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  • 平成10年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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職員の不正行為による損害が生じたもの


(135)−(139) 職員の不正行為による損害が生じたもの

会計名 厚生保険特別会計 船員保険特別会計 国民年金特別会計
部局等の名称 社会保険業務センター、茨城県福祉部保険課、蒲田社会保険事務所ほか2社会保険事務所
不正行為期間 平成元年7月〜10年9月
損害金の種類 厚生年金保険老齢厚生年金、国民年金保険料等
損害額 70,213,463円

 社会保険業務センター、茨城県福祉部保険課、蒲田社会保険事務所ほか2社会保険事務所において、関係職員の不正行為による損害が生じた主なものが5件、損害額で70,213,463円ある。このうち平成11年10月末現在で損害の補てんが終わっていないものが1件、損害額で39,108,697円(うち同月末現在補てんされた額1,381,299円)、損害額のすべてが補てん済みとなっているものが4件、損害額で31,104,766円となっている。
 上記の5件を補てんが終わっていないものと補てん済みとなっているものとに分けて示すと、次のとおりである。


部局等の名称 不正行為期間 損害額


年月

(ア) 平成11年10月末現在で損害の補てんが終わっていないもの

(135) 蒲田社会保険事務所 6.8から
10.9まで
39,108,697

 本件は、上記の部局において、年金専門官富井某が、次のように国民年金保険料を領得するなどしたものである。

〔1〕  分任収入官吏として国民年金保険料の収納事務に従事中、被保険者から受領した国民年金保険料の一部を国庫に払い込まずに、同保険料計12,661,360円を領得した。

〔2〕  年金相談事務に従事中、年金の受給資格を満たしていない被保険者等19名から不正に金銭を受け取り、端末装置を使用し、当該被保険者等の保険料納付記録を改ざんするなどして、これらの者に厚生年金保険老齢厚生年金等計26,447,337円を不正に受給させた。

 なお、上記〔1〕 の損害額は全額が返納されておらず、〔2〕 の額は平成11年10月末までに計1,381,299円が被保険者等から返納されている。

(イ) 平成11年10月末現在で損害額のすべてが補てん済みとなっているもの

(136) 社会保険業務センター 元.7から
10.2まで
9,078,188

 本件は、上記の部局において、業務管理課の職員が、障害厚生年金の審査等の事務に従事中、架空の被保険者期間が含まれていた実姉の被保険者記録により、実姉に無断で厚生年金保険老齢年金の裁定請求を行い、自ら開設した金融機関口座に振り込ませるなどして、同年金を領得したものである。
 なお、本件損害額については、平成10年3月に全額が同人から返納されている。

(137) 茨城県福祉部保険課 6.7から
7.12まで
5,778,014

 本件は、上記の部局において、同課会計係の職員が、船員保険給付費の支払事務に従事中、知人の名を被保険者とした虚偽の船員保険傷病手当金の支払決議書等を作成し、その知人から使用を任されていた金融機関口座に傷病手当金等を振り込ませるなどして、これを領得したものである。
 なお、本件損害額については、平成8年5月に全額が同人から返納されている。

(138) 墨田社会保険事務所 5.6から
7.6まで
11,791,764

 本件は、上記の部局において、年金給付課の職員が、国民年金の支給決定の事務に従事中、端末装置を使用し、架空の国民年金障害基礎年金受給者の原簿を作成し、自ら開設したその受給者名義の金融機関口座に国民年金障害基礎年金を振り込ませるなどして、これを領得したものである。
 なお、本件損害額については、平成7年8月に全額が同人から返納されている。

(139) 練馬社会保険事務所 8.5から
9.1まで
4,456,800

 本件は、上記の部局において、分任収入官吏である国民年金業務課の職員が、国民年金保険料の収納事務に従事中、被保険者から受領した国民年金保険料の一部を国庫に払い込まずに、これを領得したものである。
 なお、本件損害額については、平成9年1月に全額が同人から返納されている。

(135)−(139) の計
(ア)、(イ)の計
4件
5件
31,104,766
70,213,463

 上記5件のほかに損害額が少額なものが5件あった。そして、このような会計に関係のある犯罪が発覚したときは、会計検査院法第27条において、本属長官等は直ちにその旨を本院に報告しなければならないと定められているが、これらの10件のうちには、発覚後その報告が著しく遅滞していたものがあった。
 これに対して、社会保険庁では、今後は、会計検査院法に基づく報告を適切に行うとしている。
 また、上記10件の主な発生原因は、〔1〕 端末装置を使用した磁気データの改ざん等に対する防止策が十分ではなかったこと、〔2〕日常の会計事務処理や内部監査において、当然に行われるべき帳票類の突合等が十分に行われていなかったことによると認められる。
 これに対して、社会保険庁では、平成11年11月に各都道府県に対して通知を発し、〔1〕磁気データの改ざん等による不正行為に対して新たな防止策を策定してこれを周知したり、〔2〕会計事務の適正な執行や内部監査について指導の徹底を図ったりして、不正行為の再発防止に努めることとしている。
 本院においても、社会保険庁における再発防止策の実施状況等について注視していくこととする。