会計名及び科目 | 国立病院特別会計 | (病院勘定) (療養所勘定) |
(項)病院経営費 (項)療養所経営費 |
部局等の名称 | 国立病院東京医療センターほか2病院 | ||
契約名 | 設備機器等維持管理業務委託ほか5契約 | ||
契約の概要 | 電気設備の保守管理、蒸気ボイラー設備の運転管理等の建築保全業務を行わせるもの | ||
契約金額 | 1億4833万余円 | ||
契約の相手方 | 日本ビルシステム株式会社ほか2会社等 | ||
契約 | 平成10年4月〜11年3月 指名競争契約、指名競争後の随意契約 |
直接労務費の積算額 | 1億3933万余円 |
低減できた積算額 | 3270万円 |
1 契約の概要
国立病院、国立療養所及び国立高度専門医療センター(以下「病院」という。)では、次に示すような施設、設備の保全業務(以下「建築保全業務」という。)の全部又は一部をビル管理会社等に委託し実施しているものがある。
〔1〕 病院施設内で使用する電力の受変電設備、自家発電設備等の電気設備の保守管理
〔2〕 入院患者等のための炊事、暖房等の熱源を供給する蒸気ボイラー設備等の運転管理
〔3〕 火災等に対して集中管理し対処するための防災センター等での火災報知等監視盤等の監視
〔4〕 病院施設内及び周辺の巡視警備
病院では、建築保全業務委託契約の予定価格を次のようにするなどして算定している。
(ア) 積算参考資料において一般に公表されている建築保全業務技術者等の日額の労務単価(以下「日割基礎単価」という。)を8時間で除し、1時間当たりの労務単価を算出する。ただし、午後10時から午前5時までの深夜勤務に係る労務単価については、この1時間当たりの労務単価に深夜勤務の割増率を加算した支給割合を乗じて算出する(以下、深夜勤務に係る労務単価のうち割増部分を「深夜割増額」という。)。
(イ) 仕様書に定める勤務時間に契約期間内の勤務回数を乗じて契約に係る業務の所要時間数を算出する。
(ウ) (ア)の1時間当たりの労務単価に(イ)の所要時間数を乗じて直接労務費を算定する。
(エ) 直接労務費に経費率及び消費税率を乗じて得た額を加算するなどして算定した合計額を委託費の積算額とする。
2 検査の結果
病院では、近年、共通管理的な業務の民間委託を一層推進するなどの経営合理化が求められており、勤務時間が深夜に係る建築保全業務委託契約も増えてきているが、その労務費などについて統一的な算定方法は定められていない。
そこで、平成10年度に建築保全業務委託契約を締結している国立病院東京医療センターほか3病院(注1)
(契約件数7件、契約総額1億5547万余円)を対象とし、深夜割増額及び所要時間数の算出が適切なものとなっているかという点に着眼して検査した。
検査したところ、国立病院東京医療センターほか2病院(注2) が日本ビルシステム株式会社ほか2会社等と締結した建築保全業務委託契約(契約件数6件、契約総額1億4833万余円)の直接労務費の積算(積算額計1億3933万余円)について、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
(1) 深夜割増額の算出の基礎となる労務単価について
上記の3病院では、深夜割増額について、前記の積算参考資料に掲載されている日割基礎単価を8時間で除して得た1時間当たりの労務単価に割増率を乗じることにより算出していた。
しかし、上記の日割基礎単価には、基本給のほか、関係法令により深夜等に勤務する場合の割増しの基礎となる賃金に算入しないこととされている家族手当、通勤手当等の手当及び賞与が含まれている。
したがって、深夜割増額の算出に当たり、日割基礎単価を用いていたのは適切でなく、積算参考資料において日割基礎単価とは別に掲載されている、夜勤単価等を算出する際の割増しの基礎となる1時間当たりの労務単価を用いて算出すべきであると認められた。
(2) 深夜割増率について
国立国際医療センターでは、深夜勤務に係る直接労務費の算定に当たり、一般職の国家公務員の深夜勤務の支給割合を準用するとして、1時間当たりの労務単価に100分の150の支給割合を乗じていた。
しかし、上記の支給割合100分の150は、その勤務が正規の勤務時間を超過し、かつ深夜に及んだ場合に、超過勤務の支給割合100分の125に深夜割増率100分の25を加算するもので、同センターの勤務形態は、仕様書により交替勤務制となっており、超過勤務を要しないものとなっている。
したがって、深夜割増額の算出に当たり労務単価に100分の150を乗じていたのは適切でなく、深夜割増率100分の25を乗じて算出すべきであると認められた。
(3) 契約業務に係る所要時間数について
前記の3病院では、仕様書において休憩時間を含んだ勤務時間を定めており、その勤務時間数に勤務回数を乗じて契約に係る所要時間数を算出し、この所要時間数に1時間当たりの労務単価を乗じることなどにより直接労務費を算定していた。
しかし、3病院が用いた前記の積算参考資料の日割基礎単価は、1日の実働時間を8時間として設定されているものであり、この日割基礎単価を8時間で除して得た1時間当たりの労務単価に、休憩時間を含めた時間数を乗じていたのは適切ではなく、休憩時間を除いた実働時間を乗じて直接労務費を算定すべきであると認められた。
上記(1)から(3)により、3病院の建築保全業務委託契約に係る直接労務費を修正計算すると計1億0661万余円となり、前記の積算額1億3933万余円を約3270万円低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、3病院において労務単価の適用についての理解が十分でなかったことなどにもよるが、厚生省において建築保全業務委託契約における労務費の取扱いについて十分に把握しておらず、勤務形態に応じた積算の基準を示していなかったことなどによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、厚生省では、11年3月には深夜割増額の算出について、また、10月には所要時間数の算出について、それぞれ積算の基準を定め、病院に対して通知を発し、建築保全業務委託契約の直接労務費の積算が適切に行われるよう周知徹底を図る処置を講じた。
(注1) 国立病院東京医療センターほか3病院 国立病院東京医療センター、国立療養所中部、近畿中央両病院、国立国際医療センター
(注2) 国立病院東京医療センターほか2病院 国立病院東京医療センター、国立療養所中部病院、国立国際医療センター