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  • 平成9年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第3 首都高速道路公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

料金収受業務委託契約における厚生年金保険料等の事業主負担額の積算について、雇用の実態を反映させるよう改善させたもの


料金収受業務委託契約における厚生年金保険料等の事業主負担額の積算について、雇用の実態を反映させるよう改善させたもの

科目 (項)業務委託費
部局等の名称 首都高速道路公団本社
契約名 料金収受事務委託(その1)ほか18契約
契約の概要 道路の維持管理業務の一環として、高速道路における通行車両から通行料金を現金又は回数券等で収受などするもの
契約の相手方 新東ハイウェイ・サービス株式会社ほか18会社
契約 平成9年5月 随意契約
支払額 147億4927万余円
厚生年金保険料等の事業主負担分の積算額 12億6997万余円
低減できた積算額 2億1450万円

1 契約の概要

(委託契約の概要)

 首都高速道路公団(以下「公団」という。)では、道路の維持管理業務の一環として、公団が管理する高速道路における通行車両から通行料金を現金又は回数券等で収受するなどの業務を行っており、平成9年度では、計19契約(総額147億4927万余円)により、19会社に委託して実施している。

(料金収受業務委託費の積算の基準)

 料金収受業務委託費の積算に当たっては、公団本社が毎年度制定する「首都高速道路料金収受事務委託費積算基準」(以下「積算基準」という。)に基づき算定している。
 積算基準では、上記の業務を行うために必要な経費を人件費、現場管理費及び一般管理費に区分している。このうち人件費は、基本給、諸手当及び法定福利費から構成されており、さらに、法定福利費は、厚生年金保険料、雇用保険料、児童手当拠出金等の事業主負担額を算定することとなっている。

(法定福利費の積算)

 本件各契約における法定福利費は、関係法令(注) 及び積算基準に基づき、基本給と諸手当との合計額に、法定福利費の各保険料率等を合算した率を乗じるなどして、計12億6997万余円と積算していた。
 上記の法定福利費のうち、厚生年金保険料、雇用保険料及び児童手当拠出金については次のように保険料率等が定められている。

〔1〕  厚生年金保険料

 厚生年金保険料の事業主負担額については、基本給及び諸手当(特別手当を除く。)の合計額に対し、保険料率1000分の86.75、特別手当の額に対し、保険料率1000分の5

〔2〕  雇用保険料

 雇用保険料の事業主負担額については、基本給及び諸手当の合計額に対し、保険料率1000分の7.5

〔3〕  児童手当拠出金

 児童手当拠出金の事業主負担額については、基本給及び諸手当(特別手当を除く。)の合計額に対し、拠出金率1000分の1.1

(注)  関係法令 厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)、労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和44年法律第84号)、雇用保険法(昭和49年法律第116号)、児童手当法(昭和46年法律第73号)等

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 料金収受業務の従事者には高年齢者が多数見受けられている。そして、関係法令により、高年齢者については、その保険料等が徴収の対象外となったり、免除されたりする場合がある。
 そこで、法定福利費の積算について、雇用の実態を反映したものとなっているかという点に着眼して検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような状況となっていた。
 厚生年金保険料等については、関係法令により、次のとおり、一定の年齢以上の者は保険料等の徴収の対象外となっている。

〔1〕  厚生年金保険料については、65歳以上の者は被保険者の資格を喪失し、保険料徴収の対象外となる。

〔2〕  雇用保険料については、4月1日において64歳以上の者については保険料が免除される。

〔3〕  児童手当拠出金については、65歳以上の者は拠出金徴収の対象外となる。

 しかし、料金収受業務の従事者には高年齢者が多数見受けられるのに、公団では、料金収受業務従事者の年齢構成について把握していなかった。
 そこで、料金収受業務に実際に従事した者の9年4月1日現在の年齢構成について調査したところ、64歳以上の者の割合は31.3%、また、65歳以上の者の割合は25.6%となっていた。
 したがって、厚生年金保険料等の事業主負担額の積算に当たっては、雇用の実態を反映させ、保険料等の徴収対象者に係る分を計上すれば足りると認められた。

(低減できた積算額)

 上記により、厚生年金保険料等について、保険料等の徴収対象者の割合を乗じることとして修正計算すると、10億5538万余円となり、前記の積算額を約2億1450万円低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、厚生年金保険料等の事業主負担額の積算に当たり、雇用の実態を積算基準に反映させる配慮に欠けていたことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、公団では、10年10月に、厚生年金保険料、雇用保険料及び児童手当拠出金の事業主負担額の積算に当たり、雇用の実態を反映した積算となるよう積算基準を改め、同年11月以降の委託契約に適用することとする処置を講じた。