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  • 平成9年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第10 建設省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

河川改修事業等の護岸の根入れ部に使用する材料の選定を適切に行い、経済的な設計を行うよう改善させたもの


(3) 河川改修事業等の護岸の根入れ部に使用する材料の選定を適切に行い、経済的な設計を行うよう改善させたもの

会計名及び科目 治水特別会計(治水勘定) (項)河川事業費
(項)河川総合開発事業費
部局等の名称 栃木県ほか6府県
補助の根拠 河川法(昭和39年法律第167号)
事業主体 府1、県5、市2、計8事業主体
補助事業 河川事業等
補助事業の概要  河川改修事業等の一環として、景観等への配慮から、自然石を使用した護岸を築造するなどの工事
事業費 82億7753万余円 (平成7年度〜9年度)
上記に対する国庫補助金交付額 40億7166万余円
護岸根入れ部の工事費 3億1227万余円 (平成7年度〜9年度)
節減できた工事費 1億1910万円 (平成7年度〜9年度)
上記に対する国庫補助金相当額 5860万円

1 補助事業の概要

(護岸工事の概要)

 建設省では、河川の洪水や高潮等による災害を防止するなどのため、河川改修事業等を実施する地方公共団体(以下「事業主体」という。)に対して、毎年度国庫補助金を交付している。
 そして、栃木県ほか7事業主体(注1) では、平成7年度から9年度までの間に、大谷川河川総合開発工事ほか78工事を、工事費総額82億7753万余円(国庫補助金40億7166万余円)で施行している。
 上記の各工事は、堤防、護岸等を築造するなどの工事で、このうち護岸工事は、いずれも、コンクリート造の基礎工を施工した後、景観等への配慮から、護岸で従来から使用されているコンクリートブロック(以下「普通ブロック」という。)に代えて、玉石などの自然石を使用して法覆(のりおおい)工を施工するものである(参考図1参照)

(護岸の根入れの設計及び積算)

 護岸の基礎工は、「建設省河川砂防技術基準(案)」(社団法人日本河川協会編)等に従い、洪水等による流水の作用によって生ずる洗掘等を考慮して、護岸を支持できる構造とするため、基礎の天端を計画河床面(注2) (現況河床面が計画河床面より低い場合は現況河床面。以下同じ。)等より低い安全な位置に埋め込むものとされている。このため、本件各工事においては、計画河床面等から基礎の天端までの埋め込む深さを1.0mから1.5mとしている。これに伴い自然石を使用して法覆工を施工した護岸の一部が地中に埋め込まれることとなる(以下、この地中に埋め込まれる部分を「根入れ部」という。)。
 そして、本件79工事において、自然石を使用した護岸の根入れ部(これに係る面積計11,089m2 )の直接工事費を計3億1227万余円(国庫補助金相当額1億5356万余円)と算定していた。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 近年、護岸の法覆工に使用する材料については、景観等への配慮から、護岸で従来から使用されている普通ブロックに代えて、自然石を使用する施工例が増えてきている。そこで、これらの護岸が、適切に設計されているかという点に着眼して検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような状況となっていた。

(1) 護岸の根入れ部の施工箇所について

 本件各工事の護岸は、いずれも、河床勾配が緩やかであるなど河床が安定しているため、流水等の作用によって生ずる洗掘のおそれが極めて少ないことから、通常、護岸の根入れ部が露出することによる景観上の問題は生じない箇所であった。

(2) 護岸の法覆工に使用する材料について

 普通ブロックは、工場で厳格な品質管理の下で大量に製作されるコンクリート二次製品で、材質及び規格が均一で施工性が良く、従来から護岸の法覆工の材料として多数使用されており、この普通ブロックを護岸の根入れ部に使用したとしても、何ら問題は生じないものである。そして、この普通ブロックは、自然石に比べ入手が容易であり、工事費も一般的に低廉である。
 したがって、本件各工事の護岸の根入れ部については、自然石に代えて普通ブロックを選定することとして経済的な設計を行う要があると認められた。
 現に、自然石を使用している他の同種工事において、上記と同様、護岸の根入れ部に普通ブロックを使用することとして設計されている施工例(参考図2参照) が多数見受けられたが、特に問題は生じていなかった。

(節減できた工事費)

 上記により、本件各工事における護岸の根入れ部について、普通ブロックを使用することとして設計したとすれば、根入れ部の直接工事費は1億9315万余円となり、約1億1910万円(国庫補助金相当額約5860万円)節減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、各事業主体において、根入れ部の設計に当たり、経済性に対する配慮が十分でなかったことにもよるが、建設省において、根入れ部について経済的な設計をするための指針を示していなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、建設省では、10年11月に、景観等に配慮して自然石を使用する護岸で、河床が安定しているなど景観上の問題が生じない箇所に設置される工事については、根入れ部に使用する材料の選定を適切に行い、経済的な設計を行うよう、その取扱いを明確にし、事業主体を指導する処置を講じた。

(注1)  栃木県ほか7事業主体 京都府、栃木、山梨、滋賀、広島、鹿児島各県、名古屋、守山両市

(注2)  計画河床面 河川改修計画上で設定された河道の底面

(注2)計画河床面河川改修計画上で設定された河道の底面