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  • 平成10年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第1 首都高速道路公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

トンネル内配線路の電気設備改修工事における労務費の積算を作業の実態に適合するよう改善させたもの


(2) トンネル内配線路の電気設備改修工事における労務費の積算を作業の実態に適合するよう改善させたもの

科目 (項)高速道路改築事業費
部局等の名称 神奈川管理部
工事名 トンネル内配線路電気設備改修工事(横浜)
工事の概要 トンネル内配線路を清掃し、ケーブル受台を改修した後、既設ケーブルを支持材に結束するなどの工事
工事費
1億9005万円

請負人 ハイウェイ技術サービス株式会社
契約 平成9年7月 指名競争契約
労務費の積算額 1億1113万余円
低減できた労務費の積算額 5490万円

1 工事の概要

(工事の内容)

 首都高速道路公団(以下「公団」という。)では、首都高速道路を常に良好な状態に保つための補修工事の一環として、平成9、10両年度に高速神奈川1号横羽線・高速神奈川3号狩場線の東横浜トンネルほか3トンネルにおいてトンネル内配線路電気設備改修工事(横浜)を1億9005万円で施行している。
 この工事は、トンネル内の配線路に敷設されているケーブルが大量の汚泥等に埋没していてケーブルの障害時に速やかな修理復旧ができないなどのおそれがあるため、配線路内の清掃、ケーブルの移設等を行うものである(参考図参照)
 本件工事の作業内容は、特記仕様書等によると次のとおりとなっている。

〔1〕  配線路の蓋を取り外し、配線路内を清掃する。

〔2〕  既設ケーブルを高圧、低圧及び通信の線種別に仮移設する。

〔3〕  ケーブル受台を取り外して改修し、ケーブル支持材を設置した後に再び取り付ける。また、高圧用ケーブル受台等を新設する。

〔4〕  仮移設したケーブルを再度高圧、低圧及び通信の線種別ごとのケーブル受台に移設し、ケーブルのたるみやよじれ等を除去し、ケーブル支持材に結束する(以下、この作業を「ケーブル移設工」という。)。

〔5〕  配線路の蓋を取り付ける。

(労務費の積算)

 公団では、本件工事の労務費の積算に当たり、上記各作業に適用する歩掛かりがないため、ケーブル移設工については、本社制定の「工事設計積算基準(電気通信編)」(以下「積算基準」という。)に定められているケーブル配線工の歩掛かりを準用するなどし、また、他の作業については、一部に積算基準に定められているものを適用したり、それぞれの作業時間や作業員数を想定したりするなどして作業ごとの歩掛かりを設定していた。そして、これら作業員の人工数を電工3,288人とし、本件工事の労務費を1億1113万余円と積算していた。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 本件工事は、建設工事において従来より実施されているケーブル配線工事とは異なる作業の工事であり、公団では今後も同種工事が多数施行されることから、積算基準を準用するなどして算定した歩掛かりが作業の実態を反映したものとなっているかという点に着眼して検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、労務費の積算について次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
 すなわち、労務費の大部分を占めているケーブル移設工の積算に使用した歩掛かりについては、前記のとおり、積算基準に定められているケーブル配線工の歩掛かりを準用するなどしていた。しかし、ケーブル配線工はケーブルを線種別及び規格別に新たに敷設し接続するなどの作業であるのに対し、ケーブル移設工は仮移設されたケーブルを再度線種別に移設するなどの作業であることから、ケーブル配線工より著しく簡易なものであると認められた。

 そして、作業の状況について、作業日報等により実際の人工数を調査したところ、各作業の歩掛かりは当初想定していた歩掛かりを相当程度低減できると認められた。

 また、各作業における作業員の職種は、すべて電気工事について主体的業務を行う職種である電工としていたが、配線路の蓋の取外し、配線路内の清掃等簡易な作業については、電工より労務単価の安価な普通作業員による作業とすべきであると認められた。

 そこで、本院の指示により公団が実態調査を行ったところ、ケーブル移設工の歩掛かり等は公団の積算を大幅に下回るものとなっていた。

 したがって、トンネル内配線路の電気設備改修工事の積算に当たっては、作業の実態に適合した歩掛かりを定め、これにより積算を行う要があると認められた。

(低減できた積算額)

 上記の実態調査の結果などに基づき、本件工事の労務費を修正計算すると、人工数は電工1,252人、普通作業員179人、鍛冶工236人となって、その積算額は5615万余円となり、前記の積算額を約5490万円低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、トンネル内配線路の電気設備改修工事の積算に当たり、作業の実態を積算基準に反映させる配慮に欠けていたことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置
 上記についての本院の指摘に基づき、公団では、11年10月に、トンネル内配線路の電気設備改修工事の積算が作業の実態に適合したものとなるよう積算基準を改正し、同年11月以降契約する工事から適用することとする処置を講じた。

(参考図)

(参考図)