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  • 平成9年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第9 日本国有鉄道清算事業団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

固定資産税等の納付に係る事務処理体制を整備することにより、その納付を適切なものにするよう改善させたもの


固定資産税等の納付に係る事務処理体制を整備することにより、その納付を適切なものにするよう改善させたもの

科目 (項)管理諸費
部局等の名称 関東支社ほか7支社
税の名称 固定資産税、都市計画税
税の概要 旧日本国有鉄道等から、東日本旅客鉄道株式会社等が承継した土地のうち日本国有鉄道清算事業団の名義となっている土地及び同事業団が承継し貸し付けるなどしている土地に対する固定資産税及び都市計画税
納付先 79市町村
納付額 35億5916万余円(平成5年度〜9年度)
固定資産税
都市計画税
29億4588万余円
6億1327万余円
負担する必要がなかった納付額 1億4710万円(平成5年度〜9年度)
固定資産税
都市計画税
1億2473万円
2237万円

1 固定資産税等の納付の概要

(国鉄民営化に伴う土地の承継)

 日本国有鉄道清算事業団(以下「事業団」という。)では、旧日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)の民営化に伴い、国鉄及び日本鉄道建設公団(以下「国鉄等」という。)から大量の土地を承継するなどしている。
 その面積は、昭和62年4月に、東日本旅客鉄道株式会社ほか10法人(注1) (以下「承継法人」という。)が事業用地等として承継した土地57,200haを除いた土地8,808haと、、その後平成9年度までに日本鉄道建設公団から承継するなどした土地433haとで、合計9,241haに上っている。

(固定資産税等の課税)

 土地には、地方税法(昭和25年法律第226号)に基づいて、その所在の市町村(特別区を含む。以下同じ。)から、原則として、固定資産税が、また、市街化区域内の土地には更に都市計画税が、それぞれ毎年度課税される。その納税義務者は、本来は土地の真の所有者であるが、真の所有者を特定することが困難な場合も多いため、原則として、当該年度の初日の属する年の1月1日の賦課期日において不動産登記簿等に所有者として登記されている者となっている。
 従前国鉄等が所有していた土地に対する固定資産税及び都市計画税(以下「固定資産税等」という。)は原則として非課税であったが、国鉄の民営化に伴って、昭和61年12月の地方税法の改正により、平成元年度から、承継法人が承継した土地についてはすべて課税されることとなり、事業団が承継した土地については次のとおり課税と非課税とに区分されることとなった。

(ア) 事業団が直接その本来の事業の用に供するもの、すなわち、売却を目的として所有するものについては非課税となる。

(イ) 売却が行われるまでの間一時的に駐車場用地等として貸し付けている土地及び宿舎用地等に使用している土地については課税される。そして、これらの課税された土地は、貸付け等の使用実態がなくなれば本来の事業の用に供する固定資産として非課税となる。

 事業団の各支社等は、市町村に対して、土地の貸付け等の使用実態を基に所有する土地についての課税、非課税の区分を申告している。

(所有権移転登記等の手続)

 事業団及び承継法人が承継した土地については、国鉄等から事業団及び承継法人への所有権移転登記等を行う必要があるが、承継した土地の筆数が多いことなどからその完了までには相当の期間を要することが見込まれた。
 そこで、事業団と承継法人は、これを円滑に実施するため、昭和62年4月に協定を締結するなどして、事業団と承継法人の土地の境界部分が多数の筆にまたがるものの所有権移転登記等の手続については、次のとおり取り扱うこととした。

〔1〕  所有権移転登記等は、事業団の土地の売却時期に間に合うように行う。

〔2〕  その場合、筆ごとに事業団と承継法人とに分筆する登記手続の煩雑さを避けるため、事業団において、両者の土地をいったん事業団名義の土地として登記し、その上で合筆し、その後、事業団及び承継法人の土地に分筆する。

〔3〕  承継法人への所有権移転登記は、承継法人が登記に必要となる書類を作成した後、事業団の嘱託登記により行う。

(固定資産税等の納付)

 事業団の関東支社ほか7支社及び1支所(注2) が平成5年度から9年度までに納付した固定資産税等の額は、473市町村に固定資産税12,293筆分、156億2603万余円、311市町村に都市計画税9,800筆分、32億9887万余円、計189億2490万余円となっている。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 承継法人の土地のうち、いったん事業団名義として登記している土地について固定資産税等の賦課期日において事業団名義のままとなっている場合は、固定資産税等が事業団に課税されることとなる。また、事業団の土地は本来の事業の用に供するものは非課税であるが、一部の土地については売却するまでの間一時的に貸付け等を行っていて、固定資産税等が課税されるものがある。
 このため、これらの土地の固定資産税等の納付に係る事務は煩雑で、また、納付額も多額に上っていることから、これが適切に実施されているか検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、関東支社ほか7支社が、5年度から9年度までに79市町村に対して納付した固定資産税29億4588万余円、都市計画税6億1327万余円、計35億5916万余円のうち、本来事業団が負担する必要がなかったものを納付していて適切でないと認められる事態が次のとおり見受けられた。

(ア) 関東支社ほか2支社(注3) では、東日本旅客鉄道株式会社(以下「JR東日本」という。)ほか3社(注4) の土地をいったん事業団名義として登記した後、固定資産税等の賦課期日までにJR東日本等への所有権移転登記が完了しておらず事業団名義のままとなっていたため、本来JR東日本等が負担すべき固定資産税等が事業団に課税され、納税通知書に従って納付したままになっていた。

固定資産税 34市町村 931筆分 7681万余円
都市計画税 25市町村 382筆分 1429万余円
計   9110万余円

<事例>

所在地 A県B市 土地面積 2,322m2 負担する必要がなかった納付額 132万余円

 本件土地は、B市に所在しJR東日本が軌道敷として利用している土地で、事業団が、7年3月に登記簿上国鉄から事業団に名義を変更した後、8年12月、事業団とJR東日本の土地10筆3,233m2 を合筆し、9年2月、それぞれの土地に分筆した。そして、同年3月、JR東日本への所有権移転登記が行われていた。
 しかし、所有権移転登記が8年度の賦課期日である8年1月1日及び9年度の賦課期日である9年1月1日に完了していなかったため、本来JR東日本が負担すべき8、9両年度の固定資産税等が事業団に課税され、納税通知書に従って納付したままになっていた。

(イ) 関東支社ほか7支社では、貸付け等を行っていた事業団の土地について、その使用実態がなくなり、本来の事業の用に供する固定資産となっていて非課税となるなどしているのに、事業団に固定資産税等が課税され、納税通知書に従ってそのまま納付していた。

固定資産税 63市町村 480筆分 4791万余円
都市計画税 52市町村 416筆分  808万余円
計   5600万余円

<事例>

所在地 C県D市 土地面積 420m2 負担する必要がなかった納付額 266万余円

 本件土地は、D市に所在する事業団の土地で、事業団では当該土地を駐輪場としてD市に貸し付けていたが、8年9月30日で貸付けが終了し、事業団に返還された。
 しかし、事業団では、貸付けが終了しているにもかかわらず、貸付終了後も課税される土地であるとして申告していたため、9年度の固定資産税等が課税され、納税通知書に従ってそのまま納付していた。

(負担する必要がなかった固定資産税等)

 上記(ア)、(イ)の結果、関東支社ほか7支社において、5年度から9年度までに、79市町村に本来事業団が負担する必要がなかった固定資産税1,411筆分、1億2473万余円、64市町村に都市計画税798筆分、2237万余円、計1億4710万余円を納付していた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。

(ア)について、

 所有権移転登記等の手続上いったん事業団名義として登記した土地について、その状況を十分把握していなかったため、承継法人に対して、固定資産税等の賦課期日までに登記が完了するよう必要書類の早期作成を要請していなかったり、賦課期日までに登記が完了せず事業団に課税され納付した場合に納付した固定資産税等相当額をJR東日本等に支払請求していなかったりしていたこと

(イ)について、

 土地の貸付け等の使用実態を基に課税、非課税の区分を明確に把握していなかったため、市町村に対する使用実態の異動に係る課税、非課税の申告が不備であったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、事業団では、10年8月に、各支社及び支所に対して通達を発し、登記簿上いったん事業団名義とした土地の状況を把握できる書類や課税、非課税の区分を明確に把握できる書類を整備するなどの処置を講じた。
 また、本件納付相当額について、JR東日本ほか3社に対する支払請求及び市町村に対する還付請求の措置を執った。

(注1)  東日本旅客鉄道株式会社ほか10法人 東日本、北海道、東海、西日本、四国、九州各旅客鉄道株式会社、日本貨物鉄道株式会社、新幹線鉄道保有機構(現運輸施設整備事業団)、鉄道通信株式会社(現日本テレコム株式会社)、鉄道情報システム株式会社、財団法人鉄道総合技術研究所

(注2)  関東支社ほか7支社及び1支所 関東、北海道、東北、新潟、中部、近畿、中国、九州各支社、四国支所、(10年4月1日以降、新潟支社は新潟支所、中部支社は中部支所、中国支社は中国支所。以下同じ)

(注3)  関東支社ほか2支社 関東、北海道、東北各支社

(注4)  東日本旅客鉄道株式会社ほか3社 東日本、北海道、東海各旅客鉄道株式会社、日本貨物鉄道株式会社