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  • 平成9年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第4 阪神高速道路公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

料金収受業務委託契約における厚生年金保険料等の事業主負担額の積算について、雇用の実態を反映させるよう改善させたもの


料金収受業務委託契約における厚生年金保険料等の事業主負担額の積算について、雇用の実態を反映させるよう改善させたもの

科目 (項)業務管理費
部局等の名称 阪神高速道路公団本社
契約名 平成9年度阪神高速道路の料金収受業務(その1)ほか14契約
契約の概要 道路の維持管理業務の一環として、高速道路における通行車両から通行料金を現金又は回数券等で収受などするもの
契約の相手方 大阪道路開発株式会社ほか11会社
契約 平成9年6月、7月 指名競争契約、随意契約
支払額 121億6839万余円
厚生年金保険料及び児童手当拠出金の事業主負担分の積算額 6億3164万余円
低減できた積算額 1億7050万円

1 契約の概要

(委託契約の概要)

 阪神高速道路公団(以下「公団」という。)では、道路の維持管理業務の一環として、公団が管理する高速道路における通行車両から通行料金を現金又は回数券等で収受するなどの業務を行っており、平成9年度では、計15契約(総額121億6839万余円)により、12会社に委託して実施している。

(料金収受業務委託費の積算の基準)

 料金収受業務委託費の積算に当たっては、公団本社制定の「料金収受業務設計積算基準」及び「料金収受業務設計積算実施要領」(以下、これらを「積算基準等」という。)に基づき算定している。
 積算基準等では、上記の業務を行うために必要な経費を人件費、現場管理費及び諸経費に区分している。このうち人件費は、基本給、諸手当及び法定福利費から構成されており、さらに、法定福利費は、厚生年金保険料、児童手当拠出金、雇用保険料等の事業主負担額を算定することとなっている。

(法定福利費の積算)

 本件各契約における法定福利費は、関係法令(注) 及び積算基準等に基づき積算されているが、このうち、厚生年金保険料及び児童手当拠出金については、次のとおり、計6億3164万余円と積算していた。

〔1〕  厚生年金保険料

 厚生年金保険料の事業主負担額については、基本給及び諸手当(特別手当を除く。)の合計額に、保険料率1000分の86.75を乗じたものと、特別手当の額に保険料率1000分の5を乗じたものとを合算して6億2387万余円と積算していた。

〔2〕  児童手当拠出金

 児童手当拠出金の事業主負担額については、基本給及び諸手当(特別手当を除く。)の合計額に、拠出金率1000分の1.1を乗じて777万余円と積算していた。

(注)  関係法令 厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)、児童手当法(昭和46年法律第73号)、労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和44年法律第84号)、雇用保険法(昭和49年法律第116号)等

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 料金収受業務の従事者には高年齢者が多数見受けられている。そして、関係法令により、高年齢者については、その保険料等が徴収の対象外となったり、免除されたりする場合がある。
 そこで、法定福利費の積算について、雇用の実態を反映したものとなっているかという点に着眼して検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような状況となっていた。
 公団では、料金収受業務の従事者を対象に年齢構成を毎年調査している。この調査は、関係法令の規定により、4月1日において64歳以上の者は雇用保険料が免除されることとなっていることから、その結果を積算に反映させるため実施しているものである。
 そして、本件各契約における雇用保険料の事業主負担額については、基本給及び諸手当の合計額に所定の保険料率を乗じた後、9年4月1日現在での調査結果に基づいた保険料徴収対象者の割合63%を乗じて算出していた。
 しかし、関係法令によれば、厚生年金保険料及び児童手当拠出金は、65歳以上の者は、被保険者の資格を喪失するなどのため保険料等徴収の対象外となっているにもかかわらず、これらに係る事業主負担額については、保険料等の徴収対象者の割合を乗じることとしていなかった。
 そこで、上記の年齢構成の資料により調査したところ、65歳以上の者が多数雇用されており、これらの者の従事者に占める割合は27%となっていた。
 したがって、法定福利費の積算に当たっては、雇用の実態を反映させ、雇用保険料のみならず、厚生年金保険料及び児童手当拠出金についても、保険料等の徴収対象者に係る分を計上すれば足りると認められた。

(低減できた積算額)

 上記により、法定福利費のうち厚生年金保険料及び児童手当拠出金について、保険料等の徴収対象者の割合を乗じることとして修正計算すると、4億6110万余円となり、前記の積算額を約1億7050万円低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、厚生年金保険料及び児童手当拠出金の事業主負担額の積算に当たり、雇用の実態を積算基準等に反映させる配慮に欠けていたことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、公団では、10年2月に、厚生年金保険料及び児童手当拠出金の事業主負担額の積算に当たり、雇用の実態を反映した積算となるよう積算基準等を改め、10年度以降の委託契約に適用することとする処置を講じた。