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  • 平成9年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
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  • 不当事項|
  • 医療費

労働者災害補償保健の療養の給付に要する診療費の支払が適正でなかったもの


(271) 労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払が適正でなかったもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(労災勘定) (項)保険給付費
部局等の名称 労働本省(支出庁)
北海道労働基準局ほか9労働基準局(審査庁)
不適正な支払となっていた労災診療費 入院料、手術料、処置料等
支払の相手方 226医療機関
不適正支払額 46,944,998円

1 保険給付の概要

(労働者災害補償保険)

 労働者災害補償保険は、工場、事務所、商店等に雇われる労働者の業務上の事由又は通勤による負傷、疾病等に対し療養の給付等の保険給付を行うほか、労働福祉事業を行う保険である。

(療養の給付に要する診療費の支払)

 療養の給付は、保険給付の一環として、都道府県労働基準局長の指定する病院若しくは診療所又は労働福祉事業で設置された病院において、負傷又は発病した労働者(以下「傷病労働者」という。)に対し診察、処置、手術等(以下「診療」という。)を行うものである。そして、診療を行ったこれらの医療機関は、都道府県労働基準局に対して診療に要した費用(以下「労災診療費」という。)を請求することとなっており、都道府県労働基準局では請求の内容を審査し、その結果に基づき、労働本省において労災診療費を支払うこととなっている。
 労災診療費は、労働省労働基準局長が定めた「労災診療費算定基準について」(昭和51年基発第72号。以下「算定基準」という。)に基づき算定することとなっている。この算定基準によれば、労災診療費は、労災診療の特殊性などを考慮して、〔1〕 健康保険法(大正11年法律第70号)に基づく診療報酬点数表の点数(以下「健保点数」という。)に12円(法人税等が非課税となっている公立病院等については11円50銭)を乗じて算定すること、〔2〕 初診料、再診料等特定の診療項目については、健保点数とは異なる点数又は金額を別に定めこれにより算定することとなっている。

2 検査の結果

(検査の対象)

 北海道労働基準局ほか12労働基準局において、労災診療費の請求に対する支払の適否について検査した。

(不適正支払の事態)

 検査したところ、北海道労働基準局ほか9労働基準局において、入院料、手術料、処置料、検査料、リハビリテーション料等の労災診療費が不適正に支払われていたものが、226医療機関について46,944,998円あった。これは、上記の10労働基準局において、医療機関が労災診療費を誤って算定し請求していたのに、これに対する審査が十分でないまま支払額を決定していたことによるものである。

(主な態様)

 上記の労災診療費が不適正に支払われていた事態について、その主な態様を診療報酬の別に示すと次のとおりである。

ア 入院料に関するもの

 傷病労働者が、医師又は看護婦の常時監視を要する症状であるなどの算定要件に該当する場合は、入院室料加算を算定できることとなっている。その額は、1日につき個室9,000円(都市部は10,000円)、2人部屋4,500円(同5,000円)を限度(以下、この額を「上限金額」という。)として、各医療機関が表示している金額で算定することとなっている。
 しかし、北海道労働基準局ほか9労働基準局において、入院料が56医療機関に対し351件、21,819,228円不適正に支払われていた。その主なものは次のとおりである。

(ア) 入院室料加算の算定要件に該当しない傷病労働者について、入院室料加算を算定していた。

(イ) 入院室料加算を医療機関が表示している金額によらず、上限金額により算定していた。

イ 手術料に関するもの

 手術料は、創傷処理、植皮術等の区分ごとの所定点数により算定することとなっている。そして、一回の皮切により手術を行い得る範囲(以下「同一手術野」という。)の手術につき、2以上の手術を同時に行った場合の手術料は、主たる手術の所定点数のみにより算定することとなっている。
 しかし、北海道労働基準局ほか9労働基準局において、手術料が128医療機関に対し244件、18,351,350円不適正に支払われていた。その主なものは次のとおりである。

(ア) 本来算定すべき区分の所定点数によらず、異なる区分のより高い所定点数により算定していた。

(イ) 同一手術野につき2以上の手術を同時に行っているのに主たる手術の所定点数によらず、それぞれの手術の所定点数により算定していた。

ウ 処置料に関するもの

 マッサージ等の消炎鎮痛処置を行った場合は、負傷にあっては受傷部位ごとに、疾病にあっては1局所(全身を5局所に分け、頭部・胴体、右上肢、左上肢、右下肢及び左下肢をそれぞれ1局所とする。)ごとに、1日につきそれぞれ所定点数を算定することとなっている。また、牽引療法と理学療法を併せて行った場合には、牽引療法の所定点数は算定しないで理学療法の所定点数のみにより算定することとなっている。
 しかし、北海道労働基準局ほか7労働基準局において、処置料が35医療機関に対し174件、2,093,384円不適正に支払われていた。その主なものは次のとおりである。

(ア) 疾病に伴う消炎鎮痛処置を同一局所に行っているのに1局所の所定点数によらず、それぞれの傷病の部位ごとの所定点数により算定していた。

(イ) 牽引療法と理学療法を併せて行っているのに理学療法の所定点数のみによらず、両方の所定点数により算定していた。

(都道府県労働基準局別の内訳)

上記の不適正支払額を都道府県労働基準局別に示すと次のとおりである。

労働基準局名 医療機関数 不適正支払件数 不適正支払額

北海道労働基準局

37

698
千円
3,394
岩 手労働基準局 8 40 1,058
茨 城労働基準局 9 59 1,668
栃 木労働基準局 13 127 8,940
東 京労働基準局 52 155 8,433
愛 知労働基準局 30 184 6,278
大 阪労働基準局 22 87 6,428
兵 庫労働基準局 28 149 3,947
島 根労働基準局 8 53 1,046
福 岡労働基準局 19 132 5,749
226 1,684 46,944