会計名及び科目 | 郵政事業特別会計 (項)業務費 |
部局等の名称 | 郵政本省 |
契約名 | 現金警備輸送請負契約 |
契約の概要 | 郵便局において必要な資金の過不足に対応して、郵便局相互間を現金輸送専用車で巡回して資金を輸送する業務を警備会社に委託するもの |
積算額 | 9億5562万余円 | (83契約) |
低減できた積算額 | 1億9480万円 |
1 現金警備輸送の概要
郵政省では、郵便局の郵便、為替貯金、簡易生命保険の各業務に必要となる資金に過不足を生じないよう、郵政本省と郵便局との間を中継する郵便局(以下「中継郵便局」という。)を通じて、支払資金の不足している郵便局に資金を交付するとともに、支払資金に余裕を生じた郵便局から資金を回収している。
そして、平成8年度から、郵便局における資金需要への迅速な対応、資金輸送の防犯対策の強化等を図ることを目的として、これらの業務を警備会社に委託している。
委託契約の内容は、郵政本省が定めた標準仕様書(平成8年4月郵貯業第1号。 10年3月改定)によれば、〔1〕 中継郵便局と資金の交付及び回収の対象となる郵便局との間の資金輸送、〔2〕 郵便局の局外に設置している郵便貯金自動預払機等の現金カセット交換、〔3〕 中継郵便局と日本銀行(本支店及び代理店を含む。)との間の資金輸送から成っている。そして、これらの業務は、現金輸送専用車(以下「輸送車」という。)を使用して行うこととしている。
委託費の予定価格の積算、入札等の契約事務は、郵政局(沖縄郵政管理事務所を含む。以下同じ。)、又は郵政局から委ねられた中継郵便局が行っている。
上記の郵政局及び中継郵便局(以下「契約実施部局」という。)では、標準仕様書に基づき契約ごとに仕様書を作成している。積算に当たっては、この仕様書及び郵政本省が定めた「積算の基本的考え方について」(平成9年12月財契第68号)に基づき、輸送車1日当たりの借上運賃と警備員の日額労務費とを合計して日額単価を算出し、これに年間作業予定日数を乗じて予定価格を算定している。そして、入札結果に基づいて契約を締結している。
契約期間は年度ごとの自動更新(4年間を限度とする。)ができることとなっており、10年度では、北海道郵政局ほか3郵政局(注1)
において14件、関東郵政局ほか7郵政局(注2)
管内の98中継郵便局において98件、計112件の委託契約を実施している。
2 検査の結果
委託を開始した直後の標準仕様書では、基本的な仕様項目のみを定めていたため、契約実施部局により積算方法や仕様項目が区々となっていた。このため、郵政本省では、9年12月に委託費の積算方法を具体的に定めるとともに、10年3月には、輸送車の積載量、年間作業予定日数等の項目を加えるなどの標準仕様書の見直しを行っている。
そこで、上記の委託契約112件について、標準仕様書等の内容は適切なものとなっているか、また、契約実施部局の予定価格の積算は、標準仕様書等に基づいて適切に行われているかに着眼して検査した。
検査したところ、東北郵政局ほか1郵政局(注3)
で契約を締結した7件及び関東郵政局ほか6郵政局(注4)
管内の76中継郵便局で契約を締結した76件、計83件の委託契約(積算額9億5562万余円)において、実際の積載量に比べて過大な輸送車を使用することとして積算したり、業者の見積価格をそのまま採用して積算したり、加算の必要がない費用を計上して積算したりしているものが見受けられた。
これらを態様別に示すと次のとおりである。
(ア) 実際の積載量に比べて過大な輸送車を使用することとして積算していたもの
21件
A郵便局では、平成11年1月に委託契約を締結しており、予定価格の積算では、輸送車を仕様書で2トン車と定め、積算も2トン車を使用することとして、日額単価を47,932円と算出していた。
しかし、受託会社が提出した輸送車の使用車両届出書によれば、1トン車を使用することとなっており、実際にも1トン車を使用していた。したがって、実際に輸送する資金量を調査し、輸送車を仕様書で1トン車と定め、積算も1トン車を使用することとすると、日額単価は45,080円となり、差し引き2,852円が割高となっていた。
(イ) 業者の見積価格をそのまま採用して積算していたもの
25件
B郵便局では、平成10年4月に委託契約を更新(当初8年12月)しているが、更新時の予定価格の積算では、業者から徴した見積価格をそのまま採用した当初契約の日額単価63,500円と同額の日額単価としていた。
しかし、契約更新に際して、標準的な積算方法により予定価格を積算し直していたとすると、日額単価は41,182円となり、22,318円が割高となっていた。
(ウ) 加算の必要がない費用を計上して積算していたもの
58件
C郵便局では、平成10年4月に委託契約を更新(当初9年12月)しているが、更新時の予定価格の積算では、管理費5,416円を加えるなどしていた当初契約の日額単価60,000円と同額の日額単価としていた。
しかし、標準的な積算方法によれば管理費は警備員の日額労務費に含まれていて加算の必要がないのであるから、契約更新に際し他の積算誤りも含めて予定価格を積算し直していたとすると、日額単価は47,160円となり、12,840円が割高となっていた。
(上記(ア)は、(イ)又は(ウ)と重複している。)
上記83件の委託契約の積算額について、9年12月及び10年3月に見直しが行われた標準仕様書等に基づき、実際に使用していた輸送車の積載量によるなどして修正計算すると、前記の積算額9億5562万余円は7億6072万余円となり、約1億9480万円が低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、次のようなことによると認められた。
(ア) 郵政本省において、標準仕様書の見直しを行っていたが、委託契約に使用する輸送車の積載量等の決定方法を明確に示していなかったこと
(イ) 契約が自動更新できることとしていたため、内容の見直しが行われず、当初の割高な契約が継続されていたこと
(ウ) 郵政局において、中継郵便局が行う仕様書の作成及び予定価格の積算についての指導を十分に行っていなかったこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、郵政省では、11年10月に各郵政局に対して通達を発するなどして、契約実施部局において適切に仕様書の作成及び予定価格の積算ができるよう、次のような処置を講じた。
(ア) 標準仕様書を改め、委託契約において輸送車の積載量等を適切に積算できるように仕様の決定方法を明確に示した。
(イ) 契約の自動更新を原則として禁止した。
(ウ) 郵政局が中継郵便局に契約事務を委ねる場合には、郵政局において、仕様書の作成及び予定価格の積算を個別に指導することとした。
(注1) 北海道郵政局ほか3郵政局 北海道、東北、東京各郵政局、沖縄郵政管理事務所
(注2) 関東郵政局ほか7郵政局 関東、信越、北陸、東海、近畿、中国、四国、九州各郵政局
(注3) 東北郵政局ほか1郵政局 東北、東京両郵政局
(注4) 関東郵政局ほか6郵政局 関東、信越、北陸、東海、近畿、中国、九州各郵政局