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  • 平成10年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 厚生省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

国立病院等の病棟等の建設工事、外壁の改修工事における外部足場費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの


(3) 国立病院等の病棟等の建設工事、外壁の改修工事における外部足場費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの

会計名及び科目 国立病院特別会計 (病院勘定)
(療養所勘定)
(項)施設整備費
(項)施設整備費
部局等の名称 厚生本省、北海道地方医務局ほか7地方医務(支)局
工事名 国立札幌病院外壁改修整備工事ほか41工事
工事の概要 国立病院等において病棟等の建物の建設及び外壁の補修、塗装等を行う工事
工事費 395億2908万余円
請負人 28会社及び4共同企業体
契約 平成7年2月〜11年3月 一般競争契約、指名競争契約、随意契約
外部足場費の積算額 4億0287万余円
低減できた積算額 9560万円

1 工事の概要

(国立病院等の病棟等の建設工事、外壁の改修工事)

 厚生省では、国立病院、国立療養所及び国立高度専門医療センター(以下「病院」という。)の病棟、診療棟、研究棟等(以下「施設」という。)の建設工事や老朽化した施設の外壁等の補修、塗装等を行う改修工事(以下「外壁改修工事」という。)を毎年度多数施行している。

(外部足場費の積算)

 病院の施設の建設工事、外壁改修工事の施行に当たっては、建物の外壁の周囲に地上等から所定の高さまで鋼製の建枠等を順次組み上げ、安全のためネット状の養生シートを張るなどした外部作業用の足場(以下「外部足場」という。)が必要となる。
 厚生本省、北海道地方医務局ほか7地方医務(支)局等(注1) では、施設の建設工事、外壁改修工事の工事費は、厚生省制定の「建築工事積算基準」(以下「積算基準」という。)等に基づいて積算することとなっている。この積算基準等によると、外部足場費は、外部足場の架設・撤去に係る工事費と、外部足場用資材の損料(以下「足場損料」という。)から構成されており、このうち足場損料については、外部足場の設置面積に1m 当たりの損料及び設置期間(外部足場の架設から施工を経て撤去までの期間)を乗ずるなどして積算することとなっている。そして、この設置期間については、積算基準に1階建ての建物を建設する場合の70日から10階建ての建物を建設する場合の295日までの日数がそれぞれ定められている。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 近年、高層の施設の新築工事や同一敷地内で診療等を続けながらの建て替え工事など工期が長期にわたる建設工事が増加している。また、施設の経年等による損耗に伴って外壁等の改修工事が毎年度多数施行されている。そこで、このような場合の外部足場の設置期間の算定が施工の実態に基づいて適切に行われているかなどの点に着眼して検査した。

(検査の対象)

 厚生本省、北海道地方医務局ほか7地方医務(支)局が積算を行った平成6年度から10年度までの国立札幌病院ほか30病院(注2) における施設の建設工事及び外壁改修工事計42工事(工事費総額395億2908万余円、外部足場設置面積計191,484m2 に対する外部足場費積算総額4億0287万余円)を対象として検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、外部足場の設置期間の算定について次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

(1) 施設の建設工事について

 高層の施設など工期が数年度にわたる長期間の建設工事においては、積算基準によって外部足場の設置期間を算定できないことから、工事の工程表によるなどして設置期間を算定していた。その際、外部足場の全設置面積の設置期間を建設工事の工期とほぼ同程度の期間とするなどしていた。
 しかし、外部足場は工事の進ちょくに合わせて順次組み上げられるものであるから、外部足場の必要な設置期間は上層階ほど短い。したがって、各階層ごとの工事の工程を考慮し、階層ごとに必要な外部足場の設置期間を算定して、足場損料を積算すべきであると認められた。

(2) 施設の外壁改修工事について

 外壁改修工事において、積算基準が想定している事務庁舎等を建設する際の外部足場の設置期間を、そのまま適用するなどして足場損料を積算していた。
 しかし、外壁改修工事は、補修、塗装等を行うものであり、着工段階で建物の外壁全面に外部足場を架設するものの、施工内容、方法等が標準化されていることから、一般に、その工期は建設工事に比べて短い。したがって、積算基準が想定している事務庁舎等を建設する際の外部足場の設置期間を適用するなどして外壁改修工事の足場損料を積算するのは適切でなく、建物の階層等に応じた外壁改修工事の標準的な施工日数に基づき、外部足場の設置期間を設定して足場損料を積算すべきであると認められた。

(低減できた積算額)

 上記により、本件各工事における外部足場費を修正計算すると、施設の建設工事及び外壁改修工事の積算額計4億0287万余円は、計3億0720万余円となり、約9560万円が低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、厚生省において、足場損料の積算に当たり、積算基準により難い建設工事における工期が数年度にわたる場合や外壁改修工事の場合について外部足場の設置期間の取扱いを明確に定めていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、厚生省では、11年10月に、外部足場の設置期間の算定に当たり、積算基準により難い工期が数年度にわたる建設工事については、建物の各階層ごとの工事の工程を考慮した設置期間とするなどその取扱いを明確にするとともに、外壁改修工事については標準的な設置期間を定め、各地方医務(支)局等に対して通知を発し、同年11月以降契約を行う工事から適用することとする処置を講じた。

(注1)  北海道地方医務局ほか7地方医務(支)局  北海道、東北、関東信越、東海北陸、近畿、中国四国、九州各地方医務局、四国地方医務支局

(注2)  国立札幌病院ほか30病院  札幌、函館、登別、高崎、埼玉、相模原、大阪、大田、岡山、福山、佐賀、長崎中央、別府の各国立病院、帯広、道北、八雲、宮城、道川、西新潟中央、東名古屋、三重、南京都、近畿中央、西奈良、津山、賀茂、徳島、志布志の各国立療養所、国立病院東京医療センター、国立精神・神経センター武蔵病院、国立国際医療センター