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  • 平成10年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 工事

道路建設工事の施行に当たり、設計が適切でなかったため横断暗きょ管の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの


(140) 道路建設工事の施行に当たり、設計が適切でなかったため横断暗きょ管の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの

会計名及び科目 国営土地改良事業特別会計 (項)土地改良事業費
部局等の名称 関東農政局
工事名 那珂川沿岸農業水利事業(一期)御前山ダム工事用道路その1工事
工事の概要 ダム工事用道路を建設するため、平成9、10両年度に土工、横断暗きょ工等を施工するもの
工事費 325,500,000円
(当初契約額241,500,000円)
請負人 住友建設株式会社
契約 平成9年12月 指名競争契約
しゅん功検査 平成11年3月
支払 平成10年1月、11年4月 2回
不適切な設計となっている工事費 7,610,494円

1 工事の概要

 この工事は、関東農政局が、那珂川沿岸農業水利事業の一環として茨城県東茨城郡御前山村においてダム堤体の盛立材を原石山からダム建設現場まで運搬するための道路延長630mを建設するため、平成9、10両年度に土工、法面保護工、横断暗きょ工等を、設計を含めて工事費325,500,000円で請け負わせ実施したものである。
 このうち横断暗きょ工は、道路山側法面の雨水等を排水するため、道路下を横断する内径600mmの暗きょ管(以下「管きょ」という。)延長59.0mを布設したものである。
 そして、その設計計算においては、管頂部における埋戻し幅が管外径の2倍未満などの場合(この場合を「溝型」という。)の計算式を用い、最大土被り厚を10.1mとするなどとして、管きょに作用する土圧等の計算を行い、これにより管きょに生じる最大曲げモーメント(注1) を算出していた。その結果、使用する管種をプレストレストコンクリート管(二種管。管外径738mm)とし、また、管きょの基礎をコンクリートによる90度固定基礎とすれば、管きょに生じる最大曲げモーメントは0.720tf・mとなり、許容曲げモーメント(注1) 0.820tf・mを下回っていることから、応力計算上安全であるとし、これにより施工していた(参考図参照)

2 検査の結果

 検査したところ、管きょの設計が次のとおり適切でなかった。
 すなわち、設計図面によれば、この管きょを掘削底面の幅を管外径の2倍以上の1,950mm、法勾配を5分(注2) で現地盤を掘削して布設し、埋め戻した後、所定の計画高さまで盛土することとなっており、管頂部における埋戻し幅は2,988mmで管外径の約4倍となっていた。そして、実際の施工においても、設計図面に基づき、現地盤を掘削して管きょを布設し、埋め戻していた。
 しかし、このように管頂部の埋戻し幅が広い場合には土圧計算の対象となる範囲が広くなり、その分、管きょに作用する土圧も大きくなることから、設計計算においては、管頂部における埋戻し幅が管外径の2倍以上あるなどの場合(この場合を「突出型」という。)の計算式を用いるべきであった(参考図参照)
 そこで、本件管きょについて、突出型として改めて応力計算を行うと、管きょに生じる最大曲げモーメントは1.347tf・mとなり、許容曲げモーメント0.820tf・ m を大幅に上回っていて、応力計算上安全な範囲を超えている。
 このような事態が生じていたのは、請負人から提出された設計図書等に誤りがあったのに、これに対する審査が十分でなかったことなどによる。
 したがって、本件管きょは、設計が適切でなかったため所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る工事費相当額7,610,494円が不当と認められる。

(注1)  最大曲げモーメント・許容曲げモーメント 「最大曲げモーメント」とは、外力が材に作用し、これを曲げようと材に生じる力の最大値をいう。その数値が設計上許される上限を「許容曲げモーメント」という。

(注2)  法勾配5分  土木工事においては、勾配は通常斜面を斜辺とする直角三角形の縦の辺の長さに対する横の辺の長さの比で表わされ、例えば、高さ1mに対して長さが0.5mの場合を「5分」という。

(参考図)

(参考図)