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  • 平成10年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第12 建設省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

歩道の車両乗入れ部について、歩行者、特に車いす利用者等の安全かつ円滑な通行が確保できる構造となるよう改善させたもの


(2) 歩道の車両乗入れ部について、歩行者、特に車いす利用者等の安全かつ円滑な通行が確保できる構造となるよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)建設本省 (項)住宅建設等事業費
(項)都市計画事業費
道路整備特別会計 (項)道路事業費
(項)街路事業費
(項)北海道街路事業費
(項)離島道路事業費
(項)地方道路整備臨時交付金
部局等の名称 北海道ほか24都府県
補助の根拠 道路法(昭和27年法律第180号)、道路整備緊急措置法(昭和33年法律第34号)等
事業主体 都1、道1、府2、県17、市37、町20、村1、計79事業主体
補助事業 道路整備事業
補助事業の概要 車道との段差を設けた歩道の整備を伴う道路の新設又は改築を行う工事
事業費 116億9935万余円 (平成9、10両年度)
上記に対する国庫補助金交付額 60億1199万余円
車いす利用者等の通行に支障を生じるおそれがある歩道に係る直接工事費 11億2262万円 (平成9、10両年度)
上記に対する国庫補助金相当額 5億7464万円

1 補助事業の概要

(歩道整備の概要)

 建設省では、国庫補助事業により一般国道又は地方道の道路整備事業を行う地方公共団体(以下「事業主体」という。)に対し、毎年度多額の国庫補助金を交付している。
 この道路整備事業は、車道のほか歩道(自転車及び歩行者の通行の用に供する自転車歩行者道を含む。以下同じ。)の整備を含むものとなっている。
 この歩道の整備に当たっては、近年の我が国における本格的な高齢化社会に対応して、高齢者、障害者等の利用に十分配慮した事業の実施が求められている。このため、建設省では、平成6年に「生活福祉空間づくり大綱」を策定して、高齢者、障害者等の社会参加の機会の増大にも対応した幅の広い歩道の整備を推進するなど、いわゆるバリアフリーの生活空間の形成に取り組んでいる。

(歩道の幅員及び横断勾配)

 道路を新設し又は改築する場合における道路の構造の一般的技術的基準は、道路構造令(昭和45年政令第320号)に定められており、歩道の幅員については、その存する地域や交通量に応じて2m以上から4m以上とするものとされている。この幅員は、高齢者、障害者等を含む歩行者の多様な利用形態に対応し、特に車いす利用者の安全かつ円滑な通行を確保するため、その通行の際に必要となる幅1mを考慮して5年に拡大されたものである。
 また、歩道には路面上の排水のため横断勾配を付する必要があるが、この横断勾配については、歩行者等の通行に不便とならないよう2%を標準とするものとされている。

(車道との段差を設けた歩道の切下げ)

 歩道のうち車道との段差を設けた歩道(以下「マウントアップ歩道」という。)を整備する場合、横断歩道がある箇所や、沿道の民地等に車両が乗り入れる箇所(以下「車両乗入れ部」という。)では、車道と滑らかにすり付けるために歩道を切り下げることが必要となる。
 このうち車両乗入れ部については、事業主体が道路の新設又は改築を行う道路整備事業において設ける場合のほか、既設の歩道について沿道の民地等の所有者等が道路管理者の承認を受けて設ける場合がある。そして、民地等の所有者等が既設の歩道に車両乗入れ部を設けるために歩道の切下げを行う場合にあっては、「道路法第24条の承認及び第91条第1項の許可に係る審査基準について」(平成6年道政発第49号建設省道路局長通達)により、民地等の側に横断勾配2%の平坦部分を幅1m以上でできるだけ広く設けることとされているが、事業主体が車両乗入れ部を設ける場合の歩道の切下げについては特に定められたものはない。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 歩道の整備に当たっては、高齢者、障害者等を含む歩行者の安全かつ円滑な通行に十分配慮した構造とすることが求められている。そこで、事業主体が整備した歩道のうち特にマウントアップ歩道の車両乗入れ部は、高齢者、障害者等の利用に配慮した適切な構造となっているかという点に着眼して検査した。

(検査の対象)

 9、10両年度に、北海道ほか30都府県管内(注1) の143事業主体が国庫補助事業として実施した470工事(工事費総額262億1972万余円、国庫補助金131億1600万余円)における車両乗入れ部計3,795箇所を対象として検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、上記の事業主体では、各工事契約の設計図面、仕様書等に車両乗入れ部の構造を明記しているものはほとんどなく、施工の仕様を現場監督員の口頭指示に委ねていた。
 そして、地形等の関係から高齢者、障害者等に配慮した構造とすることができない箇所もあるものの、北海道ほか24都府県管内(注2) の79事業主体が実施した255工事(工事費総額116億9935万余円、国庫補助金60億1199万余円)の歩道(延長77,561m、車両乗入れ部計1,475箇所)においては、各工事で整備した車両乗入れ部の半数以上が、次のように横断勾配2%の平坦部分が幅1m以上確保されていない構造となっていた。

歩道の車両乗入れ部について、歩行者、特に車いす利用者等の安全かつ円滑な通行が確保できる構造となるよう改善させたものの図1

 したがって、これらの歩道(歩道に係る直接工事費計11億2262万余円、国庫補助金相当額5億7464万余円)は、歩行者、特に車いす利用者等の安全かつ円滑な通行にとって支障を生じるおそれがあるものとなっていると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、各事業主体において、歩行者の多様な利用形態に対応して安全な通行を確保することについての配慮が十分でなかったこと、建設省において、各事業主体に対してマウントアップ歩道を整備する際の車両乗入れ部の構造基準を明確に示していなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、建設省では、11年9月に歩道を整備する場合の車両乗入れ部の構造について基準を策定するとともに、事業主体に通達を発してその趣旨及び内容の周知徹底を図り、歩行者、特に車いす利用者等が安全かつ円滑に通行できる歩道の整備が行われるよう処置を講じた。

(注1)  北海道ほか30都府県 東京都、北海道、京都、大阪両府、青森、岩手、宮城、秋田、山形、栃木、群馬、埼玉、神奈川、石川、福井、山梨、長野、三重、奈良、鳥取、島根、岡山、山口、徳島、愛媛、福岡、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島各県

(注2)  北海道ほか24都府県 東京都、北海道、京都、大阪両府、青森、岩手、宮城、山形、栃木、群馬、神奈川、山梨、三重、奈良、島根、岡山、山口、徳島、愛媛、福岡、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島各県