余円 | (平成8、9両年度) |
低減できた積算額 | 12億4740万円 | (平成8、9両年度) |
上記に対する国庫補助金相当額 | 8億0370万円 |
1 事業の概要
水産庁では、漁港法(昭和25年法律第137号)及び海岸法(昭和31年法律第101号)等に基づき、都道府県、市町村等が事業主体となって実施する漁港修築事業、漁港改修事業、高潮対策事業及び侵食対策事業等の補助事業(以下「漁港整備事業等」という。)に対し、補助金を交付している。
そして、これらの漁港整備事業等においては、防波堤、護岸等の前面に、波の圧力や越波量を低減するなどのため、コンクリート製の消波ブロックを乱積工法又は整積工法(注1)
により据付ける消波工が多数施工されている。
水産庁では、補助事業を実施する都道府県等に対し、同庁が監修した「漁港構造物標準設計法」及び「漁港海岸事業設計の手引」等の設計の基準を示しており、これによれば、消波工の設計及び消波ブロックの数量の算出については、次のような手順で行われる(参考図参照) 。
〔1〕 消波工の天端高、天端幅及び前面勾配を決定し、施工断面積を算出する。その際、天端高は防波堤の天端高と同じ位置などとし、また、天端幅は、当該工事に使用する消波ブロックを2個並び以上とする。
〔2〕 施工断面積に施工延長を乗じて施工体積を算出し、この施工体積から、消波ブロックの空隙率を乗じて求められる空隙分を控除して、消波ブロックの実体積を算出する。
〔3〕 消波ブロックの実体積を1個当たりの体積で除して、消波ブロックの必要個数を算出する。
そして、上記の前面勾配及び空隙率は、消波ブロックの種類によりそれぞれ形状が異なっているため、ブロックにより固有の数値となっていることから、上記の計算においては、これらの数値は、ブロックの各開発メーカーが、模型実験等に基づき決定し、カタログで示している数値(以下、これらの数値を「カタログ値」という。)が使用される。
上記のとおり、消波工の天端幅については、設計の基準では、漁港として必要な防波堤等の安定及び消波効果を得るために、消波ブロックを2個並び以上として設計することとしている。
そして、水産庁では、昭和61年度から、消波工が乱積工法の場合は、消波ブロックを2個並べた場合の天端幅(以下「2個並び幅」という。)は、消波ブロック1個の高さ(h)の2倍の数値(以下「2h」という。)を使用するよう指導している。これは、漁港整備事業等が比較的小規模であり、中小建設業者により施工されることが多いため、施工精度の確保に問題があり、2h未満の数値では消波ブロックが2個並びで据付けられずに1個並びとなる箇所が生じるおそれがあることなどを考慮したものである。
2 検査の結果
漁港整備事業等は、毎年度、継続的に多数実施されており、その中で消波工の施工実績も増加し、これに係る工事費も多額に上っている。このため、消波工の設計が経済的なものとなっているか、特に天端幅の設計に着眼して検査した。
北海道ほか11県(注2)
における253漁港において、平成8、9両年度に実施された漁港整備事業等のうち、消波工の天端幅を消波ブロック2個並びとし、かつ、乱積工法で施工していた662工事(工事費総額643億0020万余円、国庫補助金相当額419億7598万余円)を検査の対象とした。
これらの工事における消波ブロックの製作及び据付費等の積算額は、合計215億7249万余円となっている。
検査したところ、次のような状況となっていた。
水産庁では、前記のとおり、消波ブロックの2個並び幅については、2hを用い設計するよう指導している。一方、消波ブロックの開発メーカーがそれぞれ示しているカタログ値によると、消波ブロックが相互にかみ合うため、消波ブロックの2個並び幅は、形状が特殊な一部のブロックを除き、1.5〜1.8(h)の数値が示されている。そこで、上記の662工事における消波工の天端幅の設計について検査したところ、次のように、事業主体によってその取扱いが異なっていた。
しかし、消波ブロックの2個並び幅にカタログ値を用いていた上記(イ)の各工事について、本院がその施工の状況を実地に又は施工写真等により確認したところ、消波工の天端において消波ブロックが1個並びとなっているような箇所は生じていなかった。
また、同種の工事を施行している他省庁の補助事業等について調査したところ、いずれも2個並び幅にカタログ値を用いることとしていた。
上記のとおり、消波ブロックの施工実績が増加し、建設業者の施工技術が向上していると見込まれ、多くの工事において、消波工の天端幅にカタログ値が用いられて設計され、これにより施工されている。そして、その施工精度の確保等については問題なく行われているものと認められたことから、これにより設計したとしても、天端における消波ブロックの2個並びは確保できるものと認められた。
そして、消波ブロックの2個並び幅にカタログ値を用いて設計したとすれば、消波工の天端幅ひいては施工断面積が小さくなって、消波ブロックの必要個数は少なくなる。
したがって、天端幅の設計については、施工の実態を反映させ、2個並び幅に各開発メーカーのカタログ値1.5〜1.8(h)を用いることなどとして、経済的な設計を行う要があると認められた。
上記により、2個並び幅を2hとして設計していた(ア)の264工事における消波工について修正計算すると、消波ブロックの製作、据付費等の積算額101億7054万余円は89億2307万余円で足りることとなり、約12億4740万円(国庫補助金相当額約8億0370万円)が低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、水産庁において、近年、施工技術が向上しているのにその実態を調査することなく、消波ブロックの2個並び幅について十分な検討・見直しを行っていなかったことなどによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、水産庁では、10年11月に、乱積工法による消波工の天端幅について、2個並びの幅についてはカタログ値を参考として定めることとする通達を発し、11年4月以降の新規事業から適用することとする処置を講じた。
(注1) 乱積工法又は整積工法 コンクリート製の消波ブロックの積上げに当たり、規則性を持たせず乱雑に積み重ねるものを乱積工法、ブロックの凹凸の形状を合わせて整然と積み重ねるものを整積工法といい、施工の目的や施工条件等により、いずれかの工法が選択される。
(注2) 北海道ほか11県 北海道、青森、岩手、石川、兵庫、島根、山口、長崎、熊本、宮崎、鹿児島、沖縄各県
(注3) 北海道ほか10県 北海道、岩手、石川、兵庫、島根、山口、長崎、熊本、宮崎、鹿児島、沖縄各県
(注4) 北海道ほか8県 北海道、青森、岩手、石川、山口、長崎、熊本、宮崎、鹿児島各県