検査対象 | 郵政省 |
会計名及び科目 | 郵政事業特別会計 (項)局舎其他施設費 |
調達物品 | 新型区分機及びバーコード区分機 |
調達物品の概要 | 郵便物の郵便番号等を自動的に読み取り配達順に並べるなどの機能を有する機器で、平成10年2月の新郵便番号制の導入に伴い調達するもの |
契約の方式 | 一般競争契約 |
契約の相手方 | 株式会社東芝、日本電気株式会社及び株式会社日立製作所 |
契約年月及び調達台数 | 平成9年5月、10年2月 計228台 |
上記に係る調達額の合計 | 490億1046万余円 |
1 検査の背景
郵政省では、郵便物処理の機械化の範囲を拡大し、郵便事業の効率化を図ることにより、将来にわたって低廉で良質な郵便サービスを安定的に提供することを目的とした新郵便番号制を平成10年2月から導入するのに伴い、9年度から新型区分機及びバーコード区分機(以下「新型区分機等」という。)の調達を行っている。
このうち新型区分機は、新郵便番号制の導入に当たり新たに開発された区分機で、郵便物のあて先の行政区及び町域を表した7桁の新郵便番号と住居表示番号を自動的に読み取り機械処理しやすいバーコードの形に変換して郵便物に印字することや、郵便物に印字されたバーコードを読み取り郵便物を配達順に並べることなどができるものである。また、バーコード区分機は、郵便物に印字されたバーコード等を読み取り区分する専用機で、A型とB型の2種類があり、A型はバーコードのほか郵便番号のみも読み取り、また、B型はバーコードを読み取り、配達順に並べることなどができるものである。
これら新型区分機等の1台当たりの価格は、新型区分機で約2億5100万円、バーコード区分機(A型)で約9200万円、バーコード区分機(B型)で約6200万円(以上いずれも9年度の平均調達価格)となっている。
そして、郵政省では、このような新型区分機等を9年度以降の10年間で約1,500台導入する計画としており、これにより10年間で2000億円程度以上の経費と8,000人程度以上の労働力の節減が図れるとしている。
郵政省では、郵便物の区分機については、本省において一元的に入札及び契約を行って調達し、各郵便局に配備することにしている。
そして、8年度まで郵便番号自動読取区分機及び郵便物あて名自動読取区分機(以下「旧型区分機」という。)を、当時区分機を製造していた2社、すなわち株式会社東芝(以下「東芝」という。)及び日本電気株式会社(以下「日本電気」という。)から調達しているが、契約方式については、7年度から、政府調達分野において透明性、公正性及び競争性の高い調達手続とするとともに競争力のある内外の供給者等が容易に市場参入できるようにするための措置として定められた「政府調達に関するアクション・プログラム」(平成6年2月3日)に基づき、指名競争契約から一般競争契約に変更している。
本院は、従来から旧型区分機の調達やその利用状況について検査を実施してきた。そして、新郵便番号制の円滑な実施のためには国民の理解と協力が不可欠であり社会的関心も高く、また、新型区分機等は9年度以降多数導入されるものであることから、その調達について10年次の検査において重点的に検査することとした。
2 検査の対象及び着眼点
検査は、新型区分機等の9年度における調達を中心に実施した。なお、併せて、直近の状況を把握するために10年度歳出予算による調達についても検査することとした。
区分機の調達方法は、前記のように7年度から一般競争契約に移行している。そして、8年度において計12件の旧型区分機の契約の入札が行われているが、その入札では、7年度以前と同様、東芝又は日本電気のいずれか1社しか入札に参加しておらず、12件の契約をこの2社で分け合う状況となっていた。また、予定価格と落札金額との比率(以下「落札比率」という。)は、全契約の平均で99.98%と極めて高くなっていた。
そこで、9年度の新型区分機等の調達が上記のような旧型区分機の調達とどのように関連しているか、一般競争契約によって有効な競争が行われ経済性が確保されているかなどに重点を置いて、入札条件の設定、入札状況等について検査した。
3 検査の状況
(1) 9年度の新型区分機等の調達について
ア 調達の概況
9年度においては、次表のとおり、9年度歳出予算(以下「9年度歳出」という。)による分と9年度国庫債務負担行為(以下「9年度国債」という。による分を合わせて、計228台の新型区分機等を総額490億1046万余円で調達している。
このうち9年度歳出による調達では、東芝及び日本電気の2社からの、9年度国債による調達ではこれら2社及び株式会社日立製作所(以下「日立」という。)の3社からの調達となっている。
区分 | 契約相手方 | 契約件数 | 契約台数 | 契約金額 | ||
新型区分機 | バーコード区分機 | 計 | ||||
9年度歳出 |
東芝 |
件 12 |
台 55 |
台 25 |
台 80 |
万円 185億2357 |
日本電気 | 12 | 45 | 50 | 95 | 177億8703 | |
計 | 24 | 100 | 75 | 175 | 363億1060 | |
9年度国債 | 東芝 | 7 | 10 | 2 | 12 | 29億9607 |
日本電気 | 13 | 30 | 10 | 40 | 94億3814 | |
日立 | 1 | 1 | 0 | 1 | 2億6565 | |
計 | 21 | 41 | 12 | 53 | 126億9986 | |
9年度合計 | 45 | 141 | 87 | 228 | 490億1046 |
イ 入札条件等の設定
9年度における上記の新型区分機等の調達は、一般競争契約によっているが、その入札の執行についてみると、9年度歳出による24件の契約に係る入札をまとめて9年5月16日に行っていた。また、9年度国債についても、同様に21件の契約の入札をまとめて10年2月27日に行っていた。
上記のうち9年度歳出による調達について、1契約当たりの調達台数の決め方をみると、調達する175台の新型区分機等を、機種、郵便物の流れ方(郵便物を区分機の左側から供給して右に流れていく「右流れ」と、この逆の右側から左に流れていく「左流れ」)の仕様、郵便物の区分箱の数量及び既存の押印機との接続の可否により、1台から26台の24グループに分け、このグループを単位として契約することとして、それぞれ入札を行い、契約を締結していた。
また、これらの契約のうち16件(調達台数計164台)の契約においては、調達台数により納期が2回から5回に分けられていた。例えば、新型区分機26台を調達した契約では、納期を5回に分けて、同年9月30日までに9台、10月31日までに7台、11月28日までに7台、10年1月30日までに2台、10年3月16日までに1台をそれぞれ納入することとされており、このように納期が相当異なる分をまとめて一つの契約としていた。
そして、上記のうち1契約当たりの調達台数の決め方は、9年度国債による調達においても同様となっていた。
ウ 入札及び落札の状況
9年度歳出及び9年度国債による調達の入札及び落札の状況をみると、次表のとおりで、計45件228台の契約のうち43件226台の契約については、8年度以前と同様、すべて東芝か日本電気の1社のみの入札となっていた。残る9年度国債による調達の2件2台の契約については、新たに日立が取引に参入するようになり、東芝及び日立の2社による入札となっていた。
そして、9年度歳出による調達では、全契約の落札比率の平均は8年度における旧型区分機の調達とほぼ同様の99.95%となっており、9年度国債による調達では、2社による入札が行われた契約の落札比率は平均95.26%であったが、全契約の平均は98.84%となっていた。
区分 (入札年月日) |
入札参加業者 | 入札件数 | 台数 | 契約金額 | 落札比率 | 備考 | ||
最高 | 最低 | 平均 | ||||||
9年度歳出 (9年5月16日) |
東芝のみ |
件 12 |
台 80 |
百万円 18,523 |
% 100.00 |
% 99.84 |
% 99.96 |
|
日本電気のみ | 12 | 95 | 17,787 | 99.98 | 99.66 | 99.94 | ||
計 | 24 | 175 | 36,310 | − | − | 99.95 | ||
9年度国債 (10年2月27日) |
東芝及び日立 | 2 | 2 | 532 | 96.47 | 94.05 | 95.26 | 東芝及び日立が入札に参加した2件の契約はそれぞれの会社が1件1台ずつ落札している。 |
東芝のみ | 6 | 11 | 2,729 | 99.51 | 96.48 | 98.03 | ||
日本電気のみ | 13 | 40 | 9,438 | 99.99 | 99.58 | 99.76 | ||
計 | 21 | 53 | 12,699 | − | − | 98.84 | ||
9年度合計 | 45 | 228 | 49,010 | − | − | 99.43 |
エ 製造会社の固定化の状況
郵政省では、区分機の調達に当たり、各契約ごとに郵便物の流れ方の仕様を指定している。そして、旧型区分機の調達では、ほとんどの契約において、「右流れ」のものは東芝、「左流れ」のものは日本電気が落札していた。ただし、両会社とも、いわゆる「逆流れ」のもの、すなわち、東芝製で「左流れ」のもの、日本電気製で「右流れ」のものを製造し納入した実績があり、8年度末における旧型区分機428台のうち25台(東芝製15台、日本電気製10台)が「逆流れ」である。
また、郵政省における旧型区分機の配備状況を各郵政局ごとにみると、次表のとおり、7郵政局においては、どちらか一方の製造会社のものしか配備されていなかった。これを上記の落札実績と併せてみると、これらの7郵政局では、原則として「右流れ」のものか「左流れ」のものしか配備されていないことになる。
契約相手方 | 郵政局 | 郵便物の流れ方 |
東芝のみ | 北海道、信越、北陸、九州、沖縄(注) | 右流れ |
日本電気のみ | 東北、四国 | 左流れ |
2社併存 | 関東、東京、東海、近畿、中国 | 右流れ・左流れ |
(注) 沖縄は郵政管理事務所
また、2社併存となっている郵政局でも、中国郵政局においては、広島県及びその周辺の一部の地域は日本電気、それ以外の地域は東芝のものとなっており、その他の4郵政局においても、管内の郵便局単位でみれば、一部を除いて、同一の製造会社のものしか配備されていない状況となっていた。
このような旧型区分機の調達における落札及び配備の状況は、9年度の新型区分機等の調達においても、次のとおり、ほぼ同様となっていた。
すなわち、郵便物の流れ方において、「右流れ」のものは東芝、「左流れ」のものは日本電気がそれぞれ入札し落札していた。そして、東芝製の旧型区分機が配備されている郵便局には東芝、日本電気製の旧型区分機が配備されている郵便局には日本電気の新型区分機等が配備されており、結局、作業性を考慮して郵便物の流れ方を変更した3郵便局を除いて、上記の表のように北海道ほか6郵政局では郵政局単位で、残りの関東ほか4郵政局では郵便局単位で製造会社が固定化されている状況であった。なお、日立が落札した1台(右流れ)の配備先は、新規に区分機が配備される郵便局であった。
このような状況の中で、配備される新型区分機等の製造会社があらかじめ特定されていると認められる事態が、次のとおり見受けられた。
(ア) 郵政本省における予備部品の規格の指示
9年度歳出による調達では、予備部品の調達を新型区分機等の調達契約の中で併せて行っており、その際、仕様書の添付文書である予備部品リストの中で搬送用のベルトについての規格を示していた。
しかし、新型区分機等に用いられる長さが最長の搬送用のベルトの幅は、東芝製の区分機は40mm、日本電気製の区分機は60mmとなっているなど、製造会社によって異なることから、製造会社が特定されていなければ、こうした搬送用のベルトの幅を示すことはできない。
なお、9年度国債による調達では、これら予備部品を新型区分機等とは別に調達することとしたため、新型区分機等の仕様書に予備部品リストを添付していない。
(イ) 新型区分機等の配備に当たっての各郵政局の対応
各郵政局では、新型区分機等の円滑な導入を図るため、管内の郵便局に対して配備する新型区分機等の機種、台数などについてあらかじめ通達を発しているが、一部の郵政局においては、郵政本省の9年度歳出による調達の入札(9年5月16日)前の段階で特定の製造会社からの調達を前提にしていると認められる通達が発せられていた。
すなわち、東芝製の旧型区分機のみが配備されているある郵政局では、入札前の9年5月8日に管内の郵便局に対して、配備される新型区分機は東芝製のものと示していた。また、東芝製の旧型区分機のみが配備されている別の郵政局では、やはり入札前の同年4月18日に管内の郵便局に発した通達において、新型区分機等の配備に伴う電源工事等を行う上での仕様書を示しているが、この仕様書は東芝製のものが前提となっていた。
(2) 10年度の新型区分機等の調達について
9年度末に入札の公告が行われ10年度歳出予算(以下「10年度歳出」という。)により調達された新型区分機等は、41件の契約で計127台となっているが、これらの調達においても、41件の契約に係る入札はまとめて10年6月9日に行われていた。
一方、1契約当たりの調達台数については、9年度歳出では175台を機種等の別により1台から26台の24グループに分け、9年度国債においても同様のグループ分けであったが、10年度歳出では127台を1台から14台にグループ分けしており、結局41件の契約となっている。次に、納期については、18件(調達台数計103台)の契約において、9年度歳出の調達と同様、契約ごとの調達台数により2回から5回に分けていた。また、搬送用のベルトなどの予備部品については、9年度国債による調達と同様に新型区分機等の調達とは別に調達している。
これらの入札の結果、東芝が24件で84台(契約金額128億0708万余円)、日本電気が14件で33台(同79億7328万余円)、日立が3件で10台(同22億7220万円)を落札しているが、その入札及び落札の状況は次表のとおりとなっていた。
入札参加業者 | 入札件数 | 台数 | 契約金額 | 落札比率 | ||
最高 | 最低 | 平均 | ||||
東芝のみ | 件 9 |
台 28 |
百万円 3,147 |
% 99.22 |
% 96.55 |
% 97.97 |
日本電気のみ | 8 | 17 | 4,845 | 99.98 | 99.36 | 99.61 |
小計 | 17 | 45 | 7,993 | − | − | 98.74 |
東芝及び日立 | 13 | 41 | 9,513 | 99.53 | 77.09 | 86.94 |
東芝及び日本電気 | 11 | 41 | 5,546 | 95.53 | 75.26 | 83.67 |
小計 | 24 | 82 | 15,059 | − | − | 85.44 |
合計 | 41 | 127 | 23,052 | − | − | 90.96 |
これを9年度歳出による調達と比較してみると、9年度歳出における24件の契約はすべて1社のみの入札であるのに対して、10年度歳出においては41件の契約のうち24件の契約において東芝、日立又は東芝、日本電気の2社による入札が行われていた。
そして、41件のうち1社のみの入札であった17件の契約についてみると、その落札比率の平均は98.74%と9年度までの状況とほぼ同様であったが、2社による入札が行われた24件の契約についてみると、その落札比率の平均は85.44%と相当低下しており、中には落札比率が75.26%のものもあった。
このようなことから、全契約の落札比率の平均でみても、9年度歳出では99.95%、9年度国債では98.84%であったのに対して、10年度歳出では90.96%となっていた。
さらに、郵便物の流れ方における各社の入札状況についてみると、9年度までは一部の例外を除き日本電気は「左流れ」のもののみ、東芝及び日立は「右流れ」のもののみに参加していたが、10年度歳出においては東芝が「右流れ」のもののほかに「左流れ」のものにも11件参加し、5件の契約で合計25台の左流れの新型区分機等を落札している。
この結果、新型区分機が配備された75郵便局のうち、新型区分機と既設の旧型区分機とで製造会社が異なっている郵便局が13郵便局(東芝から日立に変更したものが7郵便局7台、日本電気から日立に変更したものが1郵便局1台、日本電気から東芝に変更したものが3郵便局3台、東芝から日本電気に変更したものが2郵便局2台)となっていた。そして、これらの郵便局の中には、前記の落札比率75.26%の契約による新型区分機の配備先も含まれていた。
4 本院の所見
上記の検査結果からみて、9年度歳出及び9年度国債による調達においては、必ずしも一般競争契約による競争の利益が十分に実現されているとはいえない状況にあると思料される。
一方、10年度歳出による調達においては、仕様書等の条件を緩和したりしていること、日立が13契約に係る入札に参加したこと、落札比率が相当低下したことなどからみて、9年度の調達と比べれば競争性が増していると考えられる。しかし、1社しか入札していない契約がなお4割程度あることなどから、競争性を更に高めることを検討する余地があると思料される。
したがって、郵政省においては、関係職員に対して一般競争契約の趣旨を十分理解させるとともに、会社間のより有効な競争によって経済性を確保するために、仕様書等の入札条件を緩和したり、納期に見合った入札時期を設定したりして、更に競争の余地が広がるような条件を整えることについて検討することが肝要であると認められる。