会計名及び科目 | 一般会計 (組織)建設本省 (項)都市計画事業費 |
部局等の名称 | 群馬県ほか5県 |
補助の根拠 | 下水道法(昭和33年法律第79号) |
事業主体 | 市34、町18、組合1、計53事業主体 |
補助事業 | 桐生市公共下水道事業ほか55事業 |
補助事業の概要 | 下水道整備事業の一環として、雨水管、汚水管等の下水道管きょを布設するなどの事業 |
事業費 | 162億5668万余円 | (平成8、9両年度) |
上記に対する国庫補助金交付額 | 77億6670万余円 | |
管径250mm汚水管(延長105,556m)の材料費 | 3億0739万余円 | (平成8、9両年度) |
節減できた汚水管の材料費 | 9020万円 | (平成8、9両年度) |
上記に対する国庫補助金相当額 | 4510万円 |
1 補助事業の概要
建設省では、国庫補助事業により下水道整備事業を実施する地方公共団体(以下「事業主体」という。)に対し、毎年度多額の補助金を交付している。
そして、群馬県ほか5県(注1)
の管内市町等の53事業主体では、下水道整備事業の一環として、平成8、9両年度に下水道管きょを布設する工事を347工事(工事費総額162億5668万余円、国庫補助金77億6670万余円)施行している。
上記の各工事は、開削工法等により、管径250mmから600mm硬質塩化ビニル管、遠心力鉄筋コンクリート管等の下水道管きょを布設するなどのものである。
事業主体では、下水道管きょの設計を社団法人日本下水道協会が建設省の監修により制定した「下水道施設計画・設計指針と解説」(以下「設計指針」という。)に準拠して行うこととしている。
下水道管きょには、雨水を排除する雨水管と汚水を排除する汚水管等がある。このうち、汚水管の設計の手順は、設計指針において次のとおり定められている。
(ア) おおむね20年後における下水道計画区域内の人口、住宅団地の造成など各種開発行為による土地利用形態の変化等を予測する。
(イ) 上記(ア)の予測を基に計画区域内の生活汚水、工場排水等の量を推定し、これにより計画時間最大汚水量(注2) (以下「最大汚水量」という。)を決定する。
(ウ) 計画区域内の最大汚水量を基に、これを流下させるために必要となる汚水管の管径を決定する。その際、余裕率(管径200mmから600mmの汚水管の場合、最大汚水量に対し約100%)を確保できるよう流量計算を行うこととなっている。そして、この計算において必要となる管径が200mm未満となる場合は、汚水管の維持管理等に支障を生じないよう最小管径を200mmとすることとなっている。
前記53事業主体では、設計指針に準拠して最大汚水量を算定しているが、前記各工事において施工した汚水管のうち延長計105,556mについては、その最小管径を250mmと決定し、その材料費を計3億0739万余円(国庫補助金相当額1億5369万余円)としていた。
2 検査の結果
前記の汚水管の最小管径の決定が、設計指針に準拠し適切で経済的なものとなっているかという点に着眼して検査した。
検査したところ、汚水管の最小管径の決定が次のとおり適切でなかった。
すなわち、前記53事業主体が最小管径250mmで施工した汚水管については、流量計算上の管径が200mm以下となるが、その最小管径を一律に250mmとして設計していた。
このように設計している理由は、事業主体の説明によれば、開発行為が局所的又は突発的になされた場合、その発生箇所が特定できず、想定される事態も複雑で予測が難しいため、これによる汚水量の増加に対して対応する必要があるとしている。
しかし、前記53事業主体が上記のように汚水管の最小管径を250mmと決定したことについては具体的な根拠がなく、設計指針の趣旨を踏まえると次のことから適切でないと認められる。
(ア) 発生箇所が特定できないということに対しては、その汚水量は、最大汚水量算定時に計画区域全体に割り振って見込むこととなっている。
(イ) 想定される事態が複雑で予測が難しいということに対しては、汚水管の管径に余裕を見込むこととなっている。
すなわち、前記管径250mmの汚水管については、最小管径を200mmとしても最大汚水量に対し100%以上の余裕率を確保でき、このうち500%以上の余裕率が確保できるものが、これら汚水管の72%もあるなど十分な余裕が見込まれている。
したがって、前記53事業主体が本件各工事で施工した管径250mmの汚水管の設計については、設計指針に準拠して最小管径を適切に決定し、より経済的な設計を行う要があると認められた。
現に、設計指針に準拠し、汚水管の最小管径を200mmとして設計している事業主体が相当数見受けられた。
上記により、前記53事業主体が本件各工事で一律に250mmとしていた汚水管の管径を200mmとして設計したとすれば、これら汚水管の材料費は2億1698万余円(国庫補助金相当額1億0849万余円)となり、前記汚水管の材料費を約9020万円(国庫補助金相当額約4510万円)節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、本件各事業主体において、設計指針の理解が十分でなかったことにもよるが、建設省において、事業主体に対し、設計指針の趣旨を踏まえた最小管径の決定方法を周知徹底するなどの措置を十分講じていなかったことによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、建設省では、10年11月に、都道府県等に対して通知を発し、下水道の汚水管の設計に当たっては、設計指針の趣旨を踏まえてその最小管径の決定を適切に行うこととする処置を講じた。
(注1) 群馬県ほか5県 群馬、埼玉、神奈川、富山、広島、山口各県
(注2) 計画時間最大汚水量 年間を通じて汚水量がピークとなる時間帯の1時間当たりの量を1日当たりに換算したもの