科目 | (一般勘定)貸付金 (医療勘定)貸付金(平成9年4月1日以降は一般勘定に統合) |
部局等の名称 | 社会福祉・医療事業団 |
貸付けの根拠 | 社会福祉・医療事業団法(昭和59年法律第75号) |
貸付金の種類 | 福祉貸付資金(建築資金及び設備備品整備資金) 医療貸付資金(新築資金及び機械購入資金) |
貸付けの内容 | 特別養護老人ホーム、老人保健施設等を新築するため、施設又は設備の整備に必要な資金の貸付け |
貸付件数 | 9件 |
貸付金の合計額 | 2,692,000,000円 |
不当貸付金額 | 500,029,000円 |
1 貸付金の概要
社会福祉・医療事業団(以下「事業団」という。)は、社会福祉の増進並びに医療の普及及び向上を図ることを目的として、社会福祉・医療事業団法(昭和59年法律第75号)に基づき、社会福祉事業施設を設置し又は経営する社会福祉法人等に対し福祉貸付を、病院、老人保健施設等を開設する医療法人等に対し医療貸付を行っている。
このうち、福祉貸付は、特別養護老人ホーム等の設置、整備等に必要な資金を貸し付けるもので、施設の新築、改築等に係る建築資金、機械器具、備品の整備に係る設備備品整備資金等がある。また、医療貸付は、病院、老人保健施設等の施設の設置、整備等に必要な資金を貸し付けるもので、施設の新築、用地の取得に係る新築資金、施設に必要な機械器具の購入に係る機械購入資金等がある。そして、事業団では、リース契約又は割賦販売契約により設置した機械器具については、貸付けの対象としないこととしている。
事業団では、上記の貸付けに当たり、借入申込者である社会福祉法人、医療法人等から提出された借入申込書類等の内容を審査し、所定の条件に適合していると認めたものに対し貸付内定(予定)の通知を行い、金銭消費貸借契約を締結する。
この貸付金額については、事業団が定める規程に基づき算出された額に所定の融資率を乗じて得た額を貸付限度額とし、その貸付限度額の範囲内で、かつ、貸付対象事業に充当される他の財源と合わせて資金剰余が生じないように貸付決定を行うこととなっている。
そして、この貸付対象事業が完了したときは、事業完了(完成)報告書を提出させるなどして事業内容を審査し、事業の成果が貸付けの目的及び対象に適合しているか等の確認を行うこととなっている。
また、事業団では、金銭消費貸借契約の特約条項に基づき、契約締結後に、貸付対象事業費の減額や補助金、助成金、共同募金会を通じた指定寄付金の増額などにより借入れが不要となった金額については、繰上償還の措置を執ることができることとなっている。
2 検査の結果
本院では、特別養護老人ホーム等の老人福祉施設については昨年、重点的に検査を行い、その結果を平成8年度決算検査報告に不当事項及び特定検査対象に関する検査状況として掲記したところであり、本年も引き続き、昨年検査対象としなかった地域において検査を行うとともに、新たに、老人保健施設等を対象として検査を行った。
検査の結果、9件2,692,000,000円の貸付けにおいて、500,029、000円の貸付けが不当と認められる。これらは、借入者から提出された事業完了(完成)報告書等の確認が十分でなかったなどのため、貸付金が過大に貸し付けられるなどしていたものである。
これらの事態を貸付資金別・貸付先別に示すと次のとおりである。
貸付先 (所在地) |
貸付年月 (貸付利率) |
貸付対象事業費 | 左に対する貸付金額 | 貸付金額のうち不当と認める額 | 摘要 | |
千円 | 千円 | 千円 | ||||
(1) 福祉貸付 | ||||||
(建築資金及び設備備品整備資金) | ||||||
(289) | 社会福祉法人 (宮城県古川市) |
8.1 (年3.10%) |
1,110,489 | 90,000 | 16,592 | 過大貸付 |
この貸付けは、特別養護老人ホーム等の設置等に必要な資金1,110,489,000円の一部として90,000,000円を貸し付けたものである。借入者は、この事業を本件貸付金、国庫補助金等のほか、施設の所在する市から本件事業に対し交付された補助金(以下、本件において「市補助金」という。)271,331,000円を財源として貸付対象事業費どおりの額で事業を実施したとしていた。 しかし、市補助金271,331,000円は過小に報告していたもので、実際は、290,225,000円の交付を受けていた。このため、本件貸付対象事業に充当される適正な収入額は、計1,129,383,000円となり、報告漏れとなっていた費用を考慮した支出額1,112,791,000円に対し16,592,000円の資金剰余が生じていると認められた。 したがって、この事業についての適正な貸付金額を計算すると73,408,000円となるので、本件貸付金額との差額16,592,000円が過大な貸付けとなっている。 なお、本件の不当貸付金残高14,933,000円については、平成10年10月に繰上償還された。 |
||||||
(290) | 社会福祉法人 (東京都稲城市) |
8.2 (年3.10%) |
1,605,359 | 500,000 | 71,843 | 過大貸付 |
この貸付けは、特別養護老人ホーム等の設置等に必要な資金1,605,359,000円の一部として500,000,000円を貸し付けたものである。借入者は、この事業を本件貸付金、国庫補助金等のほか、施設の所在する市及び2特別区から本件事業に対し交付された補助金(以下、本件において「市区補助金」という。)計26,797,000円を財源として貸付対象事業費どおりの額で事業を実施したとしていた。 しかし、実際は、上記の市区補助金のほかに、別の特別区からの補助金105,000,000円の交付を受けているのに、これを報告していなかった。このため、本件貸付対象事業に充当される適正な収入額は、計1,677,202,000円となり、支出額1,605,359,000円に対し71,843,000円の資金剰余が生じていると認められた。 したがって、この事業についての適正な貸付金額を計算すると428,157,000円となるので、本件貸付金額との差額71,843,000円が過大な貸付けとなっている。 なお、本件の不当貸付金残高64,659,000円については、平成10年10月に繰上償還された。 |
||||||
(291) | 社会福祉法人 (大阪府大阪市) |
8.1 (年3.10%) |
1,604,560 | 490,000 | 105,703 | 低額実施 |
この貸付けは、特別養護老人ホーム等の設置等に必要な資金1,604,560,000円の一部として490,000,000円を貸し付けたものである。借入者は、この事業を貸付対象事業費どおりの額で実施したとしていたが、この額は契約額を水増しするなどしたもので、実際は、1,315,599,000円で実施していた。 したがって、この事業についての適正な貸付金額を計算すると、施設の所在する市から本件事業に対し交付された補助金の減額分87,456,000円を考慮したとしても384,297,000円となるので、本件貸付金額との差額105,703,000円が過大な貸付けとなっている。 なお、本件の不当貸付金残高95,133,000円については、繰上償還の措置を執ることになった。 |
||||||
(292) | 社会福祉法人 (香川県綾歌郡国分寺町) |
7.4 (年4.25%) |
881,733 | 339,000 | 30,062 | 過大貸付 |
この貸付けは、特別養護老人ホーム等の設置等に必要な資金881,733,000円の一部として339,000,000円を貸し付けたものである。借入者は、この事業を本件貸付金、国庫補助金等のほか、施設の所在する町から本件事業に対し交付された補助金(以下、本件において「町補助金」という。)180,534,404円を財源として貸付対象事業費どおりの額で事業を実施したとしていた。 しかし、町補助金180,534,404円は過小に報告していたもので、実際は、210,596,000円の交付を受けていた。このため、本件貸付対象事業に充当される適正な収入額は、計911,795,000円となり、支出額881,733,000円に対し30,062,000円の資金剰余が生じていると認められた。 したがって、この事業についての適正な貸付金額を計算すると308,938,000円となるので、本件貸付金額との差額30,062,000円が過大な貸付けとなっている。 なお、本件の不当貸付金残高25,552,000円については、平成10年5月に繰上償還された。 |
||||||
(293) | 社会福祉法人 (宮崎県小林市) |
7.12 (年3.10%) |
676,628 | 120,000 | 16,899 | 過大貸付 |
この貸付けは、特別養護老人ホーム等の設置等に必要な資金676,628,000円の一部として120,000,000円を貸し付けたものである。借入者は、この事業を本件貸付金、国庫補助金等のほか、関係団体等から共同募金会を通じて本件事業に対し交付された指定寄付金計87,255,000円を財源として貸付対象事業費どおりの額で事業を実施したとしていた。 しかし、指定寄付金87,255,000円は過小に報告していたもので、実際は、98,690,000円の交付を受けていた。また、関係団体からの助成金12,500,000円の交付を受けているのに、これを報告していなかった。このため、本件貸付対象事業に充当される適正な収入額は、計700,563,000円となり、報告漏れとなっていた費用を考慮した支出額683,664,000円に対し16,899,000円の資金剰余が生じていると認められた。 したがって、この事業についての適正な貸付金額を計算すると103,101,000円となるので、本件貸付金額との差額16,899,000円が過大な貸付けとなっている。 なお、本件の不当貸付金残高15,209,000円については、平成10年10月に繰上償還された。 |
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(1)の計 | 5,878,769 | 1,539,000 | 241,099 | |||
(2) 医療貸付 | ||||||
(新築資金) | ||||||
(294) | 医療法人 (群馬県前橋市) |
8.6 (年3.35%) |
918,242 | 700,000 | 101,995 | 低額実施 |
この貸付けは、老人保健施設の新築等に必要な資金918,242,000円の一部として700,000,000円を貸し付けたものである。借入者は、この事業を921,000,000円で実施したとしていたが、実際は建築工事等について値引きを受けていて、これより低額な740,951,000円で実施していた。また、施設の所在する市からの補助金15,000,000円の交付を受けているのに、これを報告していなかった。 したがって、この事業についての適正な貸付金額を計算すると598,005,000円となるので、本件貸付金額との差額101,995,000円が過大な貸付けとなっている。 なお、本件の不当貸付金残高98,745,000円については、繰上償還の措置を執ることになった。 |
||||||
(295) | 医療法人 (鹿児島県川辺郡知覧町) |
8.2 (年3.10%) |
622,514 | 405,000 | 124,678 | 低額実施 |
この貸付けは、老人保健施設の新築に必要な資金622,514,000円の一部として405,000,000円を貸し付けたものである。借入者は、この事業を貸付対象事業費どおりの額で実施したとしていたが、実際は建築工事について契約額を変更するなどしていて、これより低額な487,322,000円で実施していた。 したがって、この事業についての適正な貸付金額を計算すると280,322,000円となるので、本件貸付金額との差額124,678,000円が過大な貸付けとなっている。 なお、本件の不当貸付金残高120,245,000円については、平成10年7月に繰上償還された。 |
||||||
(機械購入資金) | ||||||
(296) | 医療法人 (千葉県富津市) |
9.6 (年2.60%) |
34,013 | 20,000 | 20,000 | 貸付対象外 |
この貸付けは、老人保健施設の新築に伴い必要となる電動リモートコントロールベッド、車椅子入浴装置等の購入に必要な資金34,013,700円の一部として20,000,000円を貸し付けたものである。借入者は、これらの機械器具を貸付対象事業費どおりの額で購入したとしていたが、実際は貸付けの対象とはならないリース契約により借り受けていた。 したがって、本件機械器具は、貸付対象にならないものである。 なお、本件の不当貸付金残高17,760,000円については、平成10年7月に繰上償還された。 |
||||||
(297) | 医療法人 (宮崎県日南市) |
7.10 (年3.25%) |
53,824 | 28,000 | 12,257 | 貸付対象外 |
この貸付けは、老人保健施設の新築に伴い必要となる電動リモートコントロールベッド、厨房機器等の購入に必要な資金53,824,000円の一部として28,000,000円を貸し付けたものである。借入者は、これらの機械器具を貸付対象事業費どおりの額で購入したとしていたが、実際は一部の機械器具について貸付けの対象とはならない割賦販売契約により購入するなどしていた。 したがって、この事業についての適正な貸付金額を計算すると15,743,000円となるので、本件貸付金額との差額12,257,000円が過大な貸付けとなっている。 なお、本件の不当貸付金残高6,106,000円については、平成10年8月に繰上償還された。 |
||||||
(2)の計 | 1,628,593 | 1,153,000 | 258,930 | |||
(1)、(2)の合計 | 7,507,362 | 2,692,000 | 500,029 |