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義務教育費国庫負担金等の経理が不当と認められるもの


(28)−(35) 義務教育費国庫負担金等の経理が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)文部本省 (項)義務教育費国庫負担金
(項)養護学校教育費国庫負担金
部局等の名称 岩手県ほか6県
国庫負担の根拠 義務教育費国庫負担法(昭和27年法律第303号)、公立養護学校整備特別措置法(昭和31年法律第152号)
事業主体 岩手県ほか6県(平成7年度2県、8年度4県、9年度5県)
国庫負担の対象 公立の小学校及び中学校並びに盲学校、聾(ろう)学校及び養護学校の小学部及び中学部に要する経費のうち教職員給与費等
上記に対する国庫負担金交付額の合計 299,043,811,216円
不当と認める国庫負担金交付額 58,607,275円

1 国庫負担金の概要

(義務教育費国庫負担金等の概要)

 義務教育費国庫負担金及び養護学校教育費国庫負担金は、義務教育費国庫負担法(昭和27年法律第303号)及び公立養護学校整備特別措置法(昭和31年法律第152号)に基づき、公立の義務教育諸学校(小学校及び中学校並びに盲学校、聾(ろう)学校及び養護学校の小学部及び中学部)に要する経費のうち都道府県の負担する教職員給与費等の経費について、原則としてその実支出額を国庫負担対象額とし、その2分の1を国が負担するため都道府県に交付するものである。

 ただし、〔1〕 財政力指数(注1) が1を超える都道府県、〔2〕 財政力指数が1以下で、かつ、教職員の実数が標準定数を超えているか又は教職員の給与水準が国立の義務教育諸学校の教職員の水準を上回っている都道府県については、「義務教育費国庫負担法第二条但書の規定に基き教職員給与費等の国庫負担額の最高限度を定める政令」(昭和28年政令第106号)等により、その財政力に応じて、国庫負担額の最高限度が定められている。

 上記の教職員の標準定数は、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(昭和33年法律第116号)等に基づき、都道府県全体の公立の義務教育諸学校について、学校の種類(小学校、中学校など)及び職種区分ごとに、学校数、学級数等を基礎として算定されることとなっている。そして、養護教諭等の標準定数の算定に当たっては、同一の設置者が設置する3学級の小学校と3学級の中学校の敷地が同一である場合又は500mの範囲内にある場合は、両校を併せて1校とみなすこととなっている。
 そして、国庫負担額の最高限度は、次のように算定した国庫負担対象額の2分の1とすることとされている。

(1) 財政力指数が1を超える都道府県について

 当該年度の5月1日現在において算定した教職員の標準定数の合計数に、同日現在における休職者等の実数を加えるなどして算定した数を教職員定数とし、この教職員定数に、毎年度、教職員給与費等の種類ごとに別に政令で定める額を乗ずるなどして算定した額の合計額

(2) 財政力指数が1以下の都道府県について

 教職員の職種等の区分ごとに、教職員給与費等の種類ごとの実支出額から次の額を控除するなどして算定した額の合計額

〔1〕  教職員の毎月の実数と毎月算定した標準定数とを比較して、実数が標準定数を超過する場合に、その超過する割合を給料等の実支出額に乗じて算定した額

〔2〕  特殊勤務手当等について、国家公務員の例に準じて、毎年度、文部大臣が大蔵大臣と協議して定めるところにより算定した額を超過した額

〔3〕  義務教育諸学校の教員の身分を保有したまま教育委員会事務局、学校以外の教育機関等に勤務する教職員のうち、充て指導主事(注2) (主に義務教育諸学校に関する指導主事の事務に従事している者に限る。)以外の者(以下「教育委員会事務局等勤務者」という。)に係る給与費等の額

(注1)  財政力指数 地方交付税法(昭和25年法律第211号)第14条の規定により算定した基準財政収入額を同法第11条の規定により算定した基準財政需要額で除して得た数値で当該年度前3年度内の各年度に係るものを合算したものの3分の1の数値

(注2)  充て指導主事 地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和31年法律第162号)第19条の規定により、大学以外の公立学校の教員の身分を保有したまま指導主事に充てる旨の発令を受けて、学校における教育課程、学習指導その他学校教育に関する専門的事項の指導に関する事務(指導主事の事務)に従事している者

2 検査の結果

 北海道ほか26都府県について検査したところ、財政力指数が1以下の岩手県ほか6県において、国庫負担金58,607,275円が過大に交付されていて不当と認められる。これは、国庫負担対象額を算定するに当たり、教職員の給与関係の事務を所掌する部署において、国庫負担の対象となる研修生の実態把握、諸手当に係る国庫負担対象の範囲についての認識、決算額等調書に対する精査が十分でなかったことなどによるものである。
 これを態様別に示すと次のとおりである。

〔1〕  養護教諭等の標準定数の算定を誤っていたもの

和歌山県

〔2〕  特殊勤務手当に係る国家公務員の例に準ずるべき額の算定を誤っていたもの

 高知県

〔3〕  教育委員会事務局、学校以外の教育機関に勤務する教員のうち、国庫負担の対象にならない者に係る給与費等を含めて国庫負担対象額を算定していたもの

 岩手、奈良、鹿児島各県

〔4〕  国庫負担の対象にならない用務員等に係る給与費等を含めて国庫負担対象額を算定していたもの

 新潟、鹿児島両県

〔5〕  国庫負担対象額の算定の資料に金額を誤って記入していたもの

 滋賀県

 これを県別に示すと次のとおりである。


県名 年度 国庫負担対象額 左に対する国庫負担金 不当と認める国庫負担対象額 不当と認める国庫負担金



千円 千円 千円 千円

(義務教育費国庫負担金)

(28) 岩手県 7 86,083,206 43,041,603 22,130 11,065


8 85,863,555 42,931,777 21,630 10,815


小計 171,946,761 85,973,380 43,761 21,880

 岩手県では、7、8両年度とも、学校以外の教育機関に研修生として派遣している教員3人に係る給与費等を含めて国庫負担対象額を算定していた。
 しかし、これらの教員は、研修を受けているとしていたが、実際は、学校以外の教育機関で職員と同様の職務に従事していて、教育委員会事務局等勤務者に該当し、国庫負担の対象にならないものであるから、これらの者に係る給与費等を含めて国庫負担対象額を算定したのは誤りである。
 この結果、国庫負担対象額が7年度22,130,402円、8年度21,630,873円それぞれ過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、7年度43,030,538,198円、8年度42,920,962,080円となり、7年度11,065,201円、8年度10,815,437円、計21,880,638円が過大に交付されていた。

(29) 奈良県 8 67,403,265 33,701,632 21,207 10,603


9 68,668,271 34,334,135 885 442


小計 136,071,536 68,035,768 22,093 11,046

 奈良県では、学校以外の教育機関に研修生として派遣している教員8年度2人、9年度1人に係る退職手当等を含めるなどして国庫負担対象額を算定していた。
 しかし、これらの教員は、義務教育に関する研修を受けているとしていたが、実際は、高等学校教育に関する研修を受けるなどしていて、教育委員会事務局等勤務者に該当し、国庫負担の対象にならないものであるから、これらの者に係る退職手当等を含めるなどして国庫負担対象額を算定したのは誤りである。
 この結果、国庫負担対象額が8年度21,207,993円、9年度885,754円それぞれ過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、8年度33,691,028,550円、9年度34,333,692,974円となり、8年度10,603,996円、9年度442,877円、計11,046,873円が過大に交付されていた。

(30) 和歌山県 9 63,791,932 31,895,966 12,856 6,428

 和歌山県では、同一の設置者が設置し、敷地が500mの範囲内にある3学級の小学校1校と3学級の中学校1校をそれぞれ1校とし、2箇所において計4校として養護教諭等の標準定数を算定していた。
 しかし、このような場合には、小学校と中学校を併せて1校とみなすこととなっているのであるから、2箇所で計2校とすべきであるのに、計4校として標準定数を算定したのは誤りであり、このため、養護教諭等の標準定数が2人過大になっていた。
 この結果、国庫負担対象額が12,856,448円過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、31,889,537,832円となり、6,428,224円が過大に交付されていた。

(31) 高知県 8 49,345,278 24,672,639 2,362 1,181


9 50,380,601 25,190,300 2,324 1,162


小計 99,725,880 49,862,940 4,687 2,343

 高知県では、8、9両年度とも、特殊勤務手当の一種である教育業務連絡指導手当(以下「主任手当」という。)について、同県が拡大主任(注) としている主任のうち3学級から5学級の学校に置かれた主任に係る支給額を含めるなどして国庫負担対象額を算定していた。
 しかし、国家公務員の例に準じて文部大臣が大蔵大臣と協議して定めるところによれば、国庫負担の対象となる拡大主任は、6学級以上の学校に置かれる主任等に限ることとされているのに、これを下回る規模の学校に置かれた主任に係る支給額を含めるなどして国庫負担対象額を算定したのは誤りである。
 この結果、国庫負担対象額が8年度2,362,800円、9年度2,324,600円それぞれ過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、8年度24,671,458,011円、9年度25,189,138,545円となり、8年度1,181,400円、9年度1,162,300円、計2,343,700円が過大に交付されていた。  

(注)  拡大主任  主任手当の創設当初からその支給対象となっていた教務主任、学年主任等に加え、昭和53年以降、都道府県においてその支給対象として追加された主任等。同年に国立学校において2種類の主任(6学級以上の学校に置かれるものに限る。)が支給対象として追加されたことに準じて、支給対象とする主任等の範囲を拡大したもの。

(32) 鹿児島県 9 112,491,567 56,245,783 8,415 4,207

 鹿児島県では、教育委員会事務局に勤務する教員1人に係る給与費等を含めるなどして国庫負担対象額を算定していた。
 しかし、この教員は、教育委員会事務局等勤務者に該当し、国庫負担の対象にならないものであるから、この者に係る給与費等を含めるなどして国庫負担対象額を算定したのは誤りである。
 この結果、国庫負担対象額が8,415,846円過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、56,241,575,835円となり、4,207,923円が過大に交付されていた。

(養護学校教育費国庫負担金)

(33) 新潟県 7 5,907,644 2,953,822 11,566 5,783

 新潟県では、高等養護学校に勤務する寮母1人に係る退職手当を含めるなどして国庫負担対象額を算定していた。
 しかし、高等養護学校は高等部のみを設置する養護学校であるため、これに勤務する者は、国庫負担の対象にならないものであるから、この者に係る退職手当を含めるなどして国庫負担対象額を算定したのは誤りである。
 この結果、国庫負担対象額が11,566,651円過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、2,948,038,785円となり、5,783,325円が過大に交付されていた。

(34) 滋賀県 8 3,113,564 1,556,782 11,219 5,609

 滋賀県では、退職手当に係る国庫負担対象額を算定するに当たり、その算定の資料に金額を誤って記入するなどしていた。
 この結果、国庫負担対象額が11,219,396円過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、1,551,172,344円となり、5,609,698円が過大に交付されていた。

(35) 鹿児島県 9 5,038,735 2,519,367 2,613 1,306

 鹿児島県では、養護学校に勤務する用務員等3人に係る給与費等を含めて国庫負担対象額を算定していた。
 しかし、用務員等は、本来国庫負担の対象にならないものであるから、これらの者に係る給与費等を含めて国庫負担対象額を算定したのは誤りである。
 この結果、国庫負担対象額が2,613,788円過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、2,518,060,787円となり、1,306,894円が過大に交付されていた。

(28)−(35) の計 7 91,990,851 45,995,425 33,697 16,848
8 205,725,663 102,862,831 56,421 28,210
9 300,371,108 150,185,554 27,096 13,548
598,087,622 299,043,811 117,214 58,607