科目 | (款)受託工事勘定 (項)受託工事費 |
部局等の名称 | 四国旅客鉄道株式会社本社 |
工事名 | 松山・八幡浜間光ケーブル新設工事ほか6工事 |
工事の概要 | 通信回線の整備の一環として、鉄道線路に沿って光ファイバケーブルを新設する工事 |
工事費 | 5億1699万余円 |
請負人 | 四国電設工業株式会社 |
契約 | 平成8年4月〜9年12月 随意契約 |
光ファイバケーブルの敷設費等の積算額 | 敷設費 | 1億8632万余円 |
接続費 | 1億6940万余円 | |
計 | 3億5572万余円 | |
敷設費等の過大積算額 | 敷設費 | 3010万円 |
接続費 | 4370万円 | |
計 | 7390万円 |
1 工事の概要
四国旅客鉄道株式会社(以下「JR四国」という。)では、平成8、9両年度に、電気通信事業を営む日本テレコム株式会社から委託を受け、同社の通信回線の整備の一環として、鉄道線路に沿って光ファイバケーブル(以下「光ケーブル」という。)を新設する工事を7工事(工事費総額5億1699万余円)施行している。
これらの工事は、光ケーブルを収容するためのトラフ等(注)
を設置し、光ケーブルの敷設及び接続などを行うものである。このうち、光ケーブルの敷設及び接続作業は、ドラムに巻かれた長さ1km程度の光ケーブルを、人力又はウインチ等によりトラフ内等に引き込みながら敷設した後、それぞれの光ケーブル端部の心線を接続器を用いて融着接続するものである。
JR四国では、光ケーブルの敷設費及び接続費について、昭和62年4月に制定した「電気関係工事標準歩掛積算要領」(以下「積算要領」という。)に基づいて積算することとしている。
これによれば、敷設作業については、敷設場所、敷設方法等に応じて、その1km当たりの所要人工数(以下「敷設歩掛かり」という。)が、接続作業については、光ケーブルの心線数等に応じて、その接続1箇所当たりの所要人工数(以下「接続歩掛かり」という。)がそれぞれ定められている。
これらの歩掛かりは、日本国有鉄道がそれぞれ60年及び61年に定めたものをそのまま用いたもので、被覆を施した1本の光ファイバの心線(径0.9mm)を、円形状に配置したものにチューブ状の緩衝材をかぶせるなどして束ね、外被で覆った構造の光ケーブル(以下「単心形」という。参考図1参照
)を敷設及び接続する歩掛かりとして定められているものである。
そして、前記の7工事においては、積算要領に基づき、敷設費を、敷設歩掛かりに労務単価及び光ケーブルの施工延長(計190.2km)を乗ずるなどして、総額1億8632万余円と積算していた。また、接続費を、接続歩掛かりに労務単価及び光ケーブルの接続箇所数(計198箇所)を乗ずるなどして、総額1億6940万余円と積算していた。
2 検査の結果
光ケーブルは、大量の情報を伝送する手段として、その需要は急速に増大している。そして、複数の光ファイバを横一列に並べてテープ状に束ね、共通の被覆を施した心線を、堅い円筒状の部材の外周に設けた溝に収納するなどして外被で覆った構造の光ケーブル(以下「テープ形」という。参考図2参照
)が開発され、近年は、この光ケーブルが単心形に代わり一般に広く使用されるようになっている。
このような状況を踏まえ、光ケーブルの敷設費及び接続費の積算は、使用する光ケーブルの施工の実態に適合しているかという点に着眼して検査した。
検査したところ、本件工事は、いずれも単心形ではなく、4本の光ファイバを束ねた構造のテープ形の光ケーブルを使用するものであった。そして、そのテープ形の敷設及び接続作業の実態をみると、次のような状況となっていた。
(ア) 敷設作業について
テープ形は、心線を堅い円筒状の部材の外周に設けた溝に収納する構造となっていることから、心線を緩衝材でチューブ状に覆うなどして束ねた単心形と異なり、心線が外力の影響を受けて移動し光ファイバに歪みが加わるおそれがなく、作業時の取扱いが容易となっていることなどから作業能率が向上していた。
(イ) 接続作業について
テープ形の接続作業は、光ファイバを1本ずつ接続することとなる単心形と異なり、テープ形用の接続器を使用することにより、光ファイバ4本(テープ1本)を一括して接続していた。
このように、テープ形を使用した光ケーブルの敷設及び接続作業は、いずれも能率的になっていて、実際の人工数は積算上の所要人工数を相当程度下回っていた。
したがって、本件各工事の敷設費及び接続費の積算は施工の実態を反映したものとなっておらず、積算要領を改める要があると認められた。
本件各工事における敷設費及び接続費の積算について、それぞれ施工の実態に適合する歩掛かりにより修正計算すると、積算額を敷設費で約3010万円、接続費で約4370万円、計約7390万円低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、使用する光ケーブルはテープ形となっており、敷設及び接続作業が能率的になっているにもかかわらず、その実態を十分把握していなかったことなどによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、JR四国では、平成10年10月に、光ケーブルの敷設費及び接続費の積算が施工の実態に適合したものとなるよう積算要領を改正し、同年11月以降積算する工事から適用することとする処置を講じた。
(注) トラフ 地中に敷設する各種ケーブルを保護するための鉄筋コンクリート製の函きょ