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  • 平成9年度|
  • 第3章 国会からの検査要請事項及び特定検査対象に関する検査状況|
  • 第2節 特定検査対象に関する検査状況

公共工事に関する入札・契約制度の運用について


第2 公共工事に関する入札・契約制度の運用について

検査対象 国の機関 総理府(北海道開発庁、沖縄開発庁)、運輸省、建設省
公団等 日本道路公団ほか9団体
都道府県 47都道府県
政令指定都市 12政令指定都市
市町村 2,103市町村
検査の対象とした平成9年度の契約件数 41,115件
上記に係る契約金額 5兆9759億余円

 

1 検査の背景

(公共工事の契約)

 国及び公団等並びに地方公共団体は、毎年、多数の公共工事を請負契約により施行している。これらの請負契約は、国の機関においては、会計法(昭和22年法律第35号)、予算決算及び会計令(和昭和年勅令第165号。以下「予決令という。)等に基づき、また、地方公共団体においては、地方自治法(昭和22年法律第67号)、地方自治法施行令(昭和22年政令第16号)等に基づいて、それぞれ締結されている。そして、公団等の機関においては、各機関が会計法及び予決令の規定に準じて定め、監督庁の承認を受けた会計規程等に従って、それぞれ請負契約を締結している。
 これらの法令等においては、請負契約を締結する場合の入札方式は、原則として、一般競争入札によることとされているが、一般競争入札によることを不利と認める場合などには指名競争入札によることとする規定があり、契約事務手続の効率性、経済性、工事の信頼性の確保等を理由として、従来、ほとんどの公共工事は指名競争入札により発注されてきた。

(公共工事に関する入札・契約手続の改善)

 平成5年に至り、公共工事の入札及び執行をめぐる一連の不祥事の発生、また、国際的な建設市場の開放要求という内外の動向を踏まえ、公共事業の入札・契約手続を透明で客観的かつ競争的なものとしていくことが求められるようになった。
 そして、6年1月、政府は、「公共事業の入札・契約手続の改善に関する行動計画」(平成6年1月18日閣議了解。以下「行動計画」という。)を策定し、公共工事の発注に当たっては、

・透明性(第三者による監視が容易であること)

・客観性(発注者の裁量の余地が少ないこと)

・競争性(入札に参加する可能性のある潜在的な競争参加者の数が多いこと)

を確保した調達方式を採用することとした。この行動計画は、主に、国及び公団等の発注工事を対象として定められているが、都道府県及び政令指定都市(以下「都道府県等」という。)の工事についても国及び公団等と同様の対応が勧奨されており、これを、発注機関ごとにみると、次のようになっている。

(ア) 国及び公団等について

 国の機関においては、450万SDR(注1) (8、9年度の邦貨換算額6億5000万円)以上、公団等においては15000万SDR(同21億6000万円)以上の公共工事については、一般競争入札方式で調達を行うこととした。
 また、従来の指名競争入札に比べ透明性、客観性及び競争性を高めた新しい指名競争入札(公募型指名競争入札(以下「公募型」という。)や工事希望型指名競争入札(以下「希望型」という。))の活用、外国企業の適正な評価、苦情処理手続の整備、入札談合等不正行為の防止措置等を着実に推進していくものとした。
 そして、一般競争入札方式の執行に当たって、公共工事の質の確保を図るため、〔1〕 一般競争有資格業者の登録、〔2〕 経営事項審査、〔3〕 個別工事に係る技術的条件の設定、などにより入札の参加者に一定の制限を設けることとしている(以下「制限付き一般競争」という。これと上記の公募型及び希望型を合わせて、以下これらを「新入札制度」という。)。

(イ) 都道府県等について

 地方公共団体のうち都道府県等については、行動計画において、国及び公団等と同様に制限付き一般競争を採用し実施することが勧奨されている。そして、建設、自治両省では、都道府県に対し、「地方公共団体の公共工事に係る入札・契約手続き及びその運用の改善の推進について」(平成5年12月24日建設省経構発第22号、自治行第114号。以下「推進通知」という。)の文書を発し、大規模な公共工事については、国と同様の制限付き一般競争を採用するよう勧奨している。

(ウ) 市町村について

 市町村(特別区を含む。以下同じ。)については、行動計画においては特に触れられていないが、推進通知において、制限付き一般競争の活用を妨げるものではないとされた。また、指名競争入札による場合でも公募型や希望型の採用も検討することが求められた。

 その後、ウルグアイラウンドにおける交渉を受けて、8年1月発効した「政府調達に関する協定」(以下「政府調達協定」という。)では、国、公団等及び都道府県等の実施する公共工事を対象にして(市町村の工事は対象外となっている。)、行動計画とほぼ同様の内容が求められている。そして、この政府調達協定では、その対象となる工事については、入札参加者について地域内に事業所を有すること(以下「地域要件」という。)を定めたり、最低制限価格を設定したりすることはできないこととされている。

(新入札制度の内容)

 現在、発注機関では、上記の行動計画、推進通知及び政府調達協定の趣旨を踏まえ、新入札制度を実施するために、その対象とする工事の金額及び実施手続を定めた規程等を整備しており(以下、これらの規程等を整備した場合を「導入」という。)、その内容は、おおむね、次のようになっている。

(ア) 制限付き一般競争

 発注者がそれぞれ定める一定金額以上の予定価格の工事を対象とする。

 入札の公募に当たっては、経常事項審査に基づく客観点数、同種の工事の施工実績及び配置を予定するよ主任技術者、監理技術者の資格等に関して一定の制限を設けている。

(イ) 公募型

 一定金額以上の予定価格の工事(制限付き一般競争を実施している場合は、その対象金額未満の工事)を対象とする。
 入札に先立ち、指名競争参加資格の認定を受けている者のうちから公募により、施工実績、配置予定の技術者及び施工計画等の技術資料を提出させて、審査を行い、その中から入札に参加する者を指名して、入札を行っている。

(ウ) 希望型

 一定金額以上の予定価格の工事(制限付き一般競争又は公募型を実施している場合は、その対象金額未満の工事)を対象とする。
 あらかじめ、指名競争参加資格の申請時に、受注を希望する工種を記入させ、これと工事の規模、地域的特性等を勘案して、業者を10数社から20社程度選定し、通知する。そして、選定した者の中から入札の参加を希望した者に対し、施工実績、配置予定の技術者等の技術資料を提出させ、審査を行い、その中から入札に参加する者を指名して、入札を行っている。

 また、上記のような経緯により、新入札制度が実施されるようになっているが、各発注機関においては、従来からの指名競争入札(以下「従来型」という。)や随意契約も実施されている。

(最低制限価格制度及び低入札価格調査制度)

 公共工事の入札においては、当該契約の適正な履行の確保のためとして、次のような最低制限価格制度及び低入札価格調査制度が設けられている。

(ア) 最低制限価格制度は、地方自治法等に基づくもので、入札に当たって予定価格とともにあらかじめ最低制限価格を設け、この価格を下回る入札者を排除するものである。この制度は、地方公共団体では広く採用されているが、国の機関においては行われていない。

(イ) 低入札価格調査制度は、会計法等及び地方自治法等に基づくもので、予定価格とともにあらかじめ調査の対象とする基準価格を定めておき、入札価格がこれを下回ったときは、契約が適正に履行されるかどうかを調査する制度である。この制度は、国、公団等の機関及び一部の地方公共団体において採用されている。

2 検査の着眼点及び対象

(検査の着眼点)

 公共工事の入札・契約に当たり、透明性、客観性及び競争性を高めるために行動計画が策定されてから5年が経過しようとしている。そこで、行動計画に示されている新入札制度が着実に導入され、運用実績も伴ったものとなっているかの点に着眼し、新入札制度の導入状況及び公共工事の入札・契約状況を、国、公団等の機関及び地方公共団体について検査した。
 また、併せて、最低制限価格制度及び低入札価格調査制度の実施状況などについても検査した。

(検査の対象)

 今回、検査の対象としたのは、9年度に契約された公共工事のうち、1件当たりの契約金額が、国の機関(表1の4機関をいう。以下同じ。)においては2000万円以上の工事、また、公団等(表1の10機関をいう。以下同じ。)においては3000万円以上の工事、そして、国の補助を受けて地方公共団体が実施した工事のうち2000万円以上の工事であり、その合計は41,115件、契約総額は5兆9759億余円となっている。これらの内訳は表1のとおりである。

<表1> 検査対象とした公共工事

事業主体名 件数 契約金額
国の機関
    (4)
北海道開発庁、沖縄開発庁、運輸省、建設省 4,937 8487億余円
公団等
  (10)
日本道路公団、首都高速道路公団、水資源開発公団、阪神高速道路公団、新東京国際空港公団、本州四国連絡橋公団、地域振興整備公団、住宅・都市整備公団、日本下水道事業団、関西国際空港株式会社 5,646 1兆8280億余円
都道府県等
     (59)
47都道府県
12政令指定都市
30,532 3兆2991億余円
(国庫補助金相当額
1兆5596億余円)
市町村 2,103市町村
計(2,176事業主体) 41,115 5兆9759億余円

(注) 日本下水道事業団は、行動計画及び政府調達協定の対象機関とはなっていないが、公団等に含めて検査対象とした。

3 検査の状況

(1) 新入札制度の導入と対象工事

(ア) 新入札制度の導入状況

 新入札制度の導入状況を事業主体別にみると、10年1月1日現在、表2のとおりとなっている。

<表2> 新入札制度を導入した事業主体数

事業主体数
(A)
制限付き一般競争 指名競争
公募型 希望型
導入数(B) B/A 導入数(C) C/A 導入数(D) D/A
国の機関 4 4 %
100
4 %
100
2 %
50.0
公団等 10 10 100 10 100 1 10.0
都道府県等 59 59 100 52 88.1 20 33.9
市町村 2,103 381 18.1 101 4.8 87 4.1

合計

2,176 454 20.9 167 7.7 110 5.1

 新入札制度の導入状況についてみると、次のとおりである。

〔1〕  制限付き一般競争は、国の機関、公団等及び都道府県等ではすべて導入している。
 しかし、市町村の導入率は18.1%にとどまっている。

〔2〕  新しい指名競争入札方式のうち公募型は、国の機関、公団等及び都道府県等では、おおむね導入されているが、希望型は、公団等、都道府県等でも一部が導入するにとどまっている。また、市町村では、この両方式の導入も検討することとされているにもかかわらず、ほとんど導入されていない。
 そして、新入札制度の導入が進んでいない市町村について、その理由を調査したところ、行動計画において制限付き一般競争の導入が勧奨されていないことのほか、表3のとおり、契約事務に関する人的、経済的負担が大きいこと、地元の中小建設業者の受注を確保させたいことなどをあげる市町村が多数に上った。

<表3> 新入札制度を導入していない理由

理由 制限付き一般競争 指名競争
公募型 希望型
〔1〕  契約事務に要する発注者側の人材が不足している
46.7

40.9

40.2
〔2〕  契約予定額が少額である 38.0 27.6 23.0
〔3〕  中小建設業者への影響がある(地元の業者の受注を確保するため) 34.9 33.0 29.5
〔4〕  契約事務に要する経済的負担が大きい 17.1 13.5 13.4
〔5〕  契約事務(公告から入札まで)に要する期間が長く実質の工期が確保できない状況となる 13.5 13.2 12.4
〔6〕  不良不適格業者の排除が困難である 8.3
〔7〕  その他 11.3 12.3 15.0

(注) 新入札制度を導入していない市町村(制限付き一般競争1,722、公募型2,002、希望型2,016の各市町村)を対象として、導入していない理由について上記の項目を例示し、得た回答を集計したものである。

(イ) 新入札制度の対象工事

 新入札制度を導入している事業主体について、対象とする工事の予定価格の設定金額(以下「設定金額」という。)を調査したところ、発注機関ごとに表4−1から表4−3のとおりとなっている。

<表4−1> 入札方式別設定金額(国の機関及び公団等14事業主体)

制限付き一般競争 指名競争
公募型 希望型
国の機関 6.5億円以上 2億以上6.5億円未満(*) 1億以上2億円未満(*)
公団等 21.6億円以上 7億以上21.6億円未満(*) 2億以上7億円未満

(注) *印を付したものは、事業主体、工種により設定金額は一律ではないが、おおむねこの金額の範囲で設定されているものである。

<表4−2> 入札方式別設定金額(都道府県等59事業主体)

設定金額
(億円)
制限付き
一般競争
指名競争
公募型 希望型
事業主体数 導入率
(%)
事業主体数 導入率
(%)
事業主体数 導入率
(%)
21.6以上 34 57.6 2 3.4
6.5以上21.6未満 18 30.5 3 5.1
2 以上 6.5未満 7 11.9 42 71.2 10 16.9
1 以上 2 未満 4 6.8 10 16.9
1 未満 1 1.7
合計 59 100 52 88.1 20 33.9

<表4−3> 入札方式別設定金額(市町村2,103事業主体)

設定金額
(億円)
制限付き
一般競争
指名競争
公募型 希望型
事業主体数 導入率
(%)
事業主体数 導入率
(%)
事業主体数 導入率
(%)
21.6以上 24 1.1 2 0.1
6.5以上21.6未満 75 3.6 7 0.3
2以上6.5未満 115 5.5 45 2.1 16 0.8
1以上2未満 96 4.6 25 1.2 45 2.1
1未満 40 1.9 12 0.6 21 1.0
制限なし 31 1.5 10 0.5 5 0.2
合計 381 18.1 101 4.8 87 4.1

 新入札制度を導入している場合の対象とする工事の金額の設定状況をみると、次のとおりである。

〔1〕  国の機関又は公団等においては、制限付き一般競争では、行動計画に定められたとおり、いずれも6億5000万円以上又は21億6000万円以上と設定されている。

〔2〕  地方公共団体においては、各入札方式ごとの設定金額は事業主体により区々となっているが、制限付き一般競争で、行動計画に定められた金額より低額に設定して対象を広げているものも見受けられる。これは、主として、大規模工事の発注件数が少ないため小規模な工事まで対象としていることによるものであるが、なかには、以前に当該地方公共団体又は周辺の地方公共団体において、公共工事をめぐる不祥事があったことを契機とした事業主体もある。

(2) 入札・契約方式別の実施状況

(ア) 契約実施状況

 各入札・契約方式別の契約件数は表5−1、また、契約金額は表5−2のとおりとなっている。

<表5−1> 入札・契約方式別の契約件数
(単位:件、%)

国の機関 公団等 都道府県等 市町村 合計
件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合
新入札制度 制限付き
一般競争
167 3.4 115 2.0 173 1.0 330 2.5 785 1.9
公募型 603 12.2 705 12.5 621 3.6 117 0.9 2,046 5.0
希望型 651 13.2 580 3.3 147 1.1 1,378 3.4
1,421 28.8 820 14.5 1,374 7.9 594 4.6 4,209 10.2
従来型
(指名競争)
3,271 66.3 3,818 67.6 15,462 88.4 12,249 93.9 34,800 84.6
随意契約 245 5.0 1,008 17.9 649 3.7 204 1.6 2,106 5.1
総計 4,937 100 5,646 100 17,485 100 13,047 100 41,115 100

 

<表5−2> 入札・契約方式別の契約金額
(単位:億円、%)

国の機関 公団等 都道府県等 市町村 合計
件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合
新入札制度 制限付き
一般競争
2,326 27.4 4,432 24.2 3,342 14.8 1,273 12.2 11,373 19.0
公募型 1,932 22.8 6,055 33.1 2,732 12.1 331 3.2 11,050 18.5
希望型 1,030 12.1 3,285 14.6 194 1.9 4,509 7.5
5,289 62.3 10,487 57.4 9,359 41.6 1,798 17.2 26,933 45.1
従来型
(指名競争)
2,525 29.7 5,139 28.1 12,049 53.5 8,460 80.8 28,173 47.1
随意契約 674 7.9 2,654 14.5 1,113 4.9 213 2.0 4,654 7.8
総計 8,488 100 18,280 100 22,521 100 10,470 100 59,759 100

参考図

(参考図)

 上記の入札・契約方式別の実施状況をみると、次のとおりである。

〔1〕  新入札制度と従来型とを比較すると、件数比では、新入札制度は合計で10.2%に過ぎず、依然として従来型が主たる入札方式となっている。しかし、金額比でみると、新入札制度は合計で45.1%を占めており、特に国の機関及び公団等においては新入札制度によるものが約60%となっている。

〔2〕  市町村においては、従来型が件数比で93.9%を占め、金額比でみても80.8%と依然として主たる入札方式となっている。
 そして、新入札制度について、これらをその方式ごとにみると、次のとおりとなっている。

a制限付き一般競争について

 制限付き一般競争は、件数比では、国の機関で3.4%、公団等2.0%、都道府県等1.0%、市町村2.5%といずれも極めて低い状況である。これは、制限付き一般競争の対象となる工事を、6億5000万円以上又は21億6000万円以上と高く設定しているところが多いため、この対象となるような大規模工事が、いずれの事業主体においても少ないことによるものである。
 しかし、金額比でみると、1件当たりの契約金額が大きいため、国の機関で27.4%、公団等24.2%、都道府県等14.8%、市町村12.2%と件数比に比べてその割合は高くなっている。

b公募型について

 公募型は、特に公団等において、金額比で33.1%を占め、主たる入札方式となっている。この中には、1団体ではあるが、制限付き一般競争に付した21億6000万円以上の工事を除き、すべてこの方式により行っているところがある。

c希望型について

 国の機関においては、件数比で13.2%と新入札制度の中では一番高い割合となっているが、対象とする工事の設定金額が他の方式に比べて小さいため、金額比では、12.1%にとどまっている。
 都道府県等においては、希望型の対象となる工事(1億円以上から6億5000万円未満)が比較的多いことから、件数比で3.3%と制限付き一般競争の約3倍となっており、また、金額比でも14.6%と高い割合を示している。

(イ) 発注工事の予定価格規模別の契約状況

 上記の契約について、その件数と金額を予定価格の規模別に示すと、表6−1及び表6−2のとおりであり、大規模工事(予定価格が21億6000万円以上)の割合は、件数比では0.6%と非常に少ないが、1件当たりの契約金額が大きいため、金額比では17.5%となっている。しかし、市町村の工事では予定価格1億円未満の工事が81.4%と多数を占めていて、大規模な工事は少なく、金額比においても1億円未満の工事が45.7%と高い割合を示している。

<表6−1> 予定価格規模別の契約件数 
(単位:件、%)

予定価格(億円) 国の機関 公団等 都道府県等 市町村 合計
件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合
21.6以上 23 0.5 124 2.2 75 0.4 18 0.1 240 0.6
6.5以上21.6未満 157 3.2 557 9.9 390 2.2 93 0.7 1,197 2.9
2以上6.5未満 851 17.2 1,146 20.3 1,519 8.7 569 4.4 4,085 9.9
1以上2未満 989 20.0 1,217 21.6 2,101 12.0 1,753 13.4 6,060 14.7
1未満 2,917 59.1 2,602 46.1 13,400 76.6 10,614 81.4 29,533 71.8
合計 4,937 100 5,646 100 17,485 100 13,047 100 41,115 100

 

<表6−2> 予定価格規模別の契約金額
(単位:億円、%)

予定価格(億円) 国の機関 公団等 都道府県等 市町村 合計
金額 割合 金額 割合 金額 割合 金額 割合 金額 割合
21.6以上 897 10.6 4,907 26.8 3,912 17.4 722 6.9 10,438 17.5
6.5以上21.6未満 1,836 21.6 6,218 34.0 4,415 19.6 919 8.8 13,387 22.4
2以上6.5未満 2,758 32.5 4,003 21.9 4,946 22.0 1,781 17.0 13,489 22.6
1以上2未満 1,426 16.8 1,712 9.4 2,903 12.9 2,267 21.7 8,309 13.9
1未満 1,570 18.5 1,440 7.9 6,345 28.2 4,781 45.7 14,137 23.7
合計 8,488 100 18,280 100 22,521 100 10,470 100 59,759 100

(3) 競争性について

(ア) 地域要件の設定状況

 制限付き一般競争では、政府調達協定により、国の機関及び公団等においては、地域要件を付すことはできないこととされている。
 しかし、政府調達協定の対象となっていない都道府県等の工事(21億6000万円未満の工事)及び市町村の発注する工事については、地方自治法施行令の規定に基づき、事業主体は、地域要件を設定することができることとなっている。
 公募型については、対象とする工事の設定金額が、おおむね政府調達協定の対象となる金額を下回っているため、国の機関及び公団等においても、地域要件を設定することができることとなっている。
 このような制限付き一般競争及び公募型について、各事業主体における地域要件の設定状況を調査したところ、表7のとおり制限付き一般競争については、都道府県等で12の事業主体、市町村で109の事業主体において地域要件を設定していた。また、公募型については、国の機関のすべて、公団等の1事業主体、都道府県等の27事業主体及び市町村の34事業主体において地域要件を設定していた。

<表7> 地域要件の設定状況

国の機関 公団等 都道府県等 市町村
事業
主体数
設定率 事業
主体数
設定率 事業
主体数
設定率 事業
主体数
設定率
制限付き一般競争 導入している事業主体

59 20.3% 381 28.6%
うち地域要件を設定している事業主体

12 109
公募型 導入している事業主体 4 100% 10 10.0% 52 51.9% 101 33.7%
うち地域要件を設定している事業主体 4 1 27 34

 また、地方公共団体において実施された制限付き一般競争及び公募型について、その落札者に占める地元業者(当該地方公共団体の行政地域内に、事業所が所在する業者のことをいう。以下同じ。)の割合は、表8のとおりとなっていた。

<表8> 落札者に占める地元業者の割合

制限付き一般競争

公募型
都道府県等 市町村 都道府県等 市町村
契約 割合 契約 割合 契約 割合 契約 割合
地元業者
133
%
76.9

197
%
59.7

548
%
88.2

95
%
81.2
地元業者以外 40 23.1 133 40.3 73 11.8 22 18.8

合計

173 100 330 100 621 100 117 100

 制限付き一般競争及び公募型のいずれにおいても、地元業者が落札しているものの割合が高くなっている。また、公募型が制限付き一般競争より高くなっているのは、対象とする工事の設定金額が公募型の方が小さいため、地元の中小建設業者が応募しやすいことがその理由となっている。

(イ) 新入札制度の入札参加希望者数及び応札者数

 新入札制度において、入札に参加を希望した者(以下「希望者」という。)及び当該入札に実際に応札した者(以下「応札者」という。)の数を各入札方式別にみると、表9のとおりとなっている。

<表9> 入札方式別の希望者数及び応札者数
(単位:社)

制限付き一般競争 公募型 希望型 合計
希望者 応札者 希望者 応札者 希望者 応札者 希望者 応札者
国の機関 平均 7.8 7.6 15.3 10.1 15.8 10.8 14.6 10.1
最高 25 24 60 20 23 17 60 24
最低 2 2 2 2 5 5 2 2
公団等 平均 5.9 5.9 8.5 7.7 8.3 7.5
最高 15 15 38 36 38 36
最低 1 1 2 2 1 1
都道府県等 平均 13.8 13.7 15.6 14.9 18.8 12.4 16.7 13.8
最高 73 71 55 55 93 33 93 71
最低 3 3 2 2 2 2 2 2
市町村 平均 17.1 16.7 15.4 12.8 15.7 15.4 16.4 15.6
最高 70 70 48 43 33 30 70 70
最低 3 3 4 3 3 3 3 3

  各入札方式ごとに、希望者数と応札者数の関係をみると、次のとおりである。

〔1〕  制限付き一般競争では、いずれの事業主体においても、希望者数と応札者数の問にほとんど差は見られない。

〔2〕  公募型では、国の機関においては、希望者数15.3社(平均。以下同じ。)に対し、応札者数は10.1社と約5社が指名から除外されている。公団等においては8.5社に対し7.7社、都道府県等においては15.6社に対し14.9社、市町村においては15.4社に対し12.8社となっており、いずれも国の機関と比べて指名から除外されたものが少なくなっている。

 そして、国の機関における指名からの除外理由をみると、「技術的適正の観点から指名しない」としているものも一部に見受けられるが、当該工事の施工能力を有していることは認めながら、希望者が多いなどのことから、「提出した技術資料の総合的な評価について、他社が比較優位であったため」とするものがほとんどであった。
 なお、各入札方式ごとの希望者数をみると、制限付き一般競争において、国の機関で7.8社、公団等で5.9社、都道府県等で13.8社となっているのに対し、公募型においては、国の機関で15.3社、公団等で8.5社、都道府県等で15.6社となっており、いずれも制限付き一般競争の方が希望者数が少なくなっている。これは、制限付き一般競争に付されるのは大規模工事が多いため、参加できる有資格者が限定されたり、入札に当たっての要件として有資格者間で特定建設工事共同企業体(注2) を構成することとしていたりする場合が多いことによるものである。

(ウ) 入札・契約方式別の落札比率

 落札価格の予定価格に対する割合(以下「落札比率」という。)を、各入札・契約方式別に検査対象全工事を集計すると、表10のとおりとなっているが、落札比率の分布及び平均値は、入札方式による顕著な違いは見られない。

<表10> 落札比率別契約件数
(単位:件)

区分
落札比率
制限付き
一般競争
公募型 希望型 従来型 随意契約 合計
95%以上 671 1,722 1,140 30,261 3,549 37,343
90%以上95%未満 37 87 55 1,461 105 1,745
85% 90% 12 37 48 507 35 639
80% 85% 13 24 49 580 19 685
75% 80% 10 11 10 405 8 444
70% 75% 9 6 3 120 4 142
70%未満 1 7 11 96 2 117
合計 753 1,894 1,316 33,430 3,722 41,115
平均値 97.09% 97.80% 96.82% 97.60% 98.89% 97.69%

(注) 随意契約には、入札不調により随意契約に移行したものを含む。

(4) 最低制限価格制度及び低入札価格調査制度の実施状況

(ア) 最低制限価格制度について

 地方公共団体において、最低制限価格制度を採用しているものは、表11のとおりとなっている。

<表11> 最低制限価格制度の採用状況

制限付き一般競争 公募型及び希望型 従来型
対象数(A) 採用数(B) 割合
B/A
対象数(C) 採用数(D) 割合
D/C
対象数
(E)
採用数
(F)
割合
F/E

都道府県等

59

17

28.8

57

41

71.9

59

50

84.7
市町村 381 302 79.3 162 99 61.1 2,103 1,079 51.3

 最低制限価格制度を採用している都道府県等と市町村を比較すると、制限付き一般競争では都道府県等の採用割合が低いが、逆に、公募型及び希望型では都道府県等の採用割合が高くなっている。このように、制限付き一般競争において都道府県等の採用割合が低くなっているのは、前記のとおり、制限付き一般競争の対象工事を21億6000万円以上とした場合には、政府調達協定により最低制限価格の設定ができないとされていることによる。
 また、最低制限価格制度による設定価格は予定価格の75%から85%で設定しているものが多くなっている。そして、最低制限価格を設定した工事の件数は全体で、23,232件(最低制限価格を設定できる工事件数の78.5%)あり、このうち、排除された入札者があった件数は392件となっている。

(イ) 低入札価格調査制度について

 低入札価格調査制度の採用状況は、表12のとおりとなっている。

<表12> 低入札価格調査制度の採用状況

制限付き一般競争 公募型及び希望型 従来型
対象数
(A)
採用数
(B)
割合
B/A
対象数
(C)
採用数
(D)
割合
D/C
対象数
(E)
採用数
(F)
割合
F/E

国の機関

4

4
%
100

4

4
%
100

4

4
%
100
公団等 10 10 100 10 10 100 10 10 100
都道府県等 59 50 84.7 57 14 24.6 59 12 20.3
市町村 381 36 9.4 162 16 9.9 2,103 84 4.0

 低入札価格調査制度は、国の機関及び公団等ではすべて採用されており、また、都道府県等でも制限付き一般競争については採用するところが多くなっている。しかし、市町村においては、最低制限価格制度を採用しているところが多いため、いずれの入札方式でも低入札価格調査制度を採用している割合が低くなっている。
 また、低入札価格調査制度において調査の対象とする基準価格は、最低制限価格と同様に、予定価格の75%から85%で設定されているものが多くなっている。そして、調査基準価格を設定した工事の件数は国の機関及び公団等で9,286件(調査基準価格を設定できる工事件数の99.5%)、地方公共団体で472件(同1.6%)、合計で9,758件あり、このうち、実際に調査対象となった件数は104件、その結果、排除されたものは3件と極めて少ない状況となっている。

4 本院の所見

 上記の検査の結果、本院の所見を示すと次のとおりである。

(ア) 公共工事に関する入札・契約手続の改善については、行動計画の策定後5年が経過しようとしており、国の機関、公団等及び地方公共団体のうち都道府県等においては、新入札制度は、おおむね導入され実施されている。そして、その実施状況をみると、件数比では新入札制度の割合は低く、従来型が大部分となっているが、新入札制度の対象となった工事の契約金額が大きいため、金額比では5割以上となり、この点からみる限り実効も伴っているといえる。しかし、市町村においては、行動計画で触れられていないことや実施体制が十分でないことなどのため、制限付き一般競争の導入は少なく、公募型や希望型の導入も更に少ない状況であった。
 したがって、公共工事の一層の透明性、客観性及び競争性を確保するためには、国、公団等及び都道府県等とともに市町村における新入札制度の導入・実施の一層の啓発に努める必要がある。そして、このためには、市町村における契約審査事務の一部を都道府県の建設技術センター等(注3) に委託したり、経常建設共同企業体(注4) を活用して発注する工事規模の拡大を図ったりなどして、中小建設業者の受注の確保等の施策との調和を図りつつ、新入札制度の導入・実施についての環境を整備する要がある。

(イ) 競争性の確保については、今回の検査では、落札比率については、従来型と新入札制度との間において顕著な差異はみられなかったが、今後も注視する要がある。
 また、国の機関が実施した公募梨、希望型において、希望者が参加資格要件を満たしているにもかかわらず、他社との比較という理由により指名から除外されている事態が見受けられるので、発注者の事務量等を総合的に斟酌する必要はあるが、競争性の確保の観点から対処されることが望まれる。

(ウ) 低入札価格調査制度は、建設大臣の諮問機関である中央建設業審議会の建議等においても最低制限価格制度に比べ、個別原価を審査できるという点でより望ましい制度であるとされており、現に、都道府県等及び市町村においても、低入札価格調査制度へ移行している状況が見受けられた。そして、今回の検査でみる限り、この制度を適用した場合の排除者は極めて少なく、調査基準価格以下の価格で契約を、ほとんど履行できている状況となっていた。したがって、調査に要する時間、事務量及び監督・検査体制の強化等本制度を導入することによるコストの増加を勘案する必要はあるものの、今後この制度が広く採用されることが望まれる。

 公共事業の入札・契約制度に関しては、現在も、価格と価格以外の要素を総合的に評価して落札者を決定する総合評価方式が模索されたり、予定価格の事前又は事後の公表などの透明性の確保等に関しての種々の試みや、さまざまな検討が関係機関において進められたりしているところである。また、9年4月に、「公共工事コスト縮減対策に関する行動指針」が策定され、公共工事の建設費縮減が要請されているところである。
 このような状況にかんがみ、本院としては、公共工事の品質の確保及び中小建設業者への影響も考慮しながら、効率性、経済性の観点から、入札・契約制度の運用について引き続き注視していくこととする。

(注1)  SDR 国際通貨基金の特別引出権(Special Drawing Rights)
 なお、平成8、9年度邦貨換算額は、450万SDRが6億5000万円、1500万SDRが21億6000万円となっている。

(注2)  特定建設工事共同企業体 大規模かつ技術的難度の高い特定の工事の施工に際して、建設業者が、数社で共同して形成した事業組織体

(注3)  建設技術センター 都道府県及び市町村における公共工事の施行を補完支援する組織機関として都道府県が設立した公益法人

(注4)  経常建設共同企業体 中小・中堅建設業者が、その経営力・施工力を強化することを目的として数社で共同して形成した継続的な事業組織体