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  • 平成10年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第5 文部省|
  • 平成9年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項に対する処置状況

科学研究費補助事業の実施について


科学研究費補助事業の実施について

 (平成9年度決算検査報告参照)

1 本院が要求した改善の処置

(検査結果の概要)

 文部省では、我が国の学術を振興するため、あらゆる分野における優れた独創的・先駆的な学術研究を格段に発展させることを目的として、科学研究費補助事業を実施している。この事業は、大学等の研究者又は研究者グループが計画する基礎的研究について、その研究課題を公募し、その中から、学術研究の動向に即して、特に重要なものを取り上げ研究費用を助成するもので、文部省では、その研究助成費として科学研究費補助金(以下「科研費」という。)を交付している。
 科研費の交付を受けて研究を行った者は、研究成果を冊子体にまとめた研究成果報告書及びその概要を記した研究成果報告書概要(以下、これらを合わせて「研究成果報告書等」という。)を作成し、研究計画の最終年度の翌年度の4月に文部省に提出することとされている。
 科研費の研究成果については、民間企業の研究者等からも強い関心が寄せられており、これを積極的に社会に還元することが望まれている。また、科研費を含む国の研究費の有効使用や研究機関の効果的な機能整備等の観点から、学術研究における評価の充実が要請されている。
 そこで、科研費による研究の実施状況及び研究成果報告書等の提出状況について検査したところ、研究成果報告書等が提出されず研究成果が公開されないままとなっている事態が多数見受けられた。
 このような事態が生じているのは、主として、次のようなことによると認められた。

(ア) 科研費の目的・意義及び研究成果報告書等の提出・公開の必要性、重要性などについて、研究者の認識が不足していること

(イ) 文部省及び各大学等において、研究成果報告書等の提出状況の把握が十分でないこと

(ウ) 研究成果報告書等が未提出となっている研究者に対して新たに科研費の採択を行う際、文部省でその提出を励行させるための特段の措置を執っていないこと

(検査結果により要求した改善の処置)

 研究成果報告書等の提出の徹底を図り、科研費による研究の評価の充実に資するため、次のとおり、文部大臣に対し平成10年11月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。

(ア) 科研費の目的、研究成果報告書等の提出の重要性等について、研究者への啓蒙を徹底すること

(イ) 文部省及び各大学等で、研究成果報告書等の提出状況を適切に把握するとともに、未提出となっている研究者への督促の強化を図るなど効果的な措置を執ること

(ウ) 科研費の新規採択者のうち研究成果報告書等の未提出者について、今後の研究成果報告書等の提出を励行させるため、適切な措置を執ること

2 当局が講じた改善の処置

 文部省では、本院指摘の趣旨に沿い、11年9月までに、通知を発するなどして研究成果報告書等の提出の徹底を図り、科研費による研究の評価の充実に資するよう、次のような処置を講じた。

(ア) 科研費の目的、研究成果報告書等の提出の重要性等について、国立大学事務局長会議をはじめ各種会議において、研究者への啓蒙を行うよう指導を徹底した。

(イ) 研究成果報告書等の提出状況を調査・把握し、研究成果報告書未提出課題一覧を作成するとともに、研究成果報告書等が未提出の研究者が所属する各大学等に対して上記の一覧を送付し、研究成果報告書等の提出の督促を指導した。
 また、各大学等に対し、研究成果報告書等の提出状況を毎年度適切に把握し、未提出となっている研究者への督促の強化を図るよう指導した。

(ウ) 11年度科研費の交付の内定通知において、科研費の新規採択者のうち10年度以前に提出すべきであった研究成果報告書等の未提出者に対しては、各大学等で速やかに提出させるよう明示し、研究成果報告書等の提出を励行させるための措置を講じた。