科目 | 通信設備使用料 |
部局等の名称 | エヌ・ティ・ティ移動通信網株式会社 |
専用契約の概要 | 交換機と無線装置との間の専用回線を使用して高速ディジタル伝送サービスの提供を受けるもの |
契約の相手方 | 日本電信電話株式会社 |
支払額 | 145億9880万余円 |
節減できた専用料金 | 6400万円 |
1 専用契約の概要
エヌ・ティ・ティ移動通信網株式会社(以下「NTTドコモ」という。)は、移動体通信事業を実施する会社として、携帯・自動車電話に係るサービス(以下「携帯電話サービス」という。)を提供している。
この携帯電話サービスを実施するため、NTTドコモでは、無線装置(無線基地局内)及び交換機等の電気通信設備を設置し、無線装置と交換機との間は日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)と高速ディジタル伝送サービスの提供を受けるための契約(以下「専用契約」という。)を締結し、この契約に基づき、NTTの敷設する回線を専用回線として使用している(下図参照)
。
そしてNTTドコモでは、この専用回線に係る使用料金(以下「専用料金」という。)として、平成9年度にNTTに対し145億9880万余円を支払っている。
上記の専用回線は、ディジタル化された音声等の信号を高速で伝送するもので、NTTドコモでは、基本的に、1メガビット/秒から6メガビット/秒までの5種類の伝送速度のうちから、無線装置が処理する通信量に適合する種類を選択している。そして専用回線の両端には、無線装置及び交換機と接続するために回線接続装置(以下「接続装置」という。)が取り付けられており、その接続装置は専用回線の伝送速度に対応して、専用回線が、1.5メガビット/秒までのものには1.5メガ用の、1.5メガビット/秒を越えるものには6メガ用の装置を使用している。
NTTドコモでは、既存の無線装置が処理する通信量の増加が見込まれる場合には、無線装置を増設するとともに専用回線の伝送速度をより高速なものに変更するなどして対応している。そして、専用回線の伝送速度の変更に伴い既存の1.5メガ用の接続装置で対応できない場合には、6メガ用の接続装置を新設する必要がある。NTTドコモでは、専用回線を新規に開通させる際には、新規の専用回線の開通日から、増設した電気通信設備の信頼性が確認されるまでの期間は、初期不良等に起因する加入者の通話障害を回避するために、同一区間に新旧2回線の専用回線を併用して使用している。
NTTドコモでは、電気通信設備の建設を行う工事施工部門が、増設した電気通信設備の信頼性を確認した後に、関係部門による会議等の際に、同部門からNTTとの専用契約を行う契約部門に対し既存の専用回線が不要となった旨の連絡を行うこととしている。連絡を受けた契約部門では、不要となった既存の専用回線を一時的に使用しないようにすること(以下「利用休止」という。)などの請求をNTTに対して行い、契約変更を行うこととしている。そして利用休止期間については、専用回線に係る専用料金の支払は要しないものとされている。
また、専用料金の支払部門では、NTTから毎月送付される料金請求書等の請求書類の審査を行い、支払を行っている。
2 検査の結果
現在携帯電話サービスの主流となっているディジタル方式については、料金の低廉化・多様化とともに、その提供エリアの拡大を図ってきたことにより、その加入者数は急激に増加している。そこで、NTTドコモがNTTと締結している専用契約が使用実態に即した適切かつ経済的なものとなっているかに着眼して検査を行った。
10年3月末時点において、NTTドコモが契約している1,455回線の専用回線に係る専用契約について検査したところ、電気通信設備の信頼性を確認した後も、不要となった専用回線について利用休止とする専用契約の変更を行わなかったため、NTTに対して専用料金を支払い続けていたものが17回線見受けられた。
NTTドコモにおいて、電気通信設備の信頼性を確認した後、速やかに上記の17回線について、NTTに対して利用休止とする請求を行い、専用契約の変更を行っていたとすれば、専用回線に係る専用料金を約6400万円節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、次のことによると認められた。
(ア) 工事施工部門と契約部門との間の連絡調整が十分に行われておらず、契約部門において、既存の専用回線が不要となった時点を的確に把握していなかったため、不要となった専用回線を利用休止とする請求が適切に行われていなかったこと
(イ) 専用回線の回線数が増加したにもかかわらず、NTTから送付される料金請求書等の請求書類の審査を確実に行う体制が整備されていなかったため、支払部門において、専用回線の使用状況についての把握が十分でなかったこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、NTTドコモでは、10年9月に、次のとおり、不要となった既存の専用回線を的確に把握し、使用実態に応じた専用契約を締結できるよう改めることとする処置を講じた。
(ア) 工事施工部門と契約部門との間の調整を連絡文書で確実に行うことにより、専用回線が不要となった時点を契約部門が的確に把握できる体制を整備し、NTTに対して不要となった既存の専用回線を利用休止とするなどの請求を適切に行うこととした。
(イ) 支払部門においても、専用回線の区間やその使用状況等を常時把握できるシステムを整備、活用し、契約部門と連携するなどして、NTTから送付される料金請求書等の請求書類の審査を確実に行うこととした。