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私立大学等経常費補助金の経理が不当と認められるもの


(298)−(304) 私立大学等経常費補助金の経理が不当と認められるもの

科目 (助成勘定)補助金経理 (項)交付補助金
部局等の名称 日本私立学校振興・共済事業団(平成10年1月1日以前は「日本私学振興財団」)
補助の対象 私立大学等における専任教職員の給与等教育又は研究に要する経常的経費
補助の根拠 私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)
事業主体 学校法人千葉敬愛学園ほか6学校法人
上記に対する事業団の補助金交付額の合計 2,641,846,000円
不当と認める事業団の補助金交付額 55,005,000円

1 補助金の概要

(補助金交付の目的)

 日本私立学校振興・共済事業団(注1) (以下「事業団」という。)は、私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)に基づき、国の補助金を財源として、私立大学等(注2) を設置する学校法人に私立大学等経常費補助金を交付している。この補助金は、私立大学等の教育条件の維持及び向上並びに学生の修学上の経済的負担の軽減を図るとともに私立大学等の経営の健全性を高めることを目的として、私立大学等における専任教職員の給与等教育又は研究に要する経常的経費に充てるために交付されるものである。

(補助金の額の算定資料)

 この補助金について、事業団では、私立大学等経常費補助金交付要綱(昭和52年文部大臣裁定)等に基づき、補助金の額を算定する資料として、各学校法人に補助金交付申請書とともに次の資料を提出させている。

 〔1〕  当該年度の10月末日現在の専任教員等(注3) の数、専任職員数及び学生数に関する資料

 〔2〕  学校法人会計基準(昭和46年文部省令第18号)に基づき作成した前年度決算の学生納付金 収入、教育研究経費支出及び設備関係支出などに関する資料

(補助金の額の算定方法)

 事業団は、上記の資料に基づき、補助金の額を次のとおり算定している。

(ア) 経常的経費を専任教員等給与費、専任職員給与費、教育研究経常費等の経費に区分し、それぞれの経費ごとに専任教員等の数、専任職員数又は学生数等に所定の補助単価等を乗じて補助金の基準額を算定する。
 そして、短期大学の学科を大学の学部又は学科に改組転換した場合、当該学部等が卒業生を出すまでの間、当該学部等の専任教員等の数は、短期大学の学科の募集停止の直前の年度における専任教員等の数を限度とすることとなっている。

(イ) 各私立大学等の教育研究条件の良否によって補助金の額に差異を設けるため、次の割合に基づいて調整係数を算定する。

 〔1〕  収容定員に対する在籍学生数の割合

 〔2〕  専任教員等の数に対する在籍学生数の割合

 〔3〕  学生納付金収入に対する教育研究経費支出と設備関係支出との合計額(以下「教育研究経費支出等の額」という。)の割合

 そして、専任教員等の数に対する在籍学生数の割合は各学部等ごとに算出するが、その際、一般教育を担当する専任教員等の数は、各学部等の入学定員の割合により各学部等に配分することとなっている。また、教育研究経費支出等の額の算定に当たっては、研究室の拡張や教室の用途変更など建物の量的又は質的向上に係る支出及び大規模な空調設備等の建物附属設備の設置工事費については施設関係支出に計上し、教育研究経費支出等の額には含めないこととなっている。さらに、食堂等の維持管理費及び学校法人の業務に要するとみなされる私立大学等を経営する学校法人の全国組織の会費等の経費は管理経費支出に計上し、教育研究経費支出等の額には含めないこととなっている。

(ウ) (ア)で算定した経費ごとの基準額に(イ)で算定した調整係数を乗ずるなどの方法により得られた金額を合計して補助金の額を算定する。

(補助金の額の算定の対象となる専任教員等及び専任職員の要件)

 補助金の額の算定の対象となる専任教員等及び専任職員については、次の要件のすべてに該当する者となっている。

(ア) 当該私立大学等の専任教員等又は専任職員として発令されていること

(イ) 当該学校法人から主たる給与の支給を受けていて、所定の額以上の給与を補助金申請年の1月から10月までの各月において支給されていること

(ウ) 当該私立大学等に常時勤務していること

(特別補助)

 上記のほか、教育研究経常費については、私立大学における学術の振興及び私立大学等における特定の分野、課程等に係る教育の振興のため、特別補助として、補助金を増額して交付することができることとなっている。
 この特別補助の対象となるものに「教育研究用ソフトウェア」の項目があり、これは、国の補助金により導入した学術研究又は専門分野の教育に使用するコンピュータのためのソフトウェアを購入又は借入れにより整備している大学等に対し、一定額を限度にその所要経費の2分の1以内を増額するものである。
 そして、事業団では、各学校法人に、特別補助の項目ごとに、算定対象となる教員等の数や所要経費に関する資料を提出させて、特別補助の額を算定し、これらの合計額を特別補助として増額している。

(注1)  日本私立学校振興・共済事業団 平成10年1月1日に日本私学振興財団と私立学校教職員共済組合を統合して発足

(注2)  私立大学等 私立の大学、短期大学及び高等専門学校

(注3)  専任教員等 専任の学長、校長、副学長、教授、助教授、講師及び助手

2 検査の結果

 検査の結果、7学校法人において、制度の理解が十分でなかったため、前記の資料に、補助金の額の算定の基礎となる教育研究経費支出等の額には含めないこととされている支出額を計上するなどしているのに、事業団では、これに基づいて補助金の額を算定していた。このため、補助金が過大に交付された結果となっていて、補助金55,005,000円が不当と認められる。
 これを学校法人別に示すと次のとおりである。

  事業主体
(本部所在地)
年度 補助金交付額 不当と認める補助金額

(298)

学校法人 千葉敬愛学園
 (千葉県千葉市)

8
9
小計
千円
181,856
186,020
367,876
千円
3,118
2,876
5,994
 上記の学校法人は、事業団に提出した資料に、千葉敬愛短期大学に所属する平成8年10月末日現在の補助金の額の算定の対象となる専任教員等の数を33人と記入していた。また、敬愛大学に所属する9年10月末日現在の補助金の額の算定の対象となる専任教員等の数を51人と記入していた。そして、事業団では、これらの数値等に基づき、8年度及び9年度の同学校法人に対する補助金をそれぞれ181,856,000円、186,020,000円と算定していた。
 しかし、上記の専任教員等の数については、次のとおりとなっていた。
(ア) 同短期大学に所属する8年の専任教員等のうち国際教養科の1人は、所定の額以上の給与を支給されていない月があり、補助金算定の対象とはならない。
(イ) 同大学に所属する9年の専任教員等の数は、同大学の国際学部が9年度に同短期大学の国際教養科を改組転換したものであるため、8年度の国際教養科の専任教員等の数を限度とするなどして48人と算定されているが、この限度とした専任教員等の数には、上記(ア)の補助金算定の対象とはならない1人が含まれていた。
 したがって、この教員を除外して算定すると、専任教員等給与費等に係る補助金の基準額が減少し、また、専任教員等の数に対する在籍学生数の割合等に基づいて算定した調整係数が下がることになる。この結果、適正な補助金は8年度178,738,000円及び9年度183,144,000円となり、それぞれ3,118,000円、2,876,000円が過大に交付されていた。
(299) 学校法人 昭和女子大学
 (東京都世田谷区)
8 1,007,482 2,774
 上記の学校法人は、事業団に提出した資料に、昭和女子大学短期大学部に所属する平成8年10月末日現在の補助金の額の算定の対象となる専任教員等の数を82人と記入しており、事業団では、この数値等に基づき、8年度の同学校法人に対する補助金を1,007,482,000円と算定していた。
 しかし、上記の専任教員等のうち1人は、所定の額以上の給与を支給されていない月があり、補助金算定の対象とはならない。
 したがって、この教員を除外して算定すると、専任教員等給与費等に係る補助金の基準額が減少するので、適正な補助金は1,004,708,000円となり、2,774,000円が過大に交付されていた。
(300) 学校法人 聖学院
 (東京都北区)
8
9
小計
288,982
312,509
601,491
1,385
12,964
14,349
 上記の学校法人は、事業団に提出した資料に、聖学院大学に所属する平成8年及び9年10月末日現在の補助金の額の算定の対象となる専任教員等の数をそれぞれ60人、64人と記入していた。また、女子聖学院短期大学に係る8年度の教育研究経費支出等の額を204,584千円と記入していた。そして、事業団では、これらの数値等に基づき、8年度及び9年度の同学校法人に対する補助金をそれぞれ288,982,000円、312,509,000円と算定していた。
 しかし、上記の専任教員等の数及び教育研究経費支出等の額については、次のとおりとなっていた。
(ア) 上記の同大学の専任教員等のうち政治経済学部の専門科目を担当するとしていた1人は、実際は、8年度及び9年度とも一般教育に該当する科目を担当していた。
 したがって、この教員を一般教育を担当する教員数に加算し、これを政治経済学部及び人文学部の入学定員の割合により配分し直すと、両年度の専任教員等の数は政治経済学部では1人減少し、人文学部では1人増加することになる。このため、人文学部の専任教員等の数に対する在籍学生数の割合等に基づいて算定した調整係数は、8年度に上がり、9年度は変わらない。一方、政治経済学部では両年度とも下がることになる。
(イ) 上記の同短期大学の教育研究経費支出等の額には、これに含めないこととされている大規模な空調設備の設置工事費等42,736千円が含まれていた。
 したがって、これを除外して算定すると、学生納付金収入に対する教育研究経費支出等の額の割合等に基づいて算定した9年度の調整係数が下がることになる。
 これらの結果、適正な補助金は8年度287,597,000円及び9年度299,545,000円となり、それぞれ1,385,000円、12,964,000円が過大に交付されていた。
(301) 学校法人 白梅学園
 (東京都小平市)
8 125,740 6,839
 上記の学校法人は、事業団に提出した資料に、白梅学園短期大学に係る平成7年度の教育研究経費支出等の額を217,657千円と記入しており、事業団では、この数値等に基づき、8年度の同学校法人に対する補助金を125,740,000円と算定していた。
 しかし、上記の教育研究経費支出等の額には、これに含めないこととされている短期大学を経営する学校法人の全国組織の会費及び食堂等の維持管理費、計855千円が含まれていた。
 したがって、これを除外して算定すると、学生納付金収入に対する教育研究経費支出等の額の割合等に基づいて算定した調整係数が下がることになるので、適正な補助金は118,901,000円となり、6,839,000円が過大に交付されていた。
(302) 学校法人 愛知水野学園
 (愛知県名古屋市)
7 61,091 1,293
 上記の学校法人は、事業団に提出した資料に、東海産業短期大学の7年度の教育研究用ソフトウェアに係る特別補助の額の算定の対象となる語学教育用ソフトウェアを購入するための所要経費を4,805千円と記入していた。そして、事業団では、この数値等に基づき、同特別補助の額を2,402千円とするなどして7年度の同学校法人に対する補助金を61,091,000円と算定していた。
 しかし、上記の所要経費のうち2,587千円は、コンピュータ本体及びハードディスク等の購入費であって、同特別補助の額の算定の対象とはならない。
 したがって、これを除外して算定すると、同特別補助の額が1,109千円に減少するので、適正な補助金は59,798,000円となり、1,293,000円が過大に交付されていた。
(303) 学校法人 英知学院
 (兵庫県尼崎市)
7 278,555 14,709
 上記の学校法人は、事業団に提出した資料に、英知大学に係る平成6年度の教育研究経費支出等の額を370,353千円と記入しており、事業団では、この数値等に基づき、7年度の同学校法人に対する補助金を278,555,000円と算定していた。
 しかし、上記の教育研究経費支出等の額には、これに含めないこととされている研究室の拡張工事費等58,951千円が含まれていた。
 したがって、これを除外して算定すると、学生納付金収入に対する教育研究経費支出等の額の割合等に基づいて算定した調整係数が下がることになるので、適正な補助金は263,846,000円となり、14,709,000円が過大に交付されていた。
(304) 学校法人 尚絅(しょうけい)学園
 (熊本県熊本市)
8 199,611 9,047
 上記の学校法人は、事業団に提出した資料に、尚絅短期大学に係る平成7年度の教育研究経費支出等の額を179,677千円と記入しており、事業団では、この数値等に基づき、8年度の同学校法人に対する補助金を199,611,000円と算定していた。
 しかし、上記の教育研究経費支出等の額には、これに含めないこととされている教室等の用途変更のための改装工事費2,925千円が含まれていた。
 したがって、これを除外して算定すると、学生納付金収入に対する教育研究経費支出等の額の割合等に基づいて算定した調整係数が下がることになるので、適正な補助金は190,564,000円となり、9,047,000円が過大に交付されていた。
(298)-(304) の計
2,641,846 55,005