会計名及び科目 | 一般会計 (組織)林野庁 | (項)林業振興費 (項)森林保全整備事業費 (項)森林環境整備事業費 (項)山林施設災害復旧事業費 (項)山林施設災害関連事業費 (項)北海道森林保全整備事業費 (項)離島振興事業費 |
国有林野事業特別会計(治山勘定) | ||
(項)治山事業費 (項)北海道治山事業費 |
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部局等の名称 | 林野庁 | |
補助の根拠 | 森林法(昭和26年法律第249号)、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法(昭和26年法律第97号)、治山治水緊急措置法(昭和35年法律第21号)等 | |
事業主体 | 道1、府1、県21、市18、町60、村29、森林組合1、計131事業主体 | |
補助事業 | 北海道広域基幹林道島前線(白符工区)工事ほか630工事 | |
補助事業の概要 | 林道の開設、治山ダムの築造等を行うため、切土・盛土、床掘り等を行う工事 |
事業費 | 344億0803万余円 | (平成9、10両年度) |
上記に対する国庫補助金交付額 | 175億6075万余円 | |
軟岩押土積込費の積算額 | 6億1120万余円 | (平成9、10両年度) |
低減できた軟岩押土積込費の積算額 | 1億3930万円 | (平成9、10両年度) |
上記に対する国庫補助金相当額 | 7110万円 |
1 工事の概要
林野庁では、森林法(昭和26年法律第249号)等に基づき、森林生産力の増進、国土の保全等を図るため、民有林林道事業及び民有林治山事業の一環として、林道、保安林管理道等の林道開設工事及び治山ダム等の治山工事を行う地方公共団体等に対して、毎年度多額の補助金を交付している。
これらの工事においては、土石や岩石をバックホウ、ブルドーザ、ダンプトラック等の機械を使用して掘削・押土・積込み・運搬等の作業を行う機械土工が多数施工されている。
林野庁では、地方公共団体等に対し、同庁制定の「民有林林道事業設計書作成要領」、「治山事業設計標準歩掛」等(以下「設計要領等」という。)を示しており、上記林道開設工事等の工事費はこれらに基づいて積算することとなっている。
そして、機械土工の工事費のうち、地山を掘削した後の緩められた状態(以下、この状態を「ルーズな状態」という。)となった土石又は岩石の押土費及び積込費(以下「押土積込費」という。)については、作業機械の容量や、土石又は岩石の土質等に応じて定められている作業効率の値等を計算要素として1時間当たりの土工量を算出し、この1時間当たりの土工量で対象となる土量を除した上、1時間当たりの機械経費を乗ずるなどして積算することとなっている。
機械土工の対象となる土石又は岩石の土質については、「砂・砂質土」、「粘性土」、「礫質土(礫まじり土)」、「岩塊・玉石」、「軟岩(I)A」、「軟岩(I)B」、「軟岩(II)」、「中硬岩」、「硬岩(I)」及び「硬岩(II)」の10分類とされている。 この場合、「礫質土(礫まじり土)」における「礫」は径が5cmから15cmまでのもの、「岩塊・玉石」は径が15cm以上などのものとされている。そして、軟岩のうち「軟岩(I)A」は風化がはなはだしく、き裂間の間隔が1cmから5cm程度で極めてもろいなどのもの、「軟岩(I)B」は風化が相当進み、き裂間の間隔が5cmから10cm程度で軽い打撃により容易に割り得るなどのもの、「軟岩(II)」は風化が目にそって相当進み、き裂間の間隔が10cmから30cm程度で軽い打撃により層面を離し得るなどのものとされている。また、「中硬岩」、「硬岩(I)」及び「硬岩(II)」は、き裂間の間隔が30cm以上となっており、風化も進んでおらず硬くて密着しているなどのものとされている。
設計要領等では、地山の土石又は岩石の掘削等について上記の10分類に対応して作業効率や歩掛かりが定められているが、ルーズな状態の土石又は岩石の押土及び積込みについては、その土質を効率がよいものから順に「砂・砂質土」、「粘性土、礫質土」、「岩塊・玉石、軟岩(I)A」及び「破砕岩」の4つに区分して作業効率の値が定められている(林道開設工事におけるバックホウの例では、現場条件が普通の場合0.7〜0.5。この作業効率は、対象となる土石や岩石が小さければ、それらの間等の空隙が少なくなることなどから値が大きなものとなる。)。
そして、ルーズな状態の軟岩の作業効率については、掘削後の状態を考慮し、その状態に応じた土質の値をとることと定められている。
2 検査の結果
軟岩は、前記のとおり、き裂間の間隔が狭く、風化も相当進んでいて軽い打撃で割り得るなどのものであることから、これを掘削してルーズな状態とした場合には、通常、径が15cm以下の小塊や土砂状になるものである。そこで、地方公共団体等の事業主体において、こうした状態に応じた適切な作業効率の値を適用してルーズな状態の軟岩の押土積込費を積算しているかに着眼して検査した。
北海道ほか23府県(注1) 及びその管内の131市町村等計155事業主体が平成9、10両年度に施行した799工事(工事費総額434億8015万余円、国庫補助金221億5103万余円)を対象として検査した。
検査したところ、北海道ほか22府県(注2) 及びその管内の108市町村等計131事業主体が施行した631工事(工事費総額344億0803万余円、国庫補助金175億6075万余円)のルーズな状態の軟岩の押土積込費の積算(積算額計6億1120万余円)において、次のような事態が見受けられた。
(ア) ルーズな状態の軟岩(I)Aの作業効率として、設計要領等に「岩塊・玉石、軟岩(I)A」の土質区分があることから、その土質区分の値を適用していた。
(イ) ルーズな状態の軟岩(I)B及び軟岩(II)の作業効率として、設計要領等においてこれよりぜい弱な軟岩(I)Aが岩塊・玉石と同一の区分となっていることから、これ以下の「破砕岩」の値を適用していた。
しかし、ルーズな状態の軟岩は、前記のとおり、径が15cm以下の小塊や土砂状になるのに対し、「岩塊・玉石」は設計要領等において径が15cm以上などのものとされている。また、「破砕岩」は中硬岩以上の硬い岩石を破砕したもので、掘削後のルーズな状態でも径が15cm以上の大きな塊が相当残るものである。このように、ルーズな状態の岩塊・玉石及び破砕岩は、ルーズな状態の軟岩に比べて空隙が生じやすいなど作業効率が低下するものとなっている。このことから、ルーズな状態の軟岩(I)Aについて岩塊・玉石と同じ作業効率の値を適用したり、ルーズな状態の軟岩(I)B及び(II)について「破砕岩」の値を適用したりしているのは適切でない。そして、他機関等では、ルーズな状態の軟岩については礫質土の作業効率の値を適用している状況である。
したがって、ルーズな状態の軟岩については、その状態に応じた適切な作業効率の値を適用することとして、押土積込費の積算を適切に行う要があると認められた。
前記の631工事において、ルーズな状態の軟岩の押土積込費について「粘性土、礫質土」の作業効率の値を適用して積算したとすれば積算額は計4億7182万余円となり、前記の積算額計6億1120万余円との差額約1億3930万円(国庫補助金相当額約7110万円)を低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、設計要領等において、ルーズな状態の軟岩の作業効率はその状態に応じた土質の値をとることと定めているものの、その一方で作業効率の土質区分において軟岩(I)Aと岩塊・玉石を同一区分としていたこと、破砕岩は中硬岩以上の硬い岩石を破砕したものである旨を明確にしていなかったことなどによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、林野庁では、11年9月に設計要領等を改正するなどして、ルーズな状態の軟岩は原則として礫質土に相当するものとして取り扱うこと、破砕岩は中硬岩以上の硬い岩石を破砕したものでルーズな状態の軟岩は含まない旨等を具体的に定め、同年11月以降積算する工事から適用することとする処置を講じた。
(注1) 北海道ほか23府県 北海道、京都府、宮城、秋田、山形、栃木、群馬、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、愛知、兵庫、鳥取、島根、岡山、広島、徳島、佐賀、長崎、大分、鹿児島各県
(注2) 北海道ほか22府県 北海道、京都府、宮城、秋田、山形、栃木、群馬、富山、石川、福井、山梨、長野、愛知、兵庫、鳥取、島根、岡山、広島、徳島、佐賀、長崎、大分、鹿児島各県