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  • 平成9年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第7 運輸省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

気象観測データ等の伝送に利用する高速専用回線の契約に当たり、長期継続利用割引制度を活用して使用料の節減を図るよう改善させたもの


(4) 気象観測データ等の伝送に利用する高速専用回線の契約に当たり、長期継続利用割引制度を活用して使用料の節減を図るよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)気象庁
空港整備特別会計
(項)気象官署
(項)空港等維持運営費
部局等の名称 気象庁、東京管区気象台、気象大学校
契約の概要 気象官署で観測した気象観測データ等を伝送するために日本電信電話株式会社から高速専用回線を借り受けるもの
契約の相手方 日本電信電話株式会社
支払額 4億0851万余円 (平成8、9両年度)
節減できた使用料 1410万円 (平成8、9両年度)

1 気象通信網等の概要

(気象通信網等と通信回線)

 気象庁では、管区気象台、地方気象台、測候所等の気象官署で観測した気象データを、本庁に設置したスーパーコンピュータを用いて解析するなどし、その結果を予報及び警報として発表するなどの気象業務等を実施している。
 そして、同庁では、これらの気象官署からのデータを収集・配信するため、全国を管区気象台を単位とする6ブロック(注) に分けて、コンピュータネットワークによる気象通信網を構築している。これらの各ブロック内における気象通信網(Local Automated Data Editing and Switching System。以下「L−ADESS」という。)は、管区気象台及び管内の地方気象台等にコンピュータシステム及びその端末システムを設置し、これらの間を日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)の通信回線で接続することにより構成されている(参考図参照)
 また、地震情報については、地震をいち早く検知するため、管区内の観測点と管区気象台とを結ぶ津波地震早期検知網等の整備が平成5年度から進められており、これらの通信にもNTTの通信回線を利用することとしている。

(通信回線の高速化)

 これらに利用するNTTの通信回線は、伝送されるデータの量等に応じて、一般専用サービスのためのアナログ回線(以下「一般専用回線」という。)及び高速ディジタル伝送サービスのための回線(以下「高速専用回線」という。)をそれぞれ利用することとしている。
 そして、同庁では、通信回線の利用に当たっては、伝送するデータ量の増大に対処させるため、5年度に津波地震早期検知網を整備する際、その基幹の通信回線(NTT局舎間及びこれらと管区気象台との間の回線)は、L−ADESSの回線を高速専用回線に切り替えて共用することとした。また、L−ADESSのコンピュータシステム等は一定の間隔で更新されているが、その8年度以降の更新に当たっては、基幹以外の回線についても一般専用回線から高速専用回線に切り替えることとした。さらに、8年度に国立大学等の気象庁以外の政府機関等が収集している地震情報を一元的に収集するため、これらの機関との間の通信回線を整備することとしたが、これらの回線についても高速専用回線を利用することとした。
 そして、これらの整備事業の進ちょくにより、同庁が利用している高速専用回線は、4年度で11回線であったものが、8年度で102回線、9年度で127回線と、逐年増加してきており、その8、9両年度の使用料は計4億0851万余円となっている。

(高速専用回線の割引制度)

 高速専用回線の契約には、長期継続利用割引、高額利用割引などの各種の割引制度が設けられている。このうち、長期継続利用割引は、3年3月に導入されたもので、高速専用回線を3年間継続して利用する旨を、利用者がNTTに申し出ることにより適用され、使用料のうち基本額の5%が減額されることとなっている。その後、同割引は6年2月に拡大され、6年間継続して利用する場合は、基本額の11%が減額されることとなっている。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 近年、L−ADESSのコンピュータシステムの更新等に伴い高速専用回線の利用が増加し、高速専用回線の使用料は多額に上っている。そこで、高速専用回線の契約は、各種の割引制度を活用した経済的なものとなっているかという点に着眼して検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、気象庁では、利用しているすべての高速専用回線について長期継続利用割引の適用を受けていなかった。同庁では、この理由を、前記のように、津波地震早期検知網とL−ADESSの基幹の回線の共用化、気象庁以外の地震情報の一元化を実施しており、更に、全国の地震観測点の整備が予定されていて、高速専用回線の利用形態に変更が予想されたためとしていた。
 しかし、通信回線は個々の回線ごとに契約するものであり、それぞれの回線について利用開始時点において、その後の上記各事業の整備計画の有無や実施年度及びその利用目的を十分検討すれば、長期継続利用の条件である3年又は6年間、その伝送速度の変更や回線の切替えなどの利用形態の変更がないと予測することが可能である。
 そこで、本院が上記の127回線について検査した結果、次のとおり長期継続利用割引の適用を受けることができたと認められる回線が109回線見受けられた。

(ア) L−ADESSのコンピュータシステム等が更新された後、次の更新時期までには、3年又は6年以上の期間があるため回線の利用形態を変更する見込みがなく、割引の適用を受けることができたもの

100回線

(イ) 回線の利用目的が地震情報の収集などに限定されているため、6年間にわたって回線の利用形態を変更する見込みがなく、割引の適用を受けることができたもの

9回線

 したがって、これらの回線については、NTTに対して3年又は6年間の長期継続利用の申し出を行い、基本額の割引の適用を受けて、高速専用回線の使用料の節減を図る要があると認められた。

(節減できた使用料)

 上記の109回線について、3年又は6年間の長期継続利用割引を適用して修正計算すると、高速専用回線の8、9両年度の使用料は、計約1410万円節減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、高速専用回線の契約に当たり、個々の回線ごとに具体的な整備計画や利用目的などを反映した経済的な契約方法についての検討が十分でなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、気象庁では、次のような処置を講じた。
 利用中の高速専用回線のうち長期継続利用割引の適用ができると認められた回線については、NTTに対し申し出を行い、10年8月から割引の適用を受けることとした。また、今後整備する高速専用回線については、個々の回線の具体的な整備計画や利用目的などを検討して経済的な契約を行うこととした。

(注)  管区気象台を単位とする6ブロック 札幌、仙台、東京、大阪、福岡の各管区気象台管内及び沖縄気象台管内

(参考図)

(参考図)