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  • 平成10年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第7 農林水産省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

農業構造改善事業における製造請負工事による施設の設置に当たり、農業協同組合連合会に対する手数料の低減を図るよう改善させたもの


(1) 農業構造改善事業における製造請負工事による施設の設置に当たり、農業協同組合連合会に対する手数料の低減を図るよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)農林水産本省 (項)農業構造改善対策費
部局等の名称 農林水産本省、東北、関東、北陸、東海、近畿、中国四国、九州各農政局、沖縄総合事務局
補助の根拠 予算補助
事業主体 町5、村2、農業協同組合102、その他11、計120事業主体
補助事業 地域農業基盤確立農業構造改善事業等
補助事業の概要 乾燥調製施設、農畜産物集出荷貯蔵施設等の農業近代化施設の整備を行うもの
製造請負工事費 313億9528万余円 (平成8、9両年度)
上記に対する国庫補助金相当額 151億5784万余円
上記の工事費のうち農業協同組合連合会の手数料 15億2639万余円
低減できた手数料 4億2619万円 (平成8、9両年度)
上記に対する国庫補助金相当額 2億0767万円

1 農業近代化施設の整備事業の概要

(事業の概要)

 農林水産省では、農地保有の合理化、農業経営の近代化を内容とする農業構造の改善を図る施策の一環として、国庫補助事業により農業構造改善事業を実施しており、平成8、9両年度には、地域農業基盤確立農業構造改善事業等(注1) を実施している。
 この事業等においては、農産物の生産・流通加工コストの低減、農産物の高品位安定化・付加価値の向上などを図るため、乾燥調製施設、農畜産物集出荷貯蔵施設等の農業近代化施設(以下「施設」という。)の整備事業を実施している。

(系統施行の概要)

 農林水産省では、「「農業構造改善補助対象事業事務取扱いについて」の一部改正について」(昭和50年構改B第1819号)に基づき、国庫補助事業として実施する施設整備の施行方法を直営施行、請負施行、委託施行又は系統施行によるものと定めている。
 これらの施行方法のうちほぼ半数を占めている系統施行は、事業主体である農業協同組合、農業者の組織する生産組合等が、事業施行管理能力を有する農業協同組合連合会(全国農業協同組合連合会(以下「全農」という。)及び都道府県経済農業協同組合連合会。以下、両者を合わせて「農協連」という。)に対し、施設等の基本設計の作成、実施設計書の作成又は検討、工事の施行(契約の締結を含む。)、施工管理等を一括して委託して整備事業を施行する方法である。
 そして、施設整備を系統施行により行う場合には、事業主体を代行して農協連が事業執行に係る業務を行うこととなっているため、「第2次農業構造改善事業促進対策補助対象事業費の取扱いについて」(昭和50年構改B第1818号。以下「通達」という。)により、系統施行業務に必要となる農協連の経費(以下「系統経費」という。)を補助対象事業費に計上することが認められている。

(建設工事における系統施行管理料)

 上記の通達において、施設整備の積算は、建設工事、製造請負工事等に分けて行うこととされていて、建屋の建築は建設工事として、また、建屋内に据え付けられる乾燥機、選果機等の機械・設備の製造と組立て・据付けは製造請負工事としてそれぞれ積算することとされている。そして、系統経費は、系統施行管理料として、原則として工事費の4.5%が上限とされていて、農林水産省では、この取扱いは建設工事についてのみ適用するものとしていた。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 農林水産省では、上記のとおり、建設工事の系統経費については系統施行管理料として定めているが、製造請負工事においてはその取扱いを定めていない。
 そこで、製造請負工事における系統経費の積算が適切に行われているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象)

 北海道ほか42都府県(注2) において、210事業主体が8、9両年度に地域農業基盤確立農業構造改善事業等により、系統施行で整備した施設の製造請負工事296件、工事費総額526億6161万余円(国庫補助金相当額255億7786万余円)を対象として検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、製造請負工事費は、機械・設備本体の製造価格、現場における組立・据付工事費(以下、両者を合わせて「本体価格」という。)及び製造請負工事に係る施工管理等の系統経費(以下「系統手数料」という。)で構成されていた。
 そして、前記296件の製造請負工事費のうち、系統手数料は総額23億0758万余円(国庫補助金相当額11億1982万余円)となっていて、これは製造請負工事費の0.4%から9%に相当する額となっていた。
 この系統手数料の算出方法、手数料率及び算出された手数料の額は、次のように適切とは認められないものとなっていた。

(1) 算出方法について

 系統手数料は、製造請負工事費に手数料率を乗じて算出されていた。しかし、系統経費であることを考慮すれば、機器製造会社に支払われる本体価格に手数料率を乗じて算出するのが適切であると認められた。

(2) 手数料率について

 系統手数料率については、全農が、乾燥調製施設、共同選果包装施設等の施設の種類ごとに上限(以下、系統手数料率の上限を「上限率」という。)を定め、原則として製造請負工事費の3.5%から7%としていた。
 しかし、全農が施設の種類ごとに定めている上限率は、その根拠が明確ではなかった。
 そして、大型の乾燥調製施設など一部の施設については、本体価格の高額化に伴い系統手数料が高額となることから上限率を見直しているが、大半の施設については、施設の規格の標準化等により系統手数料の低減が見込まれるのに、昭和50年9月に系統施行の方法が発足して以来、上限率を見直していなかった。また、農協連が行う業務内容についてみても施設の種類ごとの差異は認められず、それぞれに異なる上限率を定める理由は見受けられなかった。
 そして、前記296件の系統手数料についてみると、過半の工事において本体価格の5%以下となっていた。したがって、この実態に基づいて系統手数料の上限率を設定する要があると認められた。

(3) 算出された手数料の額について

 系統手数料は、前記のとおり製造請負工事費に一定の率を乗じて算出するため、製造請負工事費が高額になると系統手数料も高額になることから、全農では、一部の施設について、製造請負工事費が高額となる場合は低い上限率を定めている。
 しかし、近年、施設の大規模化や高度化から製造請負工事費が相当高額となるものもあり、中には、全農が定めた低い上限率を適用してもなお系統手数料が数千万円と相当高額となるものも見受けられた。そこで、農協連が系統施行業務に要した経費について調査したところ、ほとんどの工事において2000万円未満となっていた。したがって、系統施行に係る農協連の業務の実態に適合した上限額を設定する要があると認められた。
 したがって、上記の(1)、(2)及び(3)により、製造請負工事を系統施行により実施する国庫補助事業については、業務の実態に適合した系統手数料となるようその算出方法を定めてその上限率及び上限額を設定する要があると認められた。

(低減できた手数料)

 系統施行により実施する国庫補助事業について、系統手数料の上限率を本体価格の5%と、また、上限額を2000万円と設定したとすれば、前記296工事のうち150工事における系統手数料総額15億2639万余円(国庫補助金相当額7億3771万余円)は、11億0019万余円(国庫補助金相当額5億3003万余円)となり、4億2619万余円(国庫補助金相当額2億0767万余円)が低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、農協連において適切な系統手数料を計上していなかったことにもよるが、農林水産省において製造請負工事の系統手数料についての取扱いを定めていなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省では、平成10年12月及び11年3月に、農業近代化施設整備事業における製造請負工事の系統施行の取扱いについて通知を発して系統手数料の取扱いを定め、その上限率を本体価格の5%と、また、その上限額を2000万円と定めて、11年4月以降の新規事業から適用することとする処置を講じた。

(注1)  地域農業基盤確立農業構造改善事業等 地域農業基盤確立農業構造改善事業、農業農村活性化農業構造改善事業、沖縄農業活性化構造改善特別対策事業

(注2)  北海道ほか42都府県 東京都、北海道、京都府、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、愛知、三重、滋賀、和歌山、鳥取、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄各県