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  • 平成9年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
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  • 補助金

中小企業設備近代化資金の貸付けが不当と認められるもの


(230)−(238) 中小企業設備近代化資金の貸付けが不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)中小企業庁 (項)中小企業対策費
部局等の名称 関東、中部、九州各通商産業局
助成の根拠 中小企業近代化資金等助成法(昭和31年法律第115号)
事業主体 千葉県ほか5県
事業の内容 中小企業者に対する無利子の設備近代化資金の貸付け
貸付件数 9件(8中小企業者)
貸付金額の合計 90,170,000円
(国庫補助金相当額45,085,000円)
不当貸付金額 50,629,080円
補助の目的に沿わない国庫補助金相当額 25,314,539円

1 補助金の概要

 中小企業庁では、中小企業者の設備の近代化に必要な資金の貸付けを行う都道府県に対して、中小企業設備近代化補助金を交付している。
 都道府県は、この補助金に自己資金等を合わせて資金を造成し、設備の近代化に必要な資金の調達が困難な中小企業者に対して、設備の設置に必要と認めた資金の額の2分の1以内の額を中小企業設備近代化資金として無利子で貸し付けている。その貸付金額は50万円以上4000万円以下、償還期間は原則として5年となっている。そして、貸付けに当たっては、借主に担保を提供させ又は保証人を立てさせることとなっている。 

2 検査の結果

 この事業の実施について検査したところ、8中小企業者に対する9件90,170,000円の貸付けにおいて、借主が、設備の設置に必要な長期資金を金融機関から借り入れた後に重複して貸付けを受けたり、設備を貸付対象事業費より低額で設置したり、自らの事業の用に供していなかったりなどしていた。このため、50,629,080円の貸付けが不当と認められ、ひいては国庫補助金相当額25,314,539円が補助の目的に沿わない結果になっていると認められる。
 これを県別・貸付先別に示すと次のとおりである。


県名 貸付先 貸付対象設備 貸付年月 貸付対象事業費(同上に対する貸付金額) 貸付対象として適切でない事業費(同上に対する貸付金相当額) 補助の目的に沿わない国庫補助金相当額 摘要
(230) 千葉県 製材業者
送材装置ほか1
8.6 千円
17,000
(8,500)
千円
4,640
(2,320)
千円
1,160
低額設置

 この貸付けは、送材装置一式及び帯のこ盤1台の設置に必要な資金17,000,000円の一部として、8,500,000円を貸し付けたものである。借主は、これらの設備を貸付対象事業費どおりの額で設置したとしているが、実際は、値引きを受けて12,360,000円で設置していた。
 したがって、これらの設備の設置に対する適切な貸付金額を計算すると6,180,000円となるので、本件貸付金額との差額2,320,000円が過大な貸付けとなっている。
(231) 富山県 クリーニング業者 ドライクリーナほか2 6.11 18,156
(8,750)
5,073(2,208) 1,104 低額設置及び貸付対象外

 この貸付けは、ドライクリーナ、クーリングタワー及び毛用プレス機各1台の設置に必要な資金18,156,840円(うち貸付対象事業費分18,156,000円)の一部として、8,750,000円を貸し付けたものである。借主は、これらの設備のうちドライクリーナについては15,934,100円(うち貸付対象事業費分15,934,000円)で設置したとしているが、実際は、これより低額な13,082,545円(貸付対象事業費同額)で設置していた。また、クーリングタワー及び毛用プレス機については、2,222,740円(うち貸付対象事業費分2,222,000円)で購入し設置したとしているが、実際はリース契約により借り受けていたもので、貸付対象にならないものである。
 したがって、これらの設備の設置に対する適切な貸付金額を計算すると6,541,272円となるので、本件貸付金額との差額2,208,728円が過大な貸付けとなっている。
(232) 石川県 ねん糸業者 ねん糸機 8.2 43,938
(19,700)
35,778
(15,620)
7,810 低額設置及び貸付対象外
(233) ねん糸機 8.8 14,729
(6,628)
6,077
(2,302)
1,151 低額設置

 これらの貸付けは、ねん糸機の設置に必要な資金の一部として、平成7年度に19,700,000円、8年度に6,628,000円を同一のねん糸業者に貸し付けたものである。

(1) 7年度貸付けについて

 この貸付けは、ねん糸機4台の設置に必要な資金45,484,800円(うち貸付対象事業費分43,938,000円)の一部として、19,700,000円を貸し付けたものである。借主は、これらの設備のうち2台については14,481,800円(うち貸付対象事業費分14,480,000円)で設置したとしているが、この額は契約額を水増ししたもので、実際は8,160,000円(貸付対象事業費同額)で設置していた。また、残りの2台については、31,003,000円(うち貸付対象事業費分29,458,000円)で設置したとしているが、実際は当初から他の同業者の工場に納入され、その者が所有し、借主の事業の用に供していなかったもので、貸付対象にならないものである。
 したがって、これらの設備の設置に対する適切な貸付金額を計算すると4,080,000円となるので、本件貸付金額との差額15,620,000円が過大な貸付けとなっている。

(2) 8年度貸付けについて

 この貸付けは、ねん糸機1台の設置に必要な資金15,759,000円(うち貸付対象事業費分14,729,000円)の一部として、6,628,000円を貸し付けたものである。借主は、この設備を15,759,000円で設置したとしているが、この額は契約額を水増ししたもので、実際は9,167,000円(うち貸付対象事業費分8,652,000円)で設置していた。
 したがって、この設備の設置に対する適切な貸付金額を計算すると4,326,000円となるので、本件貸付金額との差額2,302,000円が過大な貸付けとなっている。

(234) 石川県 ねん糸業者 ねん糸機 8.8 11,285
(5,000)
6,495
(2,605)
1,302 低額設置

 この貸付けは、ねん糸機1台の設置に必要な資金11,285,000円の一部として、5,000,000円を貸し付けたものである。借主は、この設備を貸付対象事業費どおりの額で設置したとしているが、この額は契約額を水増ししたもので、実際は4,789,500円で設置していた。
 したがって、この設備の設置に対する適切な貸付金額を計算すると2,394,750円となるので、本件貸付金額との差額2,605,250円が過大な貸付けとなっている。
(235) ねん糸業者 ねん糸機 8.10 15,450
(6,952)
7,364
(2,909)
1,454 低額設置

 この貸付けは、ねん糸機1台の設置に必要な資金15,450,000円の一部として、6,952,000円を貸し付けたものである。借主は、この設備を貸付対象事業費どおりの額で設置したとしているが、この額は契約額を水増ししたもので、実際は8,085,500円で設置していた。
 したがって、この設備の設置に対する適切な貸付金額を計算すると4,042,750円となるので、本件貸付金額との差額2,909,250円が過大な貸付けとなっている。

(236) 長野県 輸送用機械器具製造業者 自動車検査設備ほか1 7.10 25,327
(12,500)
22,722
(9,894)
4,947 重複融資

 この貸付けは、自動車検査設備一式及び暖房設備一式の設置に必要な資金25,327,700円の一部として、12,500,000円を貸し付けたものである。しかし、借主は、この貸付けを受ける前に、本件設備を含む設備等の設置のために長野県自動車整備商工組合から長期資金27,700,000円を借り入れており、本件資金と合わせて40,200,000円を借り入れていた。一方、借主が取得した設備等の総額は、本件設備を含めて30,305,484円であったことから、その差額9,894,516円については重複して貸し付けられていた。
 したがって、本件貸付金額のうち、上記の差額分が過大な貸付けとなっている。

(237) 福岡県 産業廃棄物処理業者 自走式クラッシャー 7.3 28,840
(14,420)
19,469
(5,049)
2,524 重複融資

 この貸付けは、自走式クラッシャー(注) 1台の購入に必要な資金28,840,000円の一部として、14,420,000円を貸し付けたものである。しかし、借主は、この貸付けを受ける前に、本件設備を含む機械設備等の購入のために国民金融公庫等から長期資金計34,420,000円を借り入れており、本件資金と合わせて48,840,000円を借り入れていた。一方、借主が取得した機械設備等の総額は、本件設備を含めて43,790,664円であったことから、その差額5,049,336円については重複して貸し付けられていた。
 したがって、本件貸付金額のうち、上記の差額分が過大な貸付けとなっている。
(注)  自走式クラッシャー 破砕機の一種で、工事現場においてコンクリート、アスファルト等の破砕に用いられるもの
(238) 鹿児島県 建設業者 掘削機ほか1 6.11 15,450
(7,720)
15,450
(7,720)
3,860 債権管理不適切

 この貸付けは、掘削機2台及びトラクタ1台の購入に必要な資金15,450,000円の一部として、7,720,000円を貸し付けたものである。県は、貸付けに当たって、貸付金の償還に不安があったので、債権保全のために借主から代表者名義の土地を担保として提供させることとしていた。しかし、県は、この土地に抵当権を設定せずに貸付金全額を交付していた。そして、平成7年2月、借主が手形不渡事故で事実上倒産し、貸付対象設備が県に無断で処分されるなどしていた。
 したがって、本件貸付けは、債権保全の措置が適切を欠き、貸付金全額の回収が困難となっている。
(230)-(238) の計

190,175
(90,170)
123,070
(50,629)
25,314