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  • 平成10年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 運輸省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

無停電電源装置に組み込まれる蓄電池の設計を経済的なものとするよう改善させたもの


(3) 無停電電源装置に組み込まれる蓄電池の設計を経済的なものとするよう改善させたもの

会計名及び科目 空港整備特別会計 (項)航空路整備事業費
部局等の名称 東京、大阪両航空局
契約名 神戸航空衛星センター無停電電源装置一式製造ほか1件
契約の概要 航空衛星システムの整備事業の一環として、静止形無停電定電圧定周波電源装置一式を製造するもの
契約金額 9億0405万円 (平成8、10両年度)
契約の相手方 株式会社東芝
蓄電池の製造費の積算額 1億8393万余円 (平成8、10両年度)
低減できた蓄電池の製造費 5050万円 (平成8、10両年度)

1 契約の概要

(契約の内容)

 運輸省では、空港整備事業の一環として航空交通の安全性と効率性の向上を図るため、運輸多目的衛星(以下「衛星」という。)による航空衛星システムを構築することとしている。そして、東京、大阪両航空局では、衛星の制御等を行う神戸航空衛星センター及び常陸太田航空衛星センター(以下、それぞれ「神戸センター」、「常陸太田センター」という。)に設置する静止形無停電定電圧定周波電源装置(以下「無停電電源装置」という。)の製造を、平成9年3月及び10年9月に、一般競争契約により株式会社東芝に総額904,050,000円で請け負わせている。

(航空衛星システムの整備計画)

 航空衛星システムは、以下のようにシステムを段階的に整備することとしている。

〔1〕  11年度に衛星1号機を打ち上げ、自然災害、気象条件等による不稼働を避けるために神戸センター及び常陸太田センターにそれぞれ地上局設備を設置する。

〔2〕  16年度に衛星2号機を打ち上げ、2機を静止軌道上で運用する。

〔3〕  21年度に衛星3号機を打ち上げ、衛星1号機を寿命(設計寿命10年)に達するまで予備衛星とし、3機を運用する。

(地上局設備の整備計画)

 神戸センター及び常陸太田センターの両地上局に設置する通信設備、無停電電源装置及び非常用予備発電装置は、衛星の打上げに合わせそれぞれ次のように整備することとしている。

(ア) 通信設備は、衛星の運用機数に合わせて5年ごとに段階的に増設する。

(イ) 無停電電源装置及び非常用予備発電装置は、技術的な点などのため当初から、衛星3機分に対応した整備を行う。

(無停電電源装置の設計)

 地上局設備のうち無停電電源装置は、〔1〕 通常時に商用電源の電圧、周波数等を安定させ電気を供給する本体と〔2〕 商用電源の停電時などに非常用予備発電装置から電気が供給されるまでの間などに通信設備に電気を供給するシール形鉛蓄電池(以下「蓄電池」という。)から構成されている。
 そして、東京、大阪両航空局では、無停電電源装置について運輸省航空局制定の「無停電電源装置設計要領」(以下「設計要領」という。)等に基づき、次のように設計していた。

(ア) 本体は、21年度までに整備する通信設備3セット分の負荷容量の合計値(神戸センター分717.9kVA、常陸太田センター分591.5kVA)から出力容量を算出し、これを満足する規格のうち最小のもの(神戸センター分400kVAを2組、常陸太田センター分300kVAを2組)を選定していた。

(イ) 蓄電池は、本体の規格に対応するものとして、神戸センター分の容量を1200Ah(BA−1200型)と、常陸太田センター分の容量を900Ah(BA−900型)とそれぞれ設計していた。

(蓄電池の製造費)

 蓄電池の製造費は、上記の設計に基づき神戸センター分を1億0745万余円、常陸太田センター分を7648万円、計1億8393万余円と算定していた。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 前記のとおり、通信設備は5年ごとに段階的に増設することとされている。一方、蓄電池は、その性能を維持するため、通常、設置後8年から10年で更新されるものである。そこで、無停電電源装置の蓄電池の設計は通信設備の増設計画に対応した経済的なものとなっているかという点に着眼して検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、無停電電源装置の本体を技術的な点などのため通信設備3セット分に対応した設計としたことから、本件蓄電池についても通信設備3セット分に対応した設計としていた。
 しかし、本件蓄電池を通信設備3セット分に対応した設計としたことについては、次のことから適切でないと認められる。

(ア) 衛星1号機の打上げに合わせて当初から通信設備3セット分に対応した容量の蓄電池を整備しても、10年後の3号機打上げまでに蓄電池の更新時期が到来すること

(イ) 通信設備の増設計画に合わせて蓄電池の容量を変更することとしても、無停電電源装置の本体に支障は生じないこと

 したがって、蓄電池の設計については、通信設備の増設計画に合わせて容量を逐次増加させることとし、経済的な設計を行う要があると認められた。
 そこで、蓄電池の容量を増加させる場合はその性能を維持するために一括交換しなければならないことを考慮して、本件蓄電池の容量を検討すると、当初は通信設備2セット分に対応した容量のものとし、8年から10年後の蓄電池の更新時に通信設備3セット分に対応した容量のものに一括交換すればより経済的な設計になると認められた。

(低減できた蓄電池の製造費)

 上記により、本件蓄電池を設計すると、神戸センター分の容量は900Ah(BA−900型)、常陸太田センター分の容量は700Ah(BA−700型)となり、蓄電池の製造費を約5050万円低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、設計要領において、段階的な施設整備が計画される場合、その整備計画や無停電電源装置の蓄電池の更新時期を考慮して蓄電池の容量を決定できるよう明確に規定されていなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、東京航空局では、通信設備2セット分に対応した容量の蓄電池とする契約変更を行った。また、運輸省では、11年10月に、設備を段階的に増設する場合の無停電電源装置の蓄電池について経済的な設計となるよう設計要領を改正し、関係部局に通達を発し、同年11月以降設計を行う契約から適用することとする処置を講じた。