科目 | 設備投資勘定 |
部局等の名称 | 日本電信電話株式会社 |
蓄電池の概要 | 停電の際に、電話回線等の伝送装置であるボックス型の光アクセス装置に搭載している各装置に電力を供給するための予備電源装置 |
購入物品 | シール鉛蓄電池160組 |
購入費 | 1億3806万余円 |
節減できた購入費 | 5920万円 |
1 購入物品の概要
日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)では、高度情報化社会の通信基盤を整備するため、加入者線交換機を設置している支店等の機械棟から加入者への配線点(注1)
までのアクセス網を、従来のメタリックケーブルから光ファイバケーブルに逐次更新している。そして、この配線点には、加入者側からは電気信号がメタリックケーブルで送られてくるため、電気信号と光信号とを変換する遠隔多重伝送装置(Remote Terminal。 以下「RT」という。)等を搭載した光アクセス装置を設置している。
この光アクセス装置には、回線数や設置場所等の条件に対応したボックス型、柱上型、キャビネット型、超小型等の各タイプがある。ボックス型装置は、多数の回線を収容できる比較的大型のもので、コンテナ形状の収容室にRT、電源装置等を搭載しており、平成2年11月から導入され、10年3月末現在で1,413台が設置されている。また、柱上型、キャビネット型及び超小型の各装置(以下「小型装置」という。)は、7年5月から順次導入されていて、10年3月末現在で、1,828台が設置されている。
そして、これらの光アクセス装置には、いずれも、電源装置とともに、停電時の予備電源装置としてのシール鉛蓄電池(以下「蓄電池」という。)が搭載されている。
ボックス型装置に搭載する蓄電池の設計は、各支社において、本社が制定した「電気通信技術標準実施方法−小規模局用電源装置−設計編」(以下「標準設計」という。)等に基づき行われている。この標準設計等によると、蓄電池の選定については、ボックス型装置のそれぞれの機器構成、収容する回線数等によって算定される設計電流値に、蓄電池の保持時間に応じた係数を乗じて、蓄電池の必要容量(Ah)を算出した上で、1000Ah、1500Ah及び2000Ahの各容量の蓄電池の中から、その必要容量を満たす直近上位の蓄電池1組(注2)
を選ぶこととなっている。
そして、上記の必要容量の算定における蓄電池の保持時間は、2年の導入当初から、原則として18時間と設定されている。これは、通常勤務の終了(午後5時)直後に停電した場合、翌日午前7時に出勤して約2時間で現地へ赴き、午前11時までに給電を行うという夜間無派遣の保守体制を想定したものである。
一方、小型装置に搭載する蓄電池の保持時間は、本社制定の「電気通信技術標準実施方法−屋外設置型光アクセス装置−概要編」等により8時間と設定されている。これは、NTTによると、近年の停電の大半が8時間未満と早期に復旧していることを設計に反映させたものとしている。
東京支社ほか9支社(注3) において、9年度に設置されたボックス型装置に搭載する蓄電池のうち、保持時間が18時間の蓄電池の購入数量及び金額は計160組、1億3806万余円となっている。
2 検査の結果
NTTでは、前記のとおり、ボックス型装置については、停電に対する保守体制を夜間無派遣と想定して、蓄電池の保持時間を18時間に設定している。一方、7年5月から導入されるようになった小型装置については保持時間を8時間に設定している。
そこで、18時間に設定されているボックス型装置の蓄電池の保持時間は、近年の停電に対する保守の実態に合わせて適切に設定されたものになっているかということに着眼して検査した。
検査に当たっては、10年3月末現在、配線点に設置されているボックス型装置及び小型装置計3,241台を対象に、8、9両年度における停電の状況や停電に対する保守体制について検査した。
検査したところ、次のような状況となっていた。
(ア) NTTでは、電気通信設備を保守、管理するために、保守管理センタを10年3月末現在、全国53箇所に設置し、すべての光アクセス装置の運転状況を同センタから遠隔で常時監視することとしている。そして、これらの光アクセス装置を含む各種設備の保守業務については、5年度から順次、委託により行っている。また、前記のとおり、7年度から導入した小型装置(蓄電池の保持時間は8時間)の設置が増加している。これらに伴い、光アクセス装置の停電に対する保守体制は次のようになっていた。
すなわち、保守管理センタでは、配線点に設置されている光アクセス装置に関する火災や電源装置の故障等の警報を受信すると、保守業務の委託を受けた会社(以下「保守会社」という。)に直ちに連絡することとしている。そして、保守会社はこれを受けて、保守担当者を、昼夜にかかわらず、現地へ派遣して修理するなどしており、その際、停電時間が光アクセス装置の蓄電池の保持時間を超えると見込まれる場合は、小型発電機等を携帯するなどして、電気通信サービスを円滑に提供する体制を執っている。
また、停電の状況とその対応についてみると、前記3,241台に対する8時間以上の停電は3件生じていたが、保守会社が適切に対応し電気通信サービスに支障は生じていなかった。
したがって、上記の状況から、ボックス型を含む光アクセス装置の停電に対する保守体制は、従来の夜間無派遣から常時対応へと移行してきており、また、最近の停電及びその対応の状況からみても、ボックス型装置の蓄電池の保持時間は、小型装置の保持時間と同様の8時間とすることが可能であると認められた。
(イ) また、ボックス型装置に搭載する蓄電池は、前記のとおり、1000Ahの容量のものが最小となっていた。しかし、NTTでは、機械棟に設置する交換機等に関する設計の指針においては、停電に対して、予備発電装置が起動するまでの間、電力を供給する小容量の蓄電池として、1000Ah以上の容量の蓄電池のほかに500Ah等の蓄電池を選定できるように定めていることから、ボックス型装置に係る設計においても、同様に500Ahの蓄電池を選定することが可能であると認められた。
したがって、上記の(ア)、(イ)により、蓄電池の保持時間を8時間として、その必要容量に応じて、より小容量の蓄電池を搭載することとして設計することができ、経済的な調達が可能となると認められた。
上記により、前記の10支社において、9年度に設置されたボックス型装置に搭載する蓄電池160組について、保持時間を8時間と設定し、また、500Ahの蓄電池も選定することとすれば、148組の蓄電池について、それぞれ、より小容量の蓄電池を搭載することができ、購入費は約5920万円節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、本社において、光アクセス装置の蓄電池について、停電に対する保守体制が変化しているのに、ボックス型装置の蓄電池の保持時間について見直しを行って、より小容量の蓄電池を搭載するなどの経済的な調達に対する配慮が十分でなかったことなどによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、NTTでは、10年11月に、各支社に対して指示文書を発し、ボックス型装置に搭載する蓄電池については、8時間の保持時間を標準とし、また、容量が500Ahのものを選定できるようにすることにより、蓄電池の新設時及び更改時に経済的、効率的な設計を行うこととする処置を講じた。
(注1) 配線点 加入者線交換機を設置している機械棟から加入者までを結ぶケーブルは、機械棟を出た直後は地下の管路に布設される。そして、加入者まである程度の距離に達した地点で、地下管路から地上へと立ち上がり、以後は方面ごとに加入者まで配線される。 配線点は、この地下管路から地上へと立ち上がる点をいう。
(注2) 蓄電池1組 ボックス型装置に搭載する蓄電池は、必要な電圧を確保するため、電圧2Vの電池23個を直列に接続して1組としている。
(注3) 東京支社ほか9支社 東京、関東、信越、東海、関西、中国、四国、九州、東北、北海道各支社