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  • 平成9年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第5 農林水産省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

政府米の運送業務におけるトラック運賃の算定方法を運送の実態に適合するよう改善させたもの


(2) 政府米の運送業務におけるトラック運賃の算定方法を運送の実態に適合するよう改善させたもの

会計名及び科目 食糧管理特別会計 (国内米管理勘定)
(輸入食糧管理勘定)
(項)国内米管理費
(項)輸入食糧管理費
部局等の名称 食糧庁
業務の概要 北海道内において、トラックにより政府米を運送する業務
上記の業務に係るトラック運賃の支払額 10億6465万余円 (平成8、9両年度)
節減できた支払額 2億2050万円 (平成8、9両年度)

1 業務の概要

(政府米の運送)

 食糧庁では、政府米の需給操作等を目的として都道府県間又は同一都道府県内において輸送するため、政府所有食糧及び農産物等の運送要領(昭和60年食糧業第574号(買入)食糧庁長官通達)に基づき、運送業者と政府所有食糧及び農産物等運送契約(以下「運送契約」という。)を締結し、トラック、鉄道等による政府米の運送業務を委託して実施している。
 運送契約により運送業者に支払われる運送賃については、政府所有食糧及び農産物等の運送賃支払要領(昭和61年食糧業第872号(買入)食糧庁長官通達)に基づき、政府米の運送が完了した後、運送業者から提出された運送関係日報等により食糧事務所長が運送数量等を確認の上、食糧庁において毎月支払うこととなっている。

(運賃料金)

 トラックにより政府米を運送した場合の運送賃(以下「トラック運賃」という。)は、運送業者が距離制及び時間制の別に運輸省に届け出た一般貨物自動車運送事業運賃料金(以下「運賃料金」という。)によることとしている。そして、この運賃料金によれば、継続かつ反復して行う賃物の運送の契約において、あらかじめ、特定の車両のトン数を基準として運送賃を算出する場合には、実際の使用車両のトン数にかかわりなく、当該基準とした車両(以下「基準車両」という。)のトン数による運賃を適用することができることとなっている。

(基準車両の特定)

 上記のことから、食糧庁では、運送業者と運送契約を締結するに当たり、あらかじめ、10トン車(最大積載重量が10tであるトラックをいう。以下同じ。)を全食糧事務所(那覇食糧事務所を除く。以下同じ。)の基準車両として特定している。これは、食糧庁が政府運送等実態調査実施要領(平成3年食糧業第703号(買入)食糧庁長官通達)に基づき、平成7年度に行った全食糧事務所における政府米の運送に係る使用車種の調査(調査対象期間2箇月)等により、全国的に使用頻度の高い車種が10トン車であったという結果に基づいている。

(契約単価の算定)

 運送契約の締結に当たって、政府米の運送のほとんどが、距離制運賃を適用して行われており、この場合、運賃料金に定める運送距離の区分ごとに、基準車両とした10トン車の運賃を10で除するなどして運送数量1t当たりの単価(以下「契約単価」という。)を算定している。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 食糧庁では、全食糧事務所一律に10トン車を基準車両とした運賃に基づいて契約単価を算定しているが、地域によっては政府米の運送数量や道路事情等に違いがあることから、基準車両が運送の実態と適合したものとなっているかなどに着眼して検査を行った。

(検査の対象)

 札幌食糧事務所ほか7食糧事務所(注1) におけるトラックによる政府米8年度353,243t、9年度491,180tの運送について検査の対象とし、検査に当たっては、トラックによる政府米の運送のほとんどが距離制運賃を適用して行われていることから、この距離制運賃に係る運送について検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、仙台食糧事務所ほか6食糧事務所(注2) については、いずれの食糧事務所においても、使用頻度の最も高い車種は基準車両と同じ10トン車であり、また、トラック1台当たりの平均運送数量を算出してみるとおおむね10トン車に見合う数量となっていた。
 しかし、札幌食糧事務所における政府米の北海道内の運送(8年度155,673t、9年度162,937t)に係るトラック運賃のうち、距離制運賃の基本料金に係る支払額8年度4億9359万余円、9年度5億7106万余円、計10億6465万余円について、次のような事態が見受けられた。

(ア) 基準車両である10トン車の割合は、8年度20.7%、9年度17.1%となっているのに対し、最大積載重量が10tを超えるトラックの割合は、8年度73.4%、9年度73.1%と大半を占めていた。

(イ) トラック1台当たりの平均運送数量を算出してみると、8年度16.0t、9年度15.5tとなり、運賃料金に定める車種区分の16トン車に見合う数量となっていた。

 また、同食糧事務所管内を発地とするトラック運送の着地は、すべて北海道内であって、他食糧事務所管内を着地とするものはなかった。
 したがって、同食糧事務所管内における政府米のトラック運送について、10トン車を基準車両としているのは、運送の実態に適合していないことから適切とは認められず、同食糧事務所管内における契約単価の算定に当たっては、運送の実態に即した基準車両を特定し、これを適用する要があると認められた。

(節減できた運送賃)

 上記により、札幌食糧事務所管内における政府米の運送に係るトラック運賃について、基準車両を16トン車とし、その運賃に基づいて契約単価を算定して計算すると、前記の支払額を8年度約1億0230万円、9年度約1億1810万円、計約2億2050万円節減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、札幌食糧事務所管内では主として10トン車を超える車種が使用されているという実態を契約単価の算定に反映させることについて十分検討していなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、食糧庁では、10年11月に運送の実態に適合したものとなるよう運送契約を改定し、札幌食糧事務所管内においては、16トン車を基準車両とした運賃に基づいて契約単価を算定することとし、同年12月以降から行うトラック運送について適用することとする処置を講じた。

(注1)  札幌食糧事務所ほか7食糧事務所 札幌、仙台、東京、横浜、名古屋、大阪、高松、松山各食糧事務所

(注2)  仙台食糧事務所ほか6食糧事務所 仙台、東京、横浜、名古屋、大阪、高松、松山各食糧事務所