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  • 平成10年度|
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地域通信処理システムの整備に当たり、調達手続の開始前に電子計算装置を搬入し、据付調整等に着手させるなどしていたもの


(2) 地域通信処理システムの整備に当たり、調達手続の開始前に電子計算装置を搬入し、据付調整等に着手させるなどしていたもの

会計名及び科目
一般会計 (組織)防衛本庁 (項)装備品等整備諸費

部局等の名称 調達実施本部(要求元 海上幕僚監部) (1)〜(3)
海上自衛隊横須賀地方総監部 (4)
契約名 (1) 地域通信処理システム借上(船越用)
(2) 地域通信処理システム借上(舞鶴用)
(3) 地域通信処理システム借上(下総用)
(4) 「自衛艦隊司令部」ほか地域通信処理システム等工事
契約の概要
海上自衛隊の基地等に所在する各部隊等の間を結ぶテレタイプ、ファクシミリ等の通信システムに使用する電子計算装置の賃貸借等及び通信ケーブル等の設置工事

契約金額 (1) 11,550,000円
(2) 14,700,000円
(3) 11,130,000円
(4) 14,070,000円
51,450,000円
契約の相手方 (1)〜(3) 日本電子計算機株式会社
(4) 沖電気工事株式会社
契約 (1)〜(3) 平成11年2月 一般競争後の随意契約
(4) 平成11年3月 指名競争後の随意契約
支払 (1)〜(4) 平成11年4月
適正を欠くと認められる契約金額 (1) 11,550,000円
(2) 14,700,000円
(3) 11,130,000円
(4) 14,070,000円
51,450,000円

1 調達の概要

(地域通信処理システムの概要)

 海上自衛隊では、昭和52年度から、基地等に所在する各部隊等の間で、電子計算装置(以下「電算機」という。)を介したテレタイプ及びファクシミリの通信網を形成し、通信文の送受信を行っている。そして、この通信網を順次、データ処理速度及び他システムヘの連接性能を向上させるなどの改良を加えた新しい地域通信処理システム(Local Area Communication System。以下「LACS」という。)に更新している。
 そして、平成11年3月1日から、船越地区(横須賀市)、舞鶴地区及び下総航空基地(千葉県東葛飾郡沼南町)に所在する各部隊等の間でそれぞれLACSの運用を開始している(以下、それぞれを「船越地区LACS」、「舞鶴地区LACS」及び「下総地区LACS」という。)。

(契約の概要)

 上記の各LACSの整備に当たっては、電算機の賃貸借及び据付調整等については調達実施本部で、また、通信ケーブル等の設置工事については各地方総監部等で、それぞれ契約を締結し実施することとしている。

ア 調達実施本部の各契約について

 海上幕僚監部では上記の3地区においてLACSを整備するため、〔1〕  必要な電算機の設置に伴う据付調整等、〔2〕  運用を開始する11年3月の当初1箇月分の電算機の賃借を内容とする調達要求書を調達実施本部に対して発している。これを受けて、調達実施本部では、船越地区LACSについては11年2月15日に11,550,000円、舞鶴地区LACSについては同年2月24日に14,700,000円、下総地区LACSについては同年2月22日に11,130,000円で、いずれも一般競争入札後の随意契約により日本電子計算機株式会社と契約を締結し、それぞれ同年4月26日、同年4月22日及び同年4月16日に支払を了している。
 そして、これらのLACSの電算機の中枢部分の処理装置を含む大部分の機器は、上記の海上幕僚監部の調達要求書において、沖電気工業株式会社(以下「沖電気」という。)製品の相当品と明記されており、いずれの契約においても同社の製品が設置されている。

イ 横須賀地方総監部の契約について

 横須賀地方総監部では、船越地区LACSの整備に伴う通信・電源ケーブルの敷設、既設機器の撤去等を内容とする「自衛艦隊司令部ほか地域通信処理システム等工事」を11年3月5日に14,070,000円で、指名競争入札後の随意契約により沖電気工事株式会社(以下「沖電気工事」という。)と契約を締結し、同年4月23日に支払を了している。

(調達手続)

 上記の各契約に係る調達手続は、契約書等の関係書類によると、次のとおり行われたとしていた。

ア 調達実施本部の契約について

 調達実施本部では、3件の契約のうち船越地区LACSの契約に係る調達手続を次のとおり行っていた。

〔1〕  10年12月24日付けで海上幕僚監部から調達要求を受けた。

〔2〕  11年1月5日に一般競争入札の公告を行い、同月26日に入札を執行したが、応札業者は1社のみで、入札価格は予定価格を上回っていた。

〔3〕  1月27日に再度の一般競争入札の公告を行い、2月3日に再度の入札を執行したが、応札業者はその1社のみで、その入札価格は依然として予定価格を上回っていたため、随意契約への移行を前提とした価格交渉(商議)を行い、予定価格と同額で商議が成立した。

〔4〕  2月15日に支出負担行為認証官の審査を経た上、分任支出負担行為担当官が契約を締結した。

〔5〕  2月26日に船越地区の各使用責任者(支出負担行為担当官の補助者)が、電算機の引渡しに係る確認調書を作成し、その後、4月1日から4月5日までの間に3月分の電算機の使用実績確認書を作成した。

〔6〕  4月26日に支出官が契約代金11,550,000円を支払った。
 そして、調達実施本部では舞鶴地区LACS及び下総地区LACSについても、上記と同様の経過で調達手続を行っていた。

イ 横須賀地方総監部の工事契約について

 横須賀地方総監部では、前記の工事契約に係る調達手続を次のとおり行っていた。

〔1〕  11年2月22日付けで横須賀地方総監部経理部が同造修補給所から調達要求を受けた。

〔2〕  指名業者として10社を選定し、3月1日に10社に対して指名通知を行った。

〔3〕  3月5日に10社による入札を執行したが、いずれの入札価格も予定価格を上回っていた。そこで、2回目の入札を執行したが1社以外はすべて辞退し、入札価格も依然として予定価格を上回っていたため商議を行い、その結果、予定価格と同額で商議が成立した。そして、同日分任支出負担行為担当官がその1社と契約を締結した。

〔4〕  3月31日に検査官が工事完了の検査調書を作成した。

〔5〕  4月23日に資金前渡官吏が契約代金14,070,000円を支払った。

2 検査の結果

 上記の各契約について、実際の電算機の搬入等の状況及び工事の施工状況を検査したところ、次のとおり著しく適正を欠くものとなっていた。

ア 調達実施本部の各契約について

 船越地区LACSについては、実際は、海上幕僚監部の調達要求(10年12月24日)より前の10年11月25日に沖電気製の電算機の機器が搬入されていた。そして、同日から11年1月29日までの間に機器の据付調整、他システムとの連接試験及びLACSの作動確認が行われ、2月3日から2月26日までの間にLACSの試験運用が実施されていた(表1参照)
 すなわち、本件調達は、LACSの器材の仕様検討に当たって協力を得ていた沖電気に海上幕僚監部が要請して、調達手続を開始する前に電算機の機器を搬入し、据付調整、連接試験及び作動確認に着手させていたものであり、このように正規の調達手続を経ることなく着手させた行為は、国の会計制度の基本原則を逸脱し著しく適正を欠くと認められる。

地域通信処理システムの整備に当たり、調達手続の開始前に電子計算装置を搬入し、据付調整等に着手させるなどしていたものの図1

 また、舞鶴地区LACS及び下総地区LACSについても、上記とほぼ同様の経過で実施されていた。

イ 横須賀地方総監部の工事契約について

 船越地区LACSに係る工事の施工状況は、実際は、10年10月22日から12月16日までの間に通信・電源ケーブルの敷設等が施工されていた。そして、11年3月29日から31日までの間に既設の機器等が撤去されていた(表2参照)
 すなわち、本件調達は、沖電気に海上幕僚監部が要請して、調達手続を開始する前に、その子会社である沖電気工事が通信・電源ケーブルの敷設等の工事の施工を完了させていたものであり、このように正規の調達手続を経ることなく着手させた行為は、国の会計制度の基本原則を逸脱し著しく適正を欠くと認められる。

地域通信処理システムの整備に当たり、調達手続の開始前に電子計算装置を搬入し、据付調整等に着手させるなどしていたものの図2