会計名及び科目 | 一般会計 港湾整備特別会計 |
(組織)運輸本省 (項)海岸事業費 (港湾整備勘定) (項)港湾事業費 |
部局等の名称 | 第二、第三、第五各港湾建設局 | |
補助の根拠 | (1) 港湾法(昭和25年法律第218号)、海岸法(昭和31年法律第101号) (2) 予算補助 |
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事業主体 | 県7、市1、計8事業主体 | |
補助事業 | 青森県青森港ほか20港の港湾整備事業等 | |
補助事業の概要 | 港湾施設及び海岸保全施設の整備を行う事業 | |
事業費 | 53億7667万余円(平成8、9両年度) | |
上記に対する国庫補助金交付額 | 23億5427万余円 | |
吸出防止材の材料費の積算額 | 1億5768万余円(平成8、9両年度) | |
節減できた吸出防止材の材料費 | 8200万円(平成8、9両年度) | |
上記に対する国庫補助金相当額 | 3690万円 |
1 補助事業の概要
運輸省では、港湾施設及び海岸保全施設の整備を計画的に推進するため、港湾整備事業等を実施する地方公共団体等の港湾管理者及び海岸管理者(以下「事業主体」という。)に対して、毎年度国庫補助金を交付している。
そして、青森県ほか7事業主体(注1)
では、平成8、9両年度に、青森港ほか20港において、青森港改修岸壁(−4.5m)工事ほか38工事を、工事費総額53億7667万余円(国庫補助金23億5427万余円)で施行している。
上記の各工事は、岸壁、護岸等(以下「岸壁等」という。)を築造するもので、基礎捨石上に壁体としてケーソン等を据付けた後、その背後に壁体に対する土圧や水圧を軽減するため裏込石を投入し、更にその裏込石の背後に裏埋め土砂を投入している。そして、裏込石と裏埋め土砂との間には、裏込石の間隙から裏埋め土砂が流出して岸壁等の背後の地盤が沈下することなどを防ぐため、吸出防止材を敷設している。(参考図参照)
各事業主体では、本件各工事で使用する吸出防止材として、ポリエステル製不織布(注2)
、ポリエステル製織布又は塩化ビニール製マットを選定し、設計している。
そして、本件39工事における吸出防止材(55,525m2
)の材料費を、計1億5768万余円と算定していた。
2 検査の結果
各事業主体が本件各工事で選定した吸出防止材は、その材質及び規格が区々となっていることから、国の直轄事業で使用されている吸出防止材と比較するなどして、設計及び施工条件に適合し、かつ、経済的なものとなっているかという点に着眼して検査した。
国の直轄事業及び各事業主体の補助事業で使用されている吸出防止材について、その材質、規格、価格等を検査したところ、次のとおりとなっていた。
(1) 国の直轄事業で使用されている吸出防止材について
第四港湾建設局では、3年度から5年度にかけて、一般的な岸壁等を築造する際の設計及び施工条件の下で、ポリエステル製不織布及びポリエステル製織布を吸出防止材として使用した場合の敷設後の破損状況等に着目して、実証試験等を行っている。
そして、その結果に基づき、同港湾建設局が、6年9月に、吸出防止材の材質及び規格について、材質はポリエステル製不織布とし、規格は、厚さ5mm以上、引張強度90 kgf/5cm以上等(以下、これらの材質及び規格を「四建仕様」という。)と定めたことから、7年度から、順次、他の港湾建設局等においても、この四建仕様が採用されていた。
(2) 各事業主体の補助事業で使用されている吸出防止材について
前記のとおり、各事業主体では、従来からのそれぞれの設計例により、吸出防止材として、ポリエステル製不織布、ポリエステル製織布又は塩化ビニール製マットを選定している。そして、その材質、規格及び価格は、次のとおりとなっていた。
(ア) ポリエステル製不織布及びポリエステル製織布については、四建仕様のものに比べ、厚さが厚く引張強度が2倍以上のものもあるなど、必要以上に高規格なものとなっていた。一方、価格も四建仕様のものと比べ、1.3倍程度から2.8倍程度高価なものとなっていた。
(イ) 「港湾の施設の技術上の基準・同解説」(運輸省港湾局監修)によると、裏込石や吸出防止材等の透水性が悪い場合には、岸壁等の壁体の前後に水位差が生じるため、透水性が悪いほどケーソン等の背後に作用する水圧が大きくなるとされている。このことから、塩化ビニール製マットについては、透水性がない材質であることから、吸出防止材としては好ましくないものであった。 一方、価格は、四建仕様のものと比べ、2.5倍程度高価なものとなっていた。
また、本件各工事で築造する岸壁等は一般的なものであり、施工条件についても、前記の第四港湾建設局の実証試験等における施工条件とほぼ同等と認められることから、本件各工事における吸出防止材について、四建仕様のものを使用することとしても特段の支障はないものと認められた。
したがって、各事業主体が使用する吸出防止材については、四建仕様を満たした上で、より安価な吸出防止材を選定することとし、もって経済的な設計を行う要があると認められた。
上記により、本件各工事において使用していた吸出防止材について、四建仕様を満たした上で、より安価な吸出防止材を選定することとして設計したとすれば、吸出防止材の材料費は、7560万余円となり、約8200万円(国庫補助金相当額約3690万円)節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、各事業主体において、吸出防止材の選定に当たり、仕様と経済性について十分な検討を行わないまま設計してきたことにもよるが、運輸省において、吸出防止材の材質及び規格について、明確に示していなかったこと及び事業主体に対して十分な指導を行っていなかったことによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、運輸省では、10年10月に、岸壁等の築造工事に使用する吸出防止材について、より経済的なものを選定するようその仕様を明確にし、事業主体を指導することとする処置を講じた。
(注1) 青森県ほか7事業主体 青森、茨城、神奈川、静岡、兵庫、鳥取、高知各県、横浜市
(注2) 不織布 縦糸、横糸を織ったものではなく、繊維の層をとげのついた針で突き刺すことにより、繊維どうしを絡め合わせたもの