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  • 平成10年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第2 総理府|
  • (防衛庁)|
  • 本院の指摘 に基づき当局において改善の処置を講じた事項

労務借上等の契約を締結するに当たり、予定価格に適用する総利益率の算定を適切に行うよう改善させたもの


(2) 労務借上等の契約を締結するに当たり、予定価格に適用する総利益率の算定を適切に行うよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)防衛本庁 (項)研究開発費
部局等の名称 技術研究本部
契約名 戦車砲用演習弾の性能確認試験のための労務借上ほか876契約
契約の概要 技術研究本部の業務計画に定められた装備品等の技術研究開発を実施する際に、これらの技術研究開発を補助させるもの
契約の相手方 財団法人防衛技術協会
契約 平成9年4月〜11年2月 随意契約
支払額 11億3820万円(平成9、10両年度)
節減できた労務借上等の費用 3650万円(平成9、10両年度)

1 契約の概要

(労務借上等の契約の概要)

 技術研究本部では、年度業務計画に定められた研究、開発又は試験(以下「研究等」という。)を実施する際に、研究等を補助させることを目的として、労務借上、役務請負及び委託の契約(以下、これらを「労務借上等契約」という。)を会社等と締結している。
 技術研究本部では、上記の労務借上等契約について、研究等を補助させる業務の内容によって次のように区分している。

(ア) 労務借上契約は、場所、期限、作業内容を指定して、契約相手方の技術者を作業に従事させ、その役務に対して代金を支払う契約である。

(イ)役務請負契約は、契約相手方が物品の組立、調整、改造、修理等の役務を行い、期限までに指定する場所においてこれを完了し、その役務に対して代金を支払う契約である。

(ウ)委託契約は、契約相手方が調査、研究及び設計を実施し、納期までに指定する場所においてその成果品を提出し、その実施に要した経費を支払う契約である。

(予定価格の算定)

 技術研究本部の支出負担行為担当官及び各研究所等の契約担当官(以下「契約担当官等」という。)においては、労務借上等契約の予定価格を次のように算定している。

〔1〕  仕様書で規定された作業に必要な技術者の職種ごとの予定勤務日数に、1日当たりの作業時間を乗じて職種ごとの作業時間数(以下「工数」という。)を算出する。

〔2〕  工数に、技術研究本部から通知された職種ごとの加工費率(1時間当たりの労務費と製造間接費の合計)を乗じるなどして製造原価を算出する。

〔3〕  製造原価に、技術研究本部から通知された総利益率(製造原価に対する一般管理費及び販売費、支払利子、利益の所定の率)を乗じた金額を加えるなどして計算価格を算出する。

〔4〕  計算価格に、消費税法(昭和63年法律第108号)及び地方税法(昭和25年法律第226号)に基づき、消費税率及び地方消費税率の計5%(以下「消費税率」という。)を乗じて算出した額(以下、これらを「消費税額」という。)を加え、予定価格を算定する。

(総利益率等の算定)

 技術研究本部では、契約担当官等が労務借上等契約の予定価格の算定に当たって、契約相手方ごとに適用する加工費率及び総利益率(以下、これらを「総利益率等」という。)を毎年度定めている。
 そして、この総利益率等については、調達実施本部又は各自衛隊の部隊が契約の締結時までに当年度の総利益率等を算定している場合はこれを適用し、算定していない場合は技術研究本部が自ら算定することとしている。
 技術研究本部が自ら総利益率等を算定する場合には、会社等から当年度の一般管理費、販売費等の経費見積額を提出させ、この経費見積額の妥当性等を検証するため、更に過年度の財務諸表、製造原価明細書、一般管理費及び販売費明細書等の資料を提出させている。そして、提出された過去の実績額を参考に上記経費見積額を査定するなどして総利益率等を算定し、これを契約担当官等に通知している。
 このうち総利益率は、上記によって査定した一般管理費及び販売費の経費見積額を売上原価の見積額で除するなどして算定している。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 技術研究本部が労務借上等契約を締結するに当たり、予定価格の算定に適用する総利益率等は適切に算定されているかに着眼して検査した。

(検査の対象)

 技術研究本部ほか10研究所等(注) において、平成9、10両年度に財団法人防衛技術協会(以下「技術協会」という。)と締結した労務借上等契約877件、総額11億3820万余円を対象として検査を実施した。

(検査の結果)

 検査したところ、総利益率の算定が次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
 すなわち、技術研究本部では10年度の総利益率の算定に当たり、技術協会から提出させた当年度の一般管理費及び販売費の経費見積額を、前3事業年度の実績額を参考にするなどして152,025,000円としていた。さらに、この額に技術協会における総売上見込額に占める労務借上等契約の売上見込額の割合を乗じるなどして126, 185,000円とし、これを10年度の技術協会の労務借上等契約に係る売上原価の見積額335,084,000円で除するなどしていた。
 しかし、技術研究本部が技術協会から提出させた上記の経費見積額の租税公課相当額には消費税額相当額21,593,000円が含まれていたのに、これを控除しないまま総利益率を算定し契約担当官等に通知していた。そして、契約担当官等は、技術研究本部から通知された上記の総利益率を適用して計算価格を算出し、これに消費税率を乗じて算出した消費税額を加えて予定価格を算定していた。
 このような予定価格の算定方法は9年度においても同様な事態となっていた。
 したがって、契約担当官等が予定価格を算定するに当たっては、計算価格に消費税額を加えることとなっているのであるから、技術研究本部では、総利益率の算定において消費税額相当額を控除する必要があると認められた。

(節減できた労務借上等の費用)

 上記により、消費税額相当額を控除して総利益率を算定し、これを適用して修正計算すると、9、10両年度の労務借上等の費用は約3650万円節減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、技術研究本部において次のようなことなどによると認められた。

(ア) 原価計算業務全般についての審査及び監査の体制が十分でなかったこと

(イ) 総利益率の算定に当たり消費税額の取扱いについて十分理解していなかったこと

(ウ) 会社等から提出させる総利益率算定資料の様式に、租税公課の内訳を明示するようにしていなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、技術研究本部では、11年10月に総利益率の算定等を適切に行うこととする次のような処置を講じた。

(ア) 新たに原価計算業務全般の審査を専門の職員に担当させ、これらを首席会計監査官等に監査させるなど、審査及び監査体制の整備を図った

(イ) 通知文書を発するなどして、消費税額の取扱いについて徹底を図った

(ウ) 租税公課の内訳が明らかになるよう会社等から提出させる総利益率算定資料の様式を改正した

(注)  技術研究本部ほか10研究所等  本部、第一、第二、第三、第四、第五各研究所、第二研究所飯岡、第五研究所川崎両支所及び下北、土浦、岐阜各試験場