会計名及び科目 | 一般会計 (組織)建設本省 (項)都市計画事業費 |
部局等の名称 | 北海道ほか14府県 |
補助の根拠 | 下水道法(昭和33年法律第79号) |
事業主体 | 市23、町7、組合2、計32事業主体 |
補助事業 | 下水道事業(40事業) |
補助事業の概要 | 下水道整備事業の実施の際に障害となる水道管等の移設補償を行うもの |
補助対象事業費 | 12億5799万余円 | (平成9、10両年度) |
上記に対する国庫補助金交付額 | 6億2774万余円 | |
節減できた補助対象経費 | 2億0950万円 | (平成9、10両年度) |
上記に対する国庫補助金相当額 | 1億0519万円 |
1 補助事業の概要
建設省では、下水道法(昭和33年法律第79号)等に基づき、都市の健全な発達及び公衆衛生の向上に寄与し、併せて公共用水域の水質の保全に資することを目的として、下水道整備事業を実施する都道府県、市町村等の事業主体に対し、事業の実施に要する経費の一部を補助することとしている。
上記の事業における補助対象経費は、工事費のほか、用地費及び補償費、測量及び試験費等から成っており、このうち用地費及び補償費には、用地取得に必要な費用や建物等の移転費用のほかに、事業実施の際に障害となる水道管、電柱等の公共施設等を移設するのに必要な費用が含まれている。
そして、このような公共事業の施行に伴い機能の廃止等が必要となる既存の公共施設等についてその機能回復を図ることを目的とする公共補償については、「公共事業の施行に伴う公共補償基準要綱」(昭和42年閣議決定。以下「公共補償基準」という。)により、事業主体がその原因者として、公共施設等の管理者に対して補償費を支払うものとされている。
公共補償基準によると、事業実施の際に障害となる既存の公共施設等の機能回復のために、公共施設等の管理者が代替の施設等を建設する場合には、事業主体は当該施設等の建設に必要な費用から、既存公共施設等の機能の廃止の時までの財産価値の減耗分(以下「財産価値の減耗分」という。)等を控除した額を補償することとなっている。ただし、既存公共施設等が、国、地方公共団体又はこれらに準ずる団体が管理するものである場合において、やむを得ないと認められるときは、財産価値の減耗分の全部又は一部を控除しないことができることとなっている。
そして、財産価値の減耗分は、「公共補償基準要綱の運用申し合せ」(昭和42年用地対策連絡会作成。以下「運用申し合せ」という。)によると、原則として、次の算式により算定することとなっている。
Dn | :経過年数n年間における財産価値の減耗分相当額 |
C | :既存公共施設等の復成価格(注1) |
R | :耐用年数満了時における残価率 |
n | :既存公共施設等の廃止時点までの経過年数 |
n' | :既存公共施設等の廃止時点からの残存耐用年数 |
(注1) 復成価格 既存公共施設と同等のものを建設することにより機能回復を行う場合の補償時点での建設費
事業主体は、事業の実施に当たって、下水道管を布設するために道路を掘削するなどの際に、埋設されている水道管、消火栓等の水道施設(以下「水道管等」という。)が障害となる場合には、この水道管等を管理する者(以下「水道事業者」という。)に対して補償を行っている。この場合は、下水道事業を実施する事業主体が原因者として補償を行うことになり、公共補償基準や運用申し合せに基づいて事業主体と水道事業者との間で補償協議を行い、移設補償契約を締結している。そして、この契約に基づき、事業主体は、水道事業者に対し、水道管等の移設工事費等から水道管等の財産価値の減耗分等を差し引くことにより算定した移設補償費(以下「水道補償費」という。)を支払うこととなっている。
2 検査の結果
平成9、10両年度に、北海道ほか14府県(注2) において、府県又は市町村等の260事業主体が実施した下水道整備事業290件に係る水道補償費計130億2683万余円(国庫補助金相当額65億9950万余円)を検査の対象とし、補助対象経費として計上された水道補償費が適切に算定されているかという点に着眼して検査した。
検査したところ、上記の北海道ほか14府県において、32事業主体が実施した下水道整備事業40件に係る水道補償費計12億5799万余円(国庫補助金相当額6億2774万余円)について、次のような事態が見受けられた。
(1) 財産価値の減耗分を控除していなかったもの
青森県ほか2県(注3) における7事業主体では、下水道整備事業10件に係る水道補償費の算定に当たり、やむを得ないと認められる明確な理由もないまま移設工事費等から財産価値の減耗分を控除していなかった。
(2) 財産価値の減耗分を過小に算定していたもの
北海道ほか11府県(注4) における25事業主体では、下水道整備事業30件に係る水道補償費の算定に当たり、復成価格を移設工事費等のうちの材料費のみとしていたり、上記の算式によらず既存の水道管等の財産台帳における減価償却累計額を財産価値の減耗分としていたりなどして財産価値の減耗分を過小に算定していた。
しかし、前記のとおり公共補償は事業の施行に伴い廃止等が必要となる既存の公共施設等の機能回復を図るものであり、被補償者に財産上の利益を取得させることを目的とするものでないことから、公共補償基準において、原則として代替の公共施設等の建設に必要な費用から財産価値の減耗分を控除することとされているものである。
したがって、上記のように、水道補償費の算定に当たって、やむを得ないと認められる明確な理由もないまま、財産価値の減耗分を控除していなかったり過小に算定していたりしているのは適切ではなく、改善の要があると認められた。
上記により、下水道整備事業40件について適正な水道補償費を算定したとすれば計10億4849万余円(国庫補助金相当額5億2254万余円)となり、前記の補助対象経費を2億0950万余円(国庫補助金相当額1億0519万余円)節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、事業主体において公共補償基準等についての理解が十分でなかったことにもよるが、建設省において事業主体に対し公共補償基準等の趣旨、算定方法等を十分理解し、水道事業者との補償協議において適切に対応することとする指導が十分でなかったことなどによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、建設省では、11年10月に、都道府県等に対して通知を発し、下水道整備事業の実施における水道管等の移設補償費の算定に当たって、公共補償基準等の趣旨、算定方法等を十分理解し、適切に対応するよう周知徹底する処置を講じた。
(注2) 北海道ほか14府県 北海道、京都、大阪両府、青森、秋田、山形、福島、神奈川、石川、奈良、鳥取、香川、高知、福岡、宮崎各県
(注3) 青森県ほか2県 青森、秋田、福島各県
(注4) 北海道ほか11府県 北海道、京都、大阪両府、山形、神奈川、石川、奈良、鳥取、香川、高知、福岡、宮崎各県